使っていて気になったのは、いわゆる生体認証に対応していないところだ。第7世代のiPod touchにはホームボタンが搭載されているが、指紋センサーが載っていないため、画面のロックを解除するために、毎回パスコードを入力する必要がある。iPhone X以降のFace IDに慣れていると、これが非常に面倒。アプリを購入するときも、都度パスワードの入力が必要になり、まどろっこしい。
ロック解除だけならまだいいが、Webやアプリのログインパスワードの入力などにTouch IDやFace IDを使っていると、その手間が倍増する。勢い、パスコードを簡単な4桁の数字にしてしまいがちだが、セキュリティの強度を考えると、6桁かそれ以上の数字か、英数字にしておきたいところ。ただ、そうすると今度はロック解除が面倒……と、話が堂々巡りになってしまう。
結局筆者は4桁のパスコードを設定したが、多少のコストアップで済むのであれば、Touch IDは搭載してほしいと感じた。
これもシリーズ当初からの仕様だが、iPhone風に見えて、iPod touchはモバイルデータ通信が利用できない。そのため、外出先でネット接続が必要になったときは、Wi-Fiスポットを探すか、テザリングなどに頼る必要がある。
iPhoneやWi-Fi+Cellular版のiPadであれば、iPod touch側からインターネット共有機能をオンにでき、そのまま接続できるため、あまり手間はかからないが、Androidスマートフォンの場合、いったんテザリングをオンにしなければならない。
もちろん、ネットに接続せずに使うという手もあるが、使えるアプリは限られてくる。最近は、ゲームなどのアプリでも落とし切りということは珍しく、プレイ中に追加でデータをダウンロードするケースも多い。音楽プレーヤーとしては、ストリーミングサービスのApple Musicを利用するのに、テザリング頼りにならざるをえらないのが残念なポイント。
Apple Musicは、1世代前のiPod touchが発売されたのとほぼ同じタイミングで始まったが、その間、Appleの主力サービスとして成長してきた。このサービスの実力を引き出す意味でも、iPadと同様、Wi-Fi+Cellular版の選択肢は欲しかった。
とはいえ、2万1800円からという値段で、iPhone 7と同等のプロセッサを備えた端末が手に入るのは魅力的だ。Appleは今後、ゲームのサブスクリプションサービスである「Apple Arcade」や、独自の映像コンテンツを配信する「Apple TV+」といったサービスに注力する方針だが、iPod touchは、それらのコンテンツを楽しむための“受け皿”にもなる。ゲームや映像を楽しみたいだけなら、価格の高いiPhoneを持つ必要はないというわけだ。
ただしそれは「今、iPhoneやiPadを持っていなければ」というただし書きが付く。その意味で、iPod touchは、Appleのサービスをどうしても使いたいAndroidスマートフォンのユーザーがサブの端末として持ったり、モバイルデータ通信をあまり使わせたくない子どもに持たせたりするのに適した1台だ。
価格が安く、アプリの間口を広げる端末のため、発表、発売が開発者会議であるWWDC直前になったのも、納得のタイミングといえそうだ。
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