auが4年連続1位、カギは“分離プラン”にあり? J.D.パワーの携帯キャリア満足度調査で見えたこと(1/2 ページ)

» 2019年12月06日 06時00分 公開
[房野麻子ITmedia]

 J.D.パワーが2019年の「携帯電話サービス顧客満足度調査」の結果を発表した。この調査は1年に1回、毎年同時期の7月に実施しており、2019年が21回目になるという長い歴史を持つ調査だ。今回はauが満足度で1位となり、4年連続1位をキープしている。

 携帯電話サービスの満足度調査はどのような形で行われ、何が重視されているのか? auはどこが評価されて4年連続1位となっているのか? J.D. Power Japan Global Business Intelligence部門 通信・テクノロジーサービスインダストリー シニア ディレクターの野本達郎氏にうかがった。

J.D.パワー 2019年の「携帯電話サービス顧客満足度調査」結果

2万7000ユーザー以上を調査する大規模調査

 携帯電話サービス顧客満足度調査は、ドコモ、au、ソフトバンク(Y!mobileを含まない)という“ピュアMNO”を対象に、16歳から64歳までの男女に質問する形で実施している。2011年からインターネットを利用して調査しており、J.D.パワーの調査の中でもかなり大規模な調査に分類されるという。

J.D.パワー 調査方法の概要

 沖縄県を除き、北海道から九州までの各地区でドコモ、au、ソフトバンクのユーザーから1000サンプルずつ、合計2万7600サンプルの回答を回収している。沖縄地区のサンプルが少ないのは、それだけの数を取れないため。

 発表している数字は、2万7600件から出される単純な平均点ではない。地域の構成比に合わせて補正をかけるウエイトバック集計を行っている。

 また、J.D.パワーの特徴である「満足度構造」も加味されている。満足度構造とは、調査対象となるサービスについて各種評価領域を設定し、ユーザーがどの領域をどの程度重視しているかをパーセンテージで示したものだ。

 携帯電話サービスの場合は「各種費用」「通信品質・エリア」「各種提供サービス」「電話機」「アフターサポート」「電話機購入経験」の6つの評価領域を設定しており、パーセンテージの数値が高いほどユーザーはその領域を重視していることになる。総合満足度への寄与度、相関が強いということになり、得点に寄与度に応じた重みが付けられる。つまり、満足度構造でパーセンテージが高い領域で高い得点を得ると、それだけ総合評価も高くなるということだ。

 なお、「各種提供サービス」は、オプションやポイントプログラムなど、プラスαのサービスの領域。「電話機購入経験」はショップ、「アフターサポート」はコールセンターやオンライン手続きなどの領域だ。

 質問は100問近くあり、10点満点で聞いていく。それ以外にも「○○を使っているか?」「どの料金プランに入っているか」といった質問もある。回答する人の負荷も大きい調査だ。

 例えば「電話機」の評価であれば、機能、外観などを評価してもらった後、「電話機全体として、10点満点中何点を付けますか?」という質問がある。「各種提供サービス」であれば、ポイントプログラムの評価やオプションの充実度を聞いた後に、「各種提供サービス全体として、何点を付けますか?」という質問がある。

 「質問の最後に全体満足感を聞いて相関を見ていきます。満足度構造を調べる質問では『どれが重要ですか?』という質問にはあえてせず、回答者の自然な心理を数値化しようとしています」(野本氏)。

 この中で携帯電話サービスで最もユーザーが重視し、総合満足度への寄与度が高い、重み付けの大きいファクターが「各種費用」だ。料金プランや月々の利用料金のことで、電話機自体の価格も入った費用で評価されている。

J.D.パワー ユーザーが何を重視しているかの指標となる顧客満足度構造では、「各種費用」が25%でトップだった

3キャリアとも、1000点満点で500点台と低いのはなぜ?

J.D.パワー J.D.パワーの野本達郎氏

 こうした調査を経て、2019年もauが1位になった。auは「通信品質」を除く5領域で一番高いスコアとなっている。

 auが540ポイント、ドコモが531ポイント、ソフトバンクが519ポイントで、auとドコモが9点差、ソフトバンクとは21点差あるが「それほど極端に大きな差があるわけではない」(野本氏)という。1000点満点で20点差でも、100点満点だったらたった2点差だ。54点と52点だと考えれば差はほとんどない。

【更新:2019年12月6日12時58分 J.D.パワー側の意向により、点差に関する野本氏のコメントを、一部修正しました】

 それよりも気になるのが全体的なポイントの低さだ。野本氏によると「携帯電話業界の総合満足感はなかなか高いスコアが取れない」という。それには2つの理由がある。まず、費用が高いと高スコアは取れない。もう1つは、携帯電話は使えて当たり前のサービスなので、ユーザーが感動しにくいためだ。そうなると質問に対して、5点、6点の「普通」という回答になるという。

 「キャリアさんは通信品質の改善に長い時間と労力を割いています。その労力がユーザーには伝わっていない」と野本氏。日本のキャリアはもっとエリア構築の苦労、通信品質の素晴らしさをアピールすべきかもしれない。

 調査の詳細データは公表されていないが、総合満足度への寄与や他社とのスコアの差で見ると、「auは『各種費用』の評価が良いのが目立つ」という。調査は7月に行われているので、新プランの「ピタット/フラットプラン」の評価が高かったということかもしれない。また「各種提供サービス」領域で、auは「スマートパス」系の評価が非常に高いという。

 なお、各社ともスコアは2018年とほとんど変わらないが、全体的な満足度は「長いトレンドで見ると下がり目にある」という。

J.D.パワー 写真のオレンジのラインは総合的な満足度、グレーのラインは料金に対する満足度、黄色の棒グラフは月々の利用料金を質問した際の平均値を表している。総合満足度も料金に対する満足度も低下傾向にある

 金額が上昇する要因には、フィーチャーフォンからスマホに変わったことの他、携帯電話の料金に今は各種サービスの料金などいろいろなものが含まれるせいもあるという。「金額が高く見えていて、携帯電話料金だけを評価するのは難しくなっています。ただ、携帯電話料金は高いというイメージを持つユーザーが増えていることは間違いありません」(野本氏)

 これには「世間的な風潮」の影響も考えられるという。「『自分の払っている携帯料金は高いのではないか』という思いも相まって、満足度が下がる動きになっているのでは」と野本氏は分析している。

 一方、「通信品質」の評価はこの5年間でほとんど変わらない。過去5年間の顧客満足度構造を見てみると、総合満足度に対する相関が強いものの、トップ3は「通信品質」「各種費用」「各種提供サービス」で変わらない。ただし「各種費用」の総合満足度への影響度合いが、緩やかではあるものの少しずつ高くなってきている。「携帯電話サービスの満足度を考えるにあたって、ユーザーの料金に対する関心が上がってきていると言えます。反対に通信品質については少しずつ減ってきています」(野本氏)

J.D.パワー 各種費用を重視する割合は、年々増加している

 つながりにくかったり、キャパオーバーで速度が出なかったりしたこともあったLTE開始当時だったら「通信品質」のウェイトが高かったかもしれないが、今や携帯電話はつながるのが当たり前だ。「『各種費用』のウェイトが、急激にではなくとも、数ポイントずつ上がっていくトレンドで進みそうです。ユーザーの料金への意識が否が応でも高まるのではないしょうか」(野本氏)

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