フジロックの会場は人が密集するため、大手3キャリアは移動基地局車を配備し、電波状況の改善に努めていた。ただ、やはり場所によってはつながりにくくなってしまったり、スループットが極端に低下したりすることもあった。そのような状況で、カメラ映像の常時配信や、容量の大きなVR映像を受信できたのは、5Gのネットワークを別に用意した成果といえる。理論値やスループットは非公開ながら、「ほぼ理論値通り出ていた」(担当者)ため、映像にも十分な実力を発揮できた格好だ。
利用したのは、ソフトバンクが獲得した商用サービス向けの周波数ではなく、実験局の3.7〜3.8GHz。帯域幅は100MHz幅で、5GのNSA(ノン・スタンドアロン)方式を利用した。NSAはLTEも併用する方式でコントロールプレーン(制御信号)はLTEのものを使用する。そのため、5Gへの接続には「アンカーバンド」と呼ばれるLTEが必要になる。今回の実験では、アンカーバンドに700MHz帯のLTEを採用した。5Gが割り当てられた周波数ではなく、実験局だった理由は「企画自体が割り当て前から進んでいたため」(同)だという。
ソフトバンクでは、福岡のヤフオクドームで5Gの実証実験を行っているが、今回のフジロックでは、「一般のお客さまが多く体験できる」(同)という理由で、プレサービスに改称。実験局ではあるが、「免許をいただいてから、初のプレサービス」(同)という位置付けにもなる。商用サービスとは周波数が異なるが、近い帯域ということもあり、伝搬特性などのデータや運用ノウハウは応用できるという。担当者は、「ネットワーク設計で、今まで(LTE)とは違ったノウハウをためることができた」と自信をのぞかせた。
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