―― マルチキャリアMVNOですが、ショップがあると端末を一緒に買われることも多そうですが、その辺の事情はいかがですか。
藤野氏 現在の付帯率は、全体で3割程度です。以前はもっと高かったのですが、SIMカードを差し替えるだけで使えると訴求し、お客さま層を広げた結果、若干下がってそのぐらいの数値を維持しています。ショップに来られてセットでお買い求めになる方も多く、モバイル事業の中で端末が占める割合が大きいのは事実です。
端末に関してはiPhoneも取り扱っていて、好調です。カタログには載せていませんが、Webだけでなく実店舗でも販売しています。CPO(認定整備済品)ですが、主力は「iPhone 8」で、「iPhone SE」も販売しています。
―― ショップでユーザーとの接点があるとなると、より積極的に、ファンを増やしていくことができそうです。同じ電力系が母体のmineoは、そういった活動をしていますが、QTmobileではいかがでしょうか。
藤野氏 mineoの取り組みは、興味深いところがあります。MVNOがまだ不安だという方は多く、身近に使っている方がいれば安心できるからで、当社でもやってみたいと思うところはあります。ただ、そのハードルは決して低くありません。(mineoは)地道に積み上げてきたのが大きいと思っています。
ショップでは、今、スマホ教室のようなことを草の根的にやり、よさを体感してもらうことでお客さまを増やしていく取り組みをしています。電力系通信会社で、もともと光回線もやっていたので、そういう意味での安心感は、1つの材料になると思います。
取材後、本社付近にあるQTmobileショップを見学させてもらったが、サポート拠点としての重要さを認識できた。平日の夕方だったにもかかわらず、来客の頻度は高く、気軽に質問して帰っていく人もいたのが印象的だ。立ち聞きしていた限り、やや難易度の高い質問に対する回答も的確で、スキルの高さがうかがえた。mineoのようなファンとのコミュニティーまでは確立できていないが、そのポテンシャルはあるような気がしている。
全国均質だと思われがちなモバイル市場だが、MNOを見ても、ソフトバンクが九州で強かったり、auが沖縄ではシェア1位だったりと、実は地域ごとの偏りも大きい。その延長線上に、地域密着型MVNOの存在意義がありそうだ。特にMVNOの場合、規模の関係で、どうしても大都市圏以外への展開が遅くなりがち。プロモーションも手薄になるため、QTmobileのようなMVNOの活躍する余地は大きくなる。
一方で、1年間限定ながら、料金を6GB、990円に設定したり、マルチキャリアMVNOにいち早く目を付けたりと、企画やマーケティングに長けている印象も受けた。九州では、知名度に加えて、ショップ展開をはじめとした地の利もあり、他のMVNOはもちろんのこと、MNOとっても強力なライバルになりそうだ。
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