Googleサービスを使えないHuaweiが選択した“プランB” スマホ事業の勝算は?石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2019年11月16日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 米国商務省の「エンティティリスト」に登録され、同国の企業との取引に大きな制約が生じているHuawei。既存端末のサポートはユーザー保護の目的で認められている一方で、新たに発売される端末には、Androidを搭載できない状況が続いている。9月にドイツ・ミュンヘンで発表された「Mate 30」シリーズは、欧州やアジアなどの一部地域で、Googleのサービスを抜いた形で発売になった。

 このような状況の中、ファーウェイ・ジャパンはSIMロックフリースマートフォンの「nova 5T」を日本で発表。11月29日に発売する。発表会ではファーウェイデバイス 日本・韓国リージョンプレジデントの呉波氏が、端末事業の今後の方針を語った。制裁が長期化したときの切札として、同社が着々と準備を進めているのが、「HMS(Huawei Mobile Service)」だ。

Huawei SIMロックフリースマートフォンの「nova 5T」を発表。11月29日発売される

「nova 5T」は滑り込みセーフで発売に、Mate 30は年内投入を見送る

 米国からの輸出規制を課されているHuaweiだが、日本では11月29日に、5万円台と価格を抑えたハイエンドモデルのnova 5Tを発売する。もちろん、OSにはAndroidを採用。PlayストアやGmail、Google マップ、Google フォトといった各種Googleのアプリ、サービスも利用できる。厳密に言えば、制裁下でもオープンソースとしてのAndroid(AOSP)は利用できるが、nova 5Tが採用したそれは、GoogleのサービスやAPIを含んだ「GMS(Google Mobile Service)」まで含んだ正真正銘の「Android」だ。

Huawei OSにはAndroidが採用され、Play Storeなども問題なく利用できる

 グローバルでは、nova 5Tの発表は8月だった。当時、既に制裁は発動していたが、「米国の措置がある前にGoogleから認証を取得していたため」(呉氏)、“既存の端末”と見なされたことがうかがえる。とはいえ、米国と中国の外交問題や安全保障が密接に絡んでいるだけに、Huaweiへの制裁は、いつ終わるのかが不透明。ある日突然、規制が緩和される可能性もある一方で、米国側が安全保障を盾に、かたくなに譲歩しない恐れもある。

Huawei 取材に応じた、ファーウェイの呉氏

 実際、その影響はじわじわと出ている。例年、日本では12月にMateシリーズが発売されていたが、今回発表されたのはnova 5Tのみ。「Mate 30」や「Mate 30 Pro」の発売は、事実上先送りされた格好だ。呉氏によると、Mate 30シリーズの投入は現在検討中で、「5Gの商用サービスが始まったとき、それに合わせて5Gモデルを出していきたい」という。「4Gモデルは発売しない」(同)ことは決定事項のようだ。

 5Gの商用サービスは、ドコモが春、auとソフトバンクが3月を予定する。米中間の動向をにらみながら、4〜5カ月の猶予期間を取ったというわけだ。海外を見ると、「Mate 30シリーズは、西欧、中国、香港、アジア太平洋で発売されている」(同)という一方で、Googleのサービスが利用できないスマートフォンが、日本市場で受け入られる可能性は非常に低い。呉氏が「AndroidやGMSの搭載は優先事項」と語っていた通り、AndroidやGMS抜きで発売せざるえない現状は、ファーウェイにとっても本意ではないことがうかがえる。

Huawei 9月に発表されたMate 30シリーズは、4G版の日本投入が見送られた。キャリアが5Gの商用サービスを開始するのに合わせ、5G版の発売が検討されている

 Mate 30シリーズは、ハイエンドモデルで価格も高いため、結果として販売台数も限定される。誤解を恐れず言えば、Huaweiのシェアを大きく左右する“主力モデル”ではない。日本のSIMロックフリースマートフォン市場に歴代モデルを投入してきたのは、技術力やデザイン性などをアピールする色合いが濃い。その意味で、ビジネス面での影響は限定的だ。一方で、このまま制裁が続けば、次のミドルレンジモデルもGMS抜きのAOSPを採用した状態で投入せざるをえなくなる。特に売れ行きのいい「P30 lite」の後継機を発売するまでには、何らかの“対策”が必要になる。

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