冒頭で述べた通り、日本における5Gの動きは鈍いという指摘がある果たしてそれは本当なのだろうか。
IDC Japanを含め、IDCは世界の主要な国と地域に調査拠点を設けている。各地の拠点のアナリストが「米国」「カナダ」「日本」(以上は国別)「アジア太平洋地域」「西ヨーロッパ地域」に分けて分析した結果、IDCでは2023年時点での5G携帯電話(スマートフォン)の出荷台数シェアは米国で60%超、日本を含む他の国や地域で30%前後になると予測している。
米国だけ極端にシェアが高いのは、地理的条件などを加味すると、5G基地局の展開が急速に進むと見られているため。エリアがある程度広がれば、端末もある程度は普及するということだ。
今回の資料には含まれていないが、IDCでは、韓国と中国も予測自体は実施している。2023年時点の5G端末の出荷台数シェアは韓国では30%程度、中国では40%弱と、どちらも米国ほど高くならない見通しを立てている。
少なくとも、端末の普及面では日本は米国以外の諸外国と大差ないという見立てとなっている。導入の遅れをそこまで気にする必要はなさそうだ。
5Gではビット当たりの通信コストが4Gよりも下げられる。そのため、データ(パケット)通信容量を無制限、あるいはそれに近い形で提供する通信プランの登場が期待されている(参考記事)。
日本でもそれは同様だが、IDC Japanでは4G用料金プランをベースに、いくらかの加算をしたプランとなると予測している。先行する米国や韓国と同様のプラン設計だが、この「加算」をなるべく少なくできれば5Gの普及速度が速まる可能性がある。
端末について、IDC Japanはハイエンド端末から5G対応が始まると予想している。これは4Gと同様の展開だが、5G端末の平均価格は現行の4Gスマホよりもさらに高くなる見通しだという。具体的な金額にこそ触れなかったものの、「5Gスマホをいち早く買いたければ、今から貯金を始めた方が良い」とも分析している。端末の価格をいかに抑えるかという点も普及に向けた課題になりそうだ。
ただし、5Gの普及のカギを握るのは「5Gならではの使い方」を提案することにある。先述の通り、5Gが本領を発揮するのは早くても2020年代半ば以降。キャリアやサービス提供者は、「5Gならこんなこともできますよ」というビジョンを示しつつ、その実現に向けた課題を解決していくことが求められそうだ。
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