iOS機器の裾野を広げる新「iPod touch」 高まるWWDCへの期待(3/3 ページ)

» 2019年06月03日 08時00分 公開
[林信行ITmedia]
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WWDC 2019が開催! iPod touchは開発者の思いを届ける製品

 ちなみに5月30日、Appleが発信した情報の1つに、日本語訳も行われたこんなWebページもある。「数々のストーリー、WWDCに集結」というもので、WWDCに参加するAppleの製品を使って世の中を変えようとする新旧の開発者を紹介したものだ。

 実はここで紹介されている1人、デビッド・ニーマイヤー氏と筆者は、Appleが潰れかかっていた1990年代中頃に知り合って、今でも親しくしているが、本当に世界を変えた尊敬すべき友人の1人だ。前述のページにも書いてある彼の会社(AssitiveWare)は、肢体不自由の人を中心にさまざまな身体障害を抱えた人々が、社会において自力で活躍できるようにするためのソリューションを数多く開発してきた。できれば、存命中のスティーブ・ジョブズ氏にも注目して欲しかった会社だ。

iPod touch AppleのWebサイトに紹介されたデビッド・ニーマイヤー氏

 ある時から、彼が開発していたのと同様の機能がiOS標準として組み込まれるようになった。手足が動かない人でも、頭の動きや呼気、まばたきといった、どこか体の1カ所を自分の意思で動かすことができれば、それをスイッチ代わりにしてどんな操作でも可能にするKeyStorkeというソフトだ(このソフトを使うことで、手足がないにも関わらず、米国では有名なゲームレビュアーになった人もいる)。

 筆者は、あるWWDCで同様の機能がiOSに組み込まれたことで「Appleにビジネスチャンスを奪われてしまったんじゃないの? 大丈夫?」と彼に聞いたことがある。Appleとの秘密保持契約もあり、深いところまでは教えてはもらえなかったが、「そもそもそんなにビジネスとして成り立っておらず、むしろ維持することが大変になっていたので喜んでいる」と答えていたのを覚えている。

 現CEOのティム・クックは、彼がいかに大きく世の中を変えたかを認識して、アムステルダムにあるオフィスを訪問してツイッターで紹介したりもすれば、今回のように記事で取り上げようとしたりもしている。

 こんな姿勢からも、Appleは純粋に誰にとっても良いプラットフォームを提供することで、その上で世界を変えるプレイヤーが育つことを期待し応援している会社だということが分かる気がする。

 6月4日午前2時(日本時間)に始まるWWDCは、まさにAppleと、そんな開発者たちこそが主役のイベントであり、今回、発表されたiPod touchは、そうした開発者達の努力の結晶を、(手頃な価格によって)より多くの人々の元に届ける大きな使命を背負った製品でもある、という気がしている。

 基調講演での発表が楽しみでならない。

iPod touch 米サンノゼのマッケナリー・コンベンションセンターで開催されるワールドワイドデベロッパカンファレンス(世界開発者会議)。今回は何が発表されるのだろうか
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