ソフトバンクが、7月26日から28日にわたり、新潟県湯沢町で開催された「FUJI ROCK FESTIVAL '19」(以下、フジロック)で、5Gのプレサービスを提供した。商用サービスとは周波数帯が異なり、コアネットワークもプレサービス専用のものだったが、来場者は5Gを通して配信された映像やVRコンテンツを楽しむことができた。
5Gの送受信に利用するスマートフォン型の端末を、ソニーモバイルコミュニケーションズとシャープの2社が提供したのも、大きなトピックといえる。ここでは、そのプレサービスの様子をお届けしたい。
プレサービスと銘打っていたのは、一般ユーザーが5Gを通じて配信されたコンテンツを楽しめたためだ。会場にはソフトバンクがブースを出展しており、そこに設置されたディスプレイには、各会場の映像が8つ同時に配信されていた(取材時は、天候の関係で映像は6つに減っていた)。ソフトバンクのブースは入口の近くに配置されていたため、来場者は映像を見て各会場の混雑度合いを確認できた。この映像はアプリ経由で、フジロックの会場にいないユーザーにも配信。5Gが使われていたのは、映像をアップロードする区間だ。
会場に設置された8つのカメラは、コンテンツサーバにつながり、そのコンテンツサーバが5G端末に接続。現地に設置された基地局を介して、インターネットに映像を送っていた。端末はソニーモバイルとシャープが開発した試作機で、いずれもテザリングでコンテンツサーバにつながっていたという。映像自体の解像度は非公開だったが、乱れはなく、常時配信ができていた。
もう1つのプレサービスが、VR映像の配信だ。ソフトバンクのブースに複数台のVRゴーグル「Oculus Quest」を設置。Oculus Quest自体はWi-Fiにしか対応していないが、先に挙げたスマートフォンからテザリングを利用する形で、間接的に5Gのネットワークに接続。YouTubeから変換した映像を視聴できた他、六本木ヒルズのイベントブースとつなぎ、参加者同士が言葉やジェスチャーでコミュニケーションを取ることができた。同じVR空間内でフジロック会場と六本木ヒルズをつなぎ、一緒に音楽イベントを楽しむというのがコンセプトだ。なお、5Gで接続したのはフジロック会場のみ。六本木ヒルズ側は、光回線が利用された。
筆者もVRを体験したが、あたかもその場にいるかのように、六本木ヒルズの関係者とコミュニケーションを取ることができた。会話ができたことに加え、アバターのジェスチャーで他のユーザーとやりとりできたのも新鮮だった。「ハイタッチしましょう」という呼びかけに応じて手を挙げると、相手と筆者のアバターがほぼリアルタイムで反応。これは、遅延の少ない、5Gならではの体験といえる。
VRは、フジロック参加者も体験することができた。印象的だったのは、“VR待ち”の行列ができていたこと。「なぜ、音楽イベントでわざわざVRを?」と疑問に思ったが、ある参加者は「ソフトバンクが配布していたTシャツが欲しかった」と、その理由を語った。参加者によると、VRを体験すると、ソフトバンクの「お父さん」をあしらったフジロック限定Tシャツがもらえるとのこと。全員がそうとは限らないが、“VR待ち”ではなく、“Tシャツ待ち”だった人もいたようだ。一方で、VR自体については「(六本木の人と)会話できるのがよかった」と語っており、好評だったこともうかがえた。
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