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7pay騒動から見えた、モバイル決済の懸念 生き残るために必要なものとは?鈴木淳也のモバイル決済業界地図(2/3 ページ)

» 2019年07月17日 13時39分 公開

増える「コンビニPay」と「銀行系Pay」

 一連の○○Payレースで、いわゆる「コンビニPay」は最後発組となる。ファミペイと7payの2つのみだが、7月1日という日程はポイント還元施策を利用するにはほぼギリギリのタイミングであり、以後参入する○○Payは、市場シェアという面で広がりは期待できず、「地域限定など特定市場での利用に特化」「特定のサービスや用途に特化したニッチ向けサービス」での利用にとどまることになる。

 コンビニPayの後に続く○○Payとは、銀行が提供する「銀行系Pay」アプリのことであり、今秋以降に順次リリースが見込まれている。

 現在、銀行系PayとしてはGMOペイメントゲートウェイが提供する「銀行Pay」に属する「はまPay(横浜銀行)」「YOKA!Pay(福岡銀行)」「ゆうちょPay(ゆうちょ銀行)」と、みずほ銀行が提供する「J-Coin Pay」がある。

 この他、日本電子決済推進機構(J-Debit)が提供する「Bank Pay」が、J-Debit参加各行から一斉にリリースされることになり、最終的に1000以上の金融機関が○○Payレースに参加することになるという。現在名前が挙がっていないメガバンクや大手行もBank Payを中心に参入が見込まれ、さながらイベント終了間際に大量の大花火が打ち上げられるイメージだ。

ファミペイ コンビニでの支払いに利用する全てが盛り込まれたスーパーアプリだと標ぼうする「ファミペイ」。単純な決済サービスではなく、利便性を強調する

 だが現在、Bank Payベースで10月1日までに参入可能な金融機関はごく限られるとみており、最終的にサービスインまでこぎ着けられるところは3桁に満たないというのが筆者の見立てだ。限られた市場で多くのコストを投入しても成功する確率は極めて低く、20や30も決済サービスが乱立しても生き残ることはできない。

 現在、各社は○○%還元の大規模キャンペーンを次々と打ち出して顧客を呼び込みつつ、定期的にサービスを利用する循環をうまく作り出そうとしているが、キャンペーン終了後も継続して利用されるサービスがどれだけあるだろうか。

 生き残るためには、キャンペーン終了後も相応の価値を提供できるかが重要だ。加盟店数か、便利な付加機能かは分からないが、他社より秀でた特徴を持つことは最低条件で、その上で一定規模を維持できた2〜3社を中心に○○Payのコード決済市場が構築され、残りは吸収合併や消滅、あるいはニッチな市場でほそぼそと生きていく形になると予想する。2020年夏のポイント還元施策終了時点で、ほぼ雌雄は決しているという見立てだ。

筆者がモバイル決済でSuicaを使う理由

 スケールできないサービスが生き残れない理由は明白で、利便性が低いからだ。例えば筆者はモバイル決済ではSuicaを多用しているが、ポイント付与もほぼ存在しないに等しいSuicaを利用するのは単純に「使える場所が多い」という理由による。

 ポイントをためることにあまり興味がないという理由もあるが、単純にサービスごとにチャージ金額が分散しているのが面倒という考えだ。

 PayPayやLINE Payなども利用しているが、前者は電子マネー非対応でPayPayのみ対応店舗がいくつかあること、後者は割り勘等で入手した送金額をそのまま支払いに充てる使い方が多いように思う。適材適所ではあるが、メインの支払い手段があって、それを補う形で他の決済手段があるという組み合わせだ。

 中国のユーザーは、気分でAlipayとWeChat Payを使い分けているという話を何度か聞いたことがある。キャッシュレス先進国としてよく挙げられるスウェーデンでは、普段の支払いはデビットカードを利用し、たまに気分や対面送信の場面でSwishを使うという話を聞く。もちろん、お得なポイントプログラムのついた専用アプリを決済に使うケースもあると聞くが、常に複数の決済手段を所持し、買い物単位で最適なものを適時使い分けるユーザーはそれほど多くないと筆者は考える。

Swish スウェーデンでは電話番号で送金可能な「Swish」アプリが広く普及し、同国でのキャッシュレス推進に大きく貢献した。一方で従来のカードや特定店舗のみで利用可能なアプリ、現金といった決済手段がいまだ複数存在する。だが実際には使い分けはあまり行われず、特定の決済手段が選ばれることが多いようだ

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