ペン操作で驚くほど簡単に使えるiPad版「Illustrator」 課題は生産性にあり

» 2019年11月06日 17時22分 公開
[太田百合子,ITmedia]

 デザイナー御用達のベクターグラフィック編集ソフト「Adobe Illustrator」が、iPadでも使えるようになる。米ロサンゼルスで開催中のクリエイター向けイベント「Adobe MAX 2019」で発表されたもので、リリースは2020年の予定。イベント会場では早速デモ版に触れることができ、製品担当者に話を聞くこともできた。

 Adobe IllustratorのiPad版では、デスクトップ版と同様にベクターグラフィックが扱えるが、その操作性はかなりシンプルかつApple Pencilに最適化されている。左側にツール、右側にレイヤーなどのパネルという構造はデスクトップ版と同じで、選択、ペン、鉛筆、長方形などのツールを選んでオブジェクトが作成できる。

 iPadらしい機能として、カメラで手書きした下書きを取り込み、自動でトレースしてオブジェクト化が簡単にできる他、描いたオブジェクトを放射線状やパターン、鏡状に簡単にリピートできる機能も備わっている。Apple Pencilを使うことで初心者でも簡単にベクターグラフィックが扱え、楽しくデザインができるといった印象だ。

Illustrator Illustrator iPadのデモ画面。左側にツール、右側にレイヤーなどのパネルがあるが、ハサミ、グラフ、に加えてリピートツールは右側に配置されている
Illustrator Illustrator iPad版を担当するAdobe デジタルメディア デザイン シニア ディレクターのエリック・スノーデン氏(左)と、同デザイン製品シニアプロダクトマネジャーのウェイン・ホン氏(右)
Illustrator Illustrator iPad版で、オブジェクトを放射状にリピートできる機能を披露するスノーデン氏

 Adobe デジタルメディア デザイン シニア ディレクターのエリック・スノーデン氏によれば、Illustrator iPad版では、既にリリースされたPhotoshop iPad版と同様にクラウドを通じてデスクトップ版と作業の共有が可能で、デスクトップ版で作成したファイルがiPad版でもシームレスに扱えるようになるという。Photoshop同様、iPad版のリリースに合わせて、デスクトップ版もクラウドへのファイル保存に対応するようだ。

 このタイミングでのiPad版の提供について、デザイン製品シニアプロダクトマネジャーのウェイン・ホン氏は「Illustratorは多機能で非常にパワフルなソフトウェアであり、iPadでレンダリングするにはハードウェアのパワーが必要になる。またApple Pencilによってフリーハンドでのアートワーク作成が可能にったことも大きな理由の1つ」と説明。最近はiOSでAdobe無料フォントが利用可能となったが、これによって「リッチなタイポグラフィーが扱えるようになるなど、環境が整ったことも大きい」という。

 前述の通りデモを試した限りでは、操作がシンプルで初心者にも無理なく扱えそうなiPad版だが、目標としているのは「プロのクリエイターがデスクトップ版と同じことを、iPadでもできるようにすることだ」とスノーデン氏。現在Photoshop iPad版ではデスクトップ版のフル機能は使えないが、今後アップデートで対応予定となっている。

 Illustrator iPad版も同様に、最初からフル機能搭載とはいかないものの、新しいユーザーへの間口を広げると同時に、「プロフェッショナルに、使ってもらえるものにしていきたい」という。

 そのために重要になってくるのが「ショートカット」だ。デスクトップ版のユーザーの中にはキーボードのショートカットを用いて、まるでピアノを弾くかのようにIllustratorを使いこなしている人も多いが、それと同じ生産性を「キーボードがないiPadでどう実現するか」は大きな課題だという。

 Adobe FrescoやPhotoshop iPad版では、タッチの仕方によって機能を切り替える、つまり、タッチをShiftキーやコマンドキー(コントロールキー)のように活用する「タッチショートカット」が採用されているが、Illustrator iPad版でも同様の機能が用いられることになりそうだ。ただし「デスクトップ版をそのままコピーするのではなく、あくまでもiPadらしく、楽しく使えることが大切」とスノーデン氏は話している。

(取材協力:アドビ システムズ)

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