LTE(Long Term Evolution)に次ぐ新たな通信規格である「5G」。韓国や欧米では商用サービスが始まり、日本でもその前段階である「プレサービス」が順次始まっている。特にNTTドコモが9月20日から開始するものは、商用サービス時と同様の環境で提供されることから注目を集めている。
そんな中、スマートフォンやタブレット向けのプロセッサやモデム(通信チップ)を提供する米Qualcommのクリスティアーノ・アモン社長が来日。日本の報道関係者に5Gの近況を説明した。
この記事では、説明会における質疑応答の中から、興味深いやりとりをご紹介する。
Qualcommは、スマートフォン向けのモデムやチップセットにおいて大きなシェアを持つ。その顧客には米Appleも含まれており、iPhoneのモデル(仕向け先)によってはQualcommのモデムを採用していた。
ところが2017年1月、特許ライセンス料を巡りAppleはQualcommを提訴し、Qualcommも同年3月にAppleを反訴。ある意味での「訴訟合戦」となった。
しかし2019年4月16日、両社は和解に至り、6年間のライセンス契約を結ぶことになった。この和解は、iPhoneやiPadの5G対応を進める上で不可避だったという見方が強い。
今回の説明会では、Appleとの関係について質疑があった。
―― 少し前にAppleと「仲直り」しました。少し話しにくいかもしれませんが、どのような経緯があり、これがモバイル通信業界に与える影響を与えるのか教えてください。
アモン社長 良い質問ですね。
Appleとの和解については、Qualcommが提供する価値やビジネスを理解して頂いた結果、このような合意に至ったものと考えています。業界全体にとっても、良いことだと思います。
モバイル通信業界におけるリーダーである両社が仕事をすることは自然なことだと思います。Appleとは複数年のライセンス契約も合意しましたし、私たちのチップを使って、Appleから5G製品が出てくるのを楽しみにしています。
間もなく登場する2019年のiPhoneは5Gに対応していないが、2020年のiPhoneではQualcommのモデムによって5G対応が行われる可能性がありそうだ。
先述の通り、5Gの商用サービスは既に欧米や韓国で始まっている。9月20日からドコモが始めるプレサービスは商用サービスと同じシステムで行うものだが、あくまでも“プレ”サービスであり、一般ユーザーが契約できるサービスではない。
このことから「日本は5Gで出遅れているのでは?」という指摘が多くなされており、それを懸念する声がさまざまな場面で聞かれる。
今回の説明会でも、日本における5Gへの歩みについて質問があった。
―― 5Gのグローバルにおけるローンチ(規格策定作業や商用化への過程)を1年程度前倒したという話がありました。日本では明日(9月20日)からドコモが商用システムベースでプレサービスを開始しますが、(本格的な)商用サービスは2020年春からで、世界から見ると遅れている状態ともいえます。このことについて、アモン社長はどのように考えているか、見解を聞かせてください。
アモン社長 日本においてプレサービスが始まることは大変喜ばしいことです。
日本を見てみると、(商用サービスに向けた)5G用周波数帯域の割り当てが既に明確な形で行われています(参考記事)。一方で、ヨーロッパの一部ではまだ(5G用帯域の)割り当てが完了していませんし、(すでに商用サービスが始まっている)米国でも一部にそのような状況があります。
私は(日本での)プレサービス開始に興奮していますし。2020年のオリンピック(夏)を待たずに試していただくことで、市場が(おのずと)5Gを求めるようになると思います。
アモン社長としては、5Gで使う周波数帯域が明確に決まっている点が日本のアドバンテージであると考えているようだ。
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