Qualcommの5G対応ソリューションの提供は2年前のTech Summitで発表が行われており、現時点で対応デザインの製品は230以上存在するという。これをさらに強化する製品として、今回新たにフラグシップSoCの「Snapdragon 865」、そしてモデムをSoCに包含した普及型モデル「Snapdragon 765/765G」が発表された。
詳細については会期の2日目以降に改めて説明するとしているが、Snapdragon 865ではCPUとGPUともに全体的な機能アップが図られている他、先述のAI関連では2倍近いパフォーマンス向上が実現できているという。ニーズのある機能を中心に順当進化したSoCということで、2020年後半に登場するスマートフォンにおいて中心的な存在となるだろう。
会場では日本進出が話題となっているXiaomi共同創業者の1人で、同社長のLin Bin氏が登場し、間もなく発表されるとみられる新フラグシップ製品「Mi 10」では、このSnapdragon 865を搭載して世界に先駆けて市場投入することを予告している。
これまで日本などでは特にハイエンド端末ばかりに注目が集まり、Snapdragonにおいても「8xx」シリーズにばかり話題が集中していた印象がある。携帯キャリアの購入補助のおかげで通常よりもハイエンド端末が安価に購入できていたことによるものだが、総務省ではこの周辺の施策を徹底的に規制する方針に向いており、今後日本でもハイエンド端末が売れなくなる可能性がたびたび指摘されている。
前述のように、Qualcommを含む5G関連各社では5Gの早期展開を目指しており、「より早く5Gを普及させられる技術」が重要だと考えている。DSSはその1つだが、同時にデバイスの種類も5G対応のものがより早い段階で増えることが望ましく、1チップ構成で低コスト化やデザインの自由度が向上するSnapdragon 765/765Gは注目の製品であり、2020年以降の5Gの急展開において重要な役割を果たすと考えられる。
型番からも分かるように、Snapdragon 7xxシリーズは8xxよりも下位にあたるものの、ミッドレンジの6xxシリーズよりは高い位置付けであり、ほぼ準ハイエンドに相当する製品だと考えていいだろう。日本での普及観測と合わせ、この詳細は改めてフォローしていきたい。
もう1つ注目なのが、「Snapdragon 865/765 Modular Platforms」だ。これはアンテナなど無線モジュールを含む形でアプリケーションプロセッサやモデムをモジュール化してしまい、デバイスにモジュール単位で組み込みを行うことで、デバイスごとにキャリアIOTなどの認証を通さずとも、全てQualcomm側が必要な認証を取得した形でユーザー企業に提供する仕組みとなる。第1弾として、米Verizon Wirelessと英VodafoneがModular Platformへの対応を表明しており、今後も対応キャリアの増加が見込まれる。5G対応デバイス増加の面で期待したい。
もう1つが超音波を使ったオンスクリーン指紋認証技術の「3D Sonic Max」だ。詳細は2日目以降に改めて紹介されるとみているが、読み取り領域の拡大に2本指同時判定など、使いやすさの面で機能アップしている。顔認証のみの採用に傾倒するメーカーがある一方で、指紋認証はその利便性から変わらず多くのAndroidデバイスで採用が続いており、デザイン自由度を上げるうえで重要な技術となるだろう。
(取材協力:クアルコムジャパン)
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