8月7日(現地時間)に米ニューヨーク州で発表されたのは、2つの「Galaxy Note10」だった。1つが、従来路線を継承した「Galaxy Note10+」。もう1つが、画面サイズはほぼそのままに、本体をコンパクト化した「Galaxy Note10」だ。代を重ねるごとにベゼルの幅を抑え、画面サイズを拡大してきた同シリーズにとって、メインのモデルでの小型化は大きな転換といえる。
これまでも「GALAXY Note Edge」のような派生モデルは存在したが、ディスプレイサイズの異なる2モデルを同時に打ち出したのは、初の試みといえる。この2モデルや、イベントで語られたことなどから、Samsung Electronicsの最新戦略を読み解いていきたい。
既報の通り、2モデルに分かれたGalaxy Note10だが、位置付けはどちらもフラグシップモデル。米国支社でプロダクトマネージャーを務めるドリュー・ブラッカード氏は、UNPACKEDで「パワーとプロダクティビティを2つのサイズに詰め込んだ」と語った。実際、両機種ともプロセッサやカメラの性能は同じ。Galaxy Note10+のみ、ToFを搭載していたり、急速充電のスペックが高かったりといった違いはあるが、ユーザー体験の“差分”として大きいのは、やはり画面サイズと解像度になる。
では、なぜGalaxy Note10は、2つのサイズで展開するのか。答えは明快で、特に女性のユーザーから「もう少し小さなNoteはないのか」といった声が同社に寄せられていたという。ユーザー層を拡大するため、レッドやピンクなど、従来路線のGalaxy Note10+にはないカラーもGalaxy Note10に採用した。こうした経緯を考えると、Galaxy Note9の直接的な後継機はGalaxy Note10+だ。どちらを中心に据えるかにもよるが、Galaxy Note10は、新ジャンルの“コンパクトなNote”といえる。
ToFカメラなどが搭載されていないこともあり、価格もGalaxy Note10の方が安い。価格の高騰が続くハイエンドモデルだが、その負担感を緩和する狙いもありそうだ。Galaxy Note10の最安モデルはLTE版の949ドル。これに対し、Galaxy Note10+はLTE版でも1099ドルと、Galaxy Note10より150ドルほど高い。韓国で発売される5G版のGalaxy Note10も1049ドルで、Galaxy Note10+のLTE版より安価に抑えられている。
Samsungが注力しているのが、「ユーザー体験に革新をもたらすこと」(IT&モバイル部門CEO DJコー氏)。Samsungによると、Galaxy Noteシリーズは、ビジネスマンの中でも、特にクリエイターやフリーランスといった属性のユーザーが多いという。こうしたユーザーのニーズに応えるため、Galaxy Note10、10+では、Sペンの機能が強化された。DeXの機能を拡大し、PCと連携できるようにしたのも、クリエイティブなニーズを踏まえてのことといえる。
コー氏が語ったユーザー体験の革新を支えるのが、5Gだ。コー氏は「Samsungは、それを実現するための最前線にいる」と自信をのぞかせた。端末だけでなく、基地局などのインフラまで手掛けるSamsungにとって、通信技術は強みの1つ。「Galaxy S10」世代では派生モデルとして「Galaxy S10 5G」を用意していたが、Galaxy Note10、10+は、LTE版と5G版のどちらかを選ぶことができる。派生モデルではなく、ラインアップの中心となるモデルが5Gに対応したというわけだ。
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