「Galaxy Note10」はなぜ2種類あるのか? Microsoftとの提携を強化する狙いは?石野純也のMobile Eye(2/2 ページ)

» 2019年08月11日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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Microsoftとの提携を一歩進めたSamsung、対Apple、対Googleを意識か

 Galaxy Note10、10+では、Microsoftとの提携も強化した。UNPACKEDには、同社CEOのサティア・ナデラ氏がゲストとして登壇し、Samsungとの良好な関係をアピールした。発表会では、Windows 10に搭載された「Your Phone(日本語環境ではスマホ同期)」をアピール。この機能自体は、他のAndroidスマートフォンやiPhoneでも利用できるが、Galaxy Note10、10+には、クイックパネルにワンタッチでスマホ同期にアクセスできるボタンを設けたという。また、スマホ同期を使った画面のミラーリングにも対応する。

Galaxy Note10 ゲストとして登壇した、MicrosoftのCEO、サティア・ナデラ氏
Galaxy Note10 クイックパネルからYour Phone(スマホ同期)を簡単に呼び出せる。画面のミラーリングにも対応

 OutlookでSペンをホバリングさせた際に、プレビューが表示されるようにするといったカスタマイズも加えられた。手書きのメモを取れるSamsung Notesアプリで、変換先の候補としてOfficeのWordを選べるのも、Microsoftとの関係を重視した対応といえる。さらに今秋には、Galaxyシリーズに搭載された標準のギャラリーが、One Driveとの同期に対応するという。

Galaxy Note10
Galaxy Note10 Samsung Notesから手書きの文字を変換し、Wordに書き出す機能も、Microsoftとの協業の成果といる
Galaxy Note10 One Driveとギャラリーの連携も進めていく

 DJコー氏は、「Microsoftとの業界をリードするオープンな協業は、次世代のモバイル体験で先駆けるための一助になる」と語っていたが、提携の背景には、製品の生産性を向上させたい狙いがある。特にGalaxy Noteシリーズは、先に挙げた通り、ユーザー層が明確だ。コンテンツを消費する端末というより、自らが何かを作り出す端末ともいえる。OfficeやOne DriveといったツールをそろえているMicrosoftは、うってつけの協業先だ。

 対Appleという観点でエコシステムを強化でき、さらにGoogleをけん制することも可能になる。Pixelシリーズに代表されるように、ここ数年は、Google自身もハードウェア事業に注力しているが、Microsoftとの提携を強化することで、こうしたGoogle端末との差別化もしやすくなる。プラットフォームとしてAndroidを使いつつ、Googleのエコシステムに飲み込まれないようにするためには、必要な提携強化だったといえる。

Galaxy Note10
Galaxy Note10 オープンコラボレーションの協業先として、Microsoftと手を組んだSamsung。AppleやGoogleに対するけん制という見方もできる

 Microsoftの視点で見ても、この協業は合理的といえる。同社のWindows 10 Mobileは、既に開発を終了しており、サポートの終了も間近に控えている。一方で、Microsoftとしては、モバイルの市場を手放すわけにはいかない。自身でOSを手掛けない以上、OSを手掛ける他のプラットフォーマーと組むか、Androidを採用するメーカーと組むかという選択肢になる。世界シェアトップのSamsungが、後者の中で最も影響力が大きいことは言うまでもない。

求められるフラグシップの差別化、今後のNoteは折りたたみモデルと統合か

 ディスプレイサイズのバリエーションを広げたGalaxy Note10だが、2019年前半のSamsungを振り返ると、フラグシップモデルで“多角化”を進めていることが分かる。2月に発表されたGalaxy S10シリーズでは、やや価格を落とした「Galaxy S10e」が加わった他、ディスプレイを折り曲げられる「Galaxy Fold」も9月に販売を再開する予定だ。成熟期に差し掛かったスマートフォン市場で、ユーザーのニーズが多様化していることがうかがえる。

Galaxy Note10 日本では未発売だが、2月に発表されたGalaxy S10eもラインアップの拡大を狙って開発された1台だ

 ただ、フラグシップ同士のバッティングをどう解決していくかは、今後の課題といえる。例えば、デザインやSペンの有無といった違いはあるものの、Galaxy Note10はGalaxy S10+にサイズ感が近く、カメラなど、スペックの共通点も多い。Sペンを重視しないユーザーにとっては、どちらを選んでいいのかが非常に分かりづらいはずだ。ユーザーが分散してしまうと、1モデルごとの採算性も悪化する。

 大画面化をいち早くリードしてきたGalaxy Noteシリーズだが、他社の追い上げもあり、画面サイズだけでの差別化は難しくなりつつある。ワコムの技術を採用したSペンは、今でもGalaxy Noteの強い個性で、スマートフォンの分野ではライバルもいないが、iPadのApple Pencil対応を広げるAppleなど、競合メーカーの一部も、スタイラスペンでの入力には力を入れ始めている。Samsungがアドバンテージをいつまで生かせるのかは、不透明な状況だ。

Galaxy Note10 Sペン以外での差別化が、難しくなりつつある

 Galaxy Harajukuのオープンに際して来日したDJコー氏は、Galaxy NoteとGalaxy Foldを統合する可能性を示唆していたが、Samsung側も、ラインアップに何らかのテコ入れをしたいと考えているようだ。Galaxy Noteは、「大画面」と「ペン入力」の世界をいち早く切り開いてきたスマートフォンだが、それもGalaxy Note10で9世代目になり、徐々に陳腐化している。5G時代に向けた“次の一手”にも期待したい。

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