世界を変える5G

ドコモが「Amazonプライム1年間無料」で見据える先 ECを強化し、5Gへの布石に石野純也のMobile Eye(1/2 ページ)

» 2019年11月30日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 ドコモとAmazonは、12月1日から「ドコモのプランについてくるAmazonプライム」キャンペーンを実施する。内容はシンプルで、新料金プランの「ギガホ」に契約しているユーザーが申し込むと、Amazonプライムが1年間無料になるというものだ。合わせて「スタートアップキャンペーン」と銘打ち、「ギガライト」もこのキャンペーンの対象にする。キャンペーンが2つに分かれていて少々複雑に聞こえるかもしれないが、「新料金プランならAmazonプライムが1年無料になる」と言えば理解しやすいだろう。

ドコモ、Amazon 12月1日から、ドコモはAmazonプライムが1年無料になるキャンペーンを開始する。写真はドコモの吉澤社長(左)と、アマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長(右)

 Amazonプライムの料金は、年間4900円(税込み)。新規契約などの縛りがないため、もともとAmazonプライムを利用していた人にとっては事実上の値下げになる。ドコモがこのタイミングでAmazonとの関係性を深めた背景には、競争環境の変化がある。Eコマースサービスが手薄だったドコモならではの事情も、Amazonと手を組んだ理由の1つといえる。2020年春の開始が迫る、5G向け料金プランの布石という意味合いもありそうだ。

ドコモ、Amazon スタートアップキャンペーンが適用され、ギガホ、ギガライトの両方がキャンペーンの対象になる

必然だったAmazonとの連携強化、電気通信事業法改正も影響

 国内最大手のドコモと、「GAFA」の一角であるAmazonが手を組むのは、意外なことに思えるかもしれない。しかしドコモの吉澤和弘社長が「Amazonと連携したのは自然な流れだった」と語っていたように、2社の歴史を踏まえると、このキャンペーンはむしろ必然だったと捉えることができる。ドコモとAmazonが急接近したのは、2012年のこと。Kindleにドコモの回線を利用したのがその“なれそめ”だ。

ドコモ、Amazon ドコモとAmazonの歩みを振り返る吉澤社長

 他の協業先にイコールフッティングを求められる恐れがあったため、接続先をAmazonのサーバに限定せざるをえなくなったエピソードは、ドコモ側が禁止行為規制の緩和を求めるなかで、たびたび語られている。法の壁がなければ、実現した以上に大々的な提携をしたかったというわけだ。逆にドコモは、自社サービスのサーバにAWS(Amazon Web Service)を利用。16年5月にはドコモブランドのスマートフォンに、Amazonアプリのプリインストールを開始した。

ドコモ、Amazon 2社の連携は、2012年までさかのぼる。Kindleに回線を提供したのが、そのきっかけだ

 さらに、17年6月にはAmazon側が決済サービスの「ドコモ払い」(当時)に対応。18年12月には「d払い」となり、大々的な還元を行ってきた。全ネットの店舗も適用されるキャンペーンだけでなく、Amazon専用のキャンペーンもたびたび行うなど、決済分野で深く連携してきた結果、「ネット決済の中で使っていただいている額は(Amazonが)一番多い」(同)と、Amazonはd払い加盟店の“顔”になりつつあった。20年3月31日まで、キャンペーン対象者がAmazonでd払いを使った際につくdポイントが5倍になる取り組みも実施する。

ドコモ、Amazon キャンペーンなどが功を奏し、Amazonでのd払い取扱高は1年で2倍以上に成長した
ドコモ、Amazon Amazonプライム1年無料と同時に、d払いのポイント5倍キャンペーンも実施する

 一方で、「ドコモの契約者でも、Amazonプライムを使っていなかった方がいた」(同)。既存の利用者も、新料金プランにするだけで4900円が1年無料になるのはお得感がある。料金プランの移行に弾みをつけたかったドコモは、「ギガホの魅力を高め、新たな価値をお客さまにご提供するため、Amazonと取り組んでいくことになった」(同)というわけだ。では、なぜこのタイミングで連携を発表したのか。背景には、電気通信事業法の改正がある。

 吉澤氏は「端末値引きという競争ではなく、魅力的なサービスを付加してさらに料金プランを磨き上げていく必要がある」と語るが、10月1日以降、端末割引の上限が省令で2万円に制限された。各社のエリアに大きな差がなくなりつつある中、キャリアは料金プランでの競争を余儀なくされている。とはいえ、単純な値下げを繰り返すのには限界もある。同時に収益性を高めなければならないのも、キャリアにとっての課題だ。お得感を出しつつも、料金水準は変えない――サービスをバンドルするのは、このトレードオフを解決するための王道だ。

ドコモ、Amazon 連携強化の背景には、電気通信事業法の改正があるという

 同様にドコモは、12月1日からとウォルト・ディズニー・ジャパンと共同で運営する「Disney DELUXE」を、新料金プランの契約者に1年間、無料で提供する。吉澤氏によると、「対象者は必ずしも一致していないが、新しい料金プランの魅力を高めるという取り組みという意味では、考え方は同じ」だという。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2025年06月13日 更新
  1. UQ mobileの新料金プランに乗り換えるべき? 旧プランと比較、Y!mobileや格安SIMも踏まえて解説 (2025年06月12日)
  2. 「ポケモンGO」大阪イベントでスマホの通信はどこまで快適だった? 1キャリアだけ厳しい結果に、その理由は? (2025年06月10日)
  3. auとUQ mobileの新料金プラン、8割が「魅力的ではない」と回答 「付加価値より安さ」を求める人が大半なのか (2025年06月13日)
  4. 「シャープペンのような描き心地」をうたうタッチペン、極細1mmのペン先 エレコムから (2025年06月11日)
  5. “Xperiaキラー”なスマホ登場 「HUAWEI Pura 80 Ultra」の武器は望遠力、光学3.7倍と光学9.4倍を切り替え可能 (2025年06月12日)
  6. AppleがAIで出遅れても“後追い”で十分な理由、iOS 26は新デザインでAndroidとの差別化が明確に (2025年06月13日)
  7. ハリポタモデルもある“デカバッテリー”スマホ「REDMI Turbo 4 Pro」が登場 (2025年06月12日)
  8. 「Android 16」正式版リリース 通知やメッセージを改善、高度なセキュリティ機能も (2025年06月11日)
  9. ソフトバンクで約14万件の個人情報漏えいの恐れ 業務委託先企業で「不適切な取り扱い」の可能性 (2025年06月11日)
  10. 楽天カードアプリ、所有するカードの画像を表示可能に セキュリティコードも分かる (2025年06月12日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー