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インタビュー
» 2019年12月20日 11時12分 公開

モバイル決済の裏側を聞く:○○Payとは競合しない アプリも個人情報も不要な「QUOカードPay」が狙う市場 (1/2)

全国共通のギフトカード「QUOカード」をデジタル化してバーコード決済で使えるようにした「QUOカードPay」が2019年3月に始まった。QUOカードPay1億円分が1人に当たるプレゼントキャンペーンも話題になった。なぜ、あえてコード決済を取り入れたのか。

[房野麻子,ITmedia]

 1987年に誕生して以来、累計発行数約8億枚、年間では約5000万枚、使える店舗は約5万7000店、92.3%という高い認知度を誇る全国共通のギフトカード「QUOカード」。これをデジタル化してバーコード決済で使えるようにした「QUOカードPay(クオカード ペイ)」が2019年3月に始まった。サービス開始を記念して、QUOカードPay1億円分が1人に当たるプレゼントキャンペーンも話題になった。

【訂正:2019年12月20日19時28分 初出時に、QUOカードの発行枚数を年間5000枚としていましたが、正しくは年間5000万枚です。おわびして訂正致します。】

 QUOカードPayを始めた狙いや注力した部分、他のQRコード/バーコード決済(以下、コード決済)との違いについて、クオカード デジタルイノベーションラボ室長の瀧上宜哉氏にうかがった。

QUOカードPay QUOカードをデジタルギフトとして送り、受け取った側はスマホのバーコードで利用できる「QUOカードPay」

アプリや個人情報不要で決済できる

QUOカードPay クオカード デジタルイノベーションラボ室長の瀧上宜哉氏

 物理カードのQUOカードが生まれた1987年の2年後、1989年に消費税3%が導入された。消費税導入によって1円単位の支払いが増えると考え、小銭のやりとりをスムーズに行えるようにするプリペイドカードシステムの販売を目的に会社が設立された。

【訂正:2019年12月20日15時28分 初出時に、「1987年当時は、消費税3%が導入された時期」としていましたが、消費税3%の導入時期は1989年でした。おわびして訂正致します。】

 その後、セブン-イレブン・ジャパンと契約を締結して「セブン-イレブンカード」の発行を開始。それを全国共通カードとして使えるようにしようとした際、他のコンビニで使えるのにセブン-イレブンカードではおかしい、ということで「汎用(はんよう)的で無色透明な名前」(瀧上氏)、ラテン語由来のQUOカードという名称が生まれた。

 二十数年間の中で、QUOカードはギフトとして贈呈されるようになり、法人の販促ツールとして使われることが増えていたので、ビジネスも法人を中心にシフトチェンジ。現在、QUOカードを購入する人の8割は法人だという。

 「現金に近い使い方ができるけれど、見た目は現金らしくない。現金を贈る場合も、のし袋で包んで渡す日本の文化にQUOカードはなじんだのかなと思います」(瀧上氏)

 デジタル化したQUOカードPayも、無色透明で誰でも使えるというQUOカードのコンセプトを踏襲し、基本的に法人を中心に展開している。

 QUOカードPayは、スマホに表示したバーコードをお店のレジで読み取ってもらい、支払いができるサービスだ。その支払いスタイル、QUOカードPayという名称から、現在多くの企業が参入しているコード決済の1つだと思われるかもしれないが、コンセプトは大きく異なる。

 まず、QUOカードなのでギフトという特徴がある。企業のキャンペーンやお礼、おわびなどで送るもので、コード決済のようにアプリにチャージしたり、後払いしたりはしない。基本的に、送る側はメールなどでURLを送り、受け取った人はWebブラウザでサイトにアクセスして券面やバーコードを表示して利用する。アプリも用意されているが、特に利用が推奨されているわけではない。

 「アプリは意外にハードルが高いことが独自調査で分かりました。コード決済では必要な本人確認も、多くの情報を入力することに抵抗感を持つ人がいました」

 QUOカードPayを使う際はURLをタップするだけだ。個人情報を入力する必要は一切ない(アプリを利用する場合はメールアドレスの登録が必要)。非常に気軽に使えるのが最大の特徴だ。

QUOカードPay メールで受け取ったURLから電子マネーを取得し、ブラウザに表示されたバーコードから支払える

 アプリやブラウザは全て自社エンジニアが開発。「磁気カードと専用カードリーダーのエンジニアはいましたが、スマホアプリの開発をするエンジニアを集めてゼロから開発しました」と瀧上氏は振り返る。

 なぜデジタル化する必要があったかといえば、顧客である企業からの要望があったからだ。「企業の大型キャンペーンでの需要が増えていました。例えば10万人にQUOカードを贈る場合、10万人の名前や住所を書いてカードを配送するのは大変です。全てがスマホにシフトしていく中で、スマホに届けられるような形にしてほしいという声が多くなりました」(瀧上氏)

 もちろん、物理カードのQUOカードの人気は根強く、今後も横ばいで売れ続けると瀧上氏は見ているが、ギフトカード全体の市場としては、Amazonギフト券のようなデジタルギフトが急激に成長している。ユーザーの要望とこうした市場動向から、2年前にQUOカードPayの導入を決定。約1年間かけて開発し、2019年3月下旬にサービスを開始した。

コラボキャンペーンが続出、ペヤングは売り上げが予想の1.5倍に

 QUOカードPayを採用した事例をいくつか紹介しよう。

 Looopでんきは新規顧客キャンペーンにQUOカードPayを採用。それまでは別のギフトカードを使っていたが、配送が大変な上に、利用する際に必要になるアカウントを持っていない人がいたという。QUOカードPayは開始当初からローソンで使え、どこでも誰でも使える点が評価された。

 電子コミックのpixivコミックは、サービスの拡散・販促キャンペーンで採用。デジタル企業がモノを送るのは負担が大きいということで、デジタルで完結する点が歓迎された。

 キリンビバレッジは19万人に130円のQUOカードPayが当たる自販機のキャンペーンで採用。自販機でドリンクを購入すると、貼ってあるシールでその場で当たり外れが分かり、当選者はスマホからプレゼントのQUOカードPayを受け取る仕組みだ。それまでやっていたデジタルギフトのキャンペーンに比べて、償還率(当選者が賞品を受け取るために応募する比率)が数倍に上がったという。

 ペヤングは商品パッケージにQUOカードPayのキャラクターをデザイン。コラボレーション色の強いキャンペーンを展開した。当たり商品の中には、かやくやソースと一緒に高級感のあるダウンロードカードを入れ、印刷されたQRコードをスマホで読み取るとバーコードを表示するサイトにアクセスする。ペヤングの商品は予想の約1.5倍の売り上げを達成したという。

QUOカードPay ペヤングとのキャンペーンでは、高級感のあるダウンロード用カードを封入した

 企業に好評なのは、プレゼントとして扱いやすいという点に加え、企業が伝えたいメッセージを表示できることだ。URLやQRコードを読み取ると、バーコード画面が開く前にキャンペーンページが表示される。支払いでQUOカードPayを使う前に、必ず送り主である企業やブランドを確認することになるのだ。Webブラウザで表示できるため、使い方の問い合わせが少ないことも好評だそうだ。

 フジテレビはワールドカップバレー2019で、CM内でQRコードを表示し、視聴者をキャンペーンサイトに誘導する体験型CM「CxM シーバイエム」を展開。クイズに答えるともらえる賞品の1つとしてQUOカードPayを採用した。この体験型CMは事前のアカウント登録やアプリのダウンロードが不要で、Webブラウザで済むことが特徴の1つだったので、QUOカードPayのブラウザで完結できる点がマッチした。

 ブラウザで完結するので、アプリをダウンロードできない可能性のある海外でも利用可能だ。サービス開始半年で予想以上の利用があり、「かなりの手応えを感じている」と瀧上氏は自信を見せた。

 なお、前述の通りQUOカードPayにはアプリもある。ユーザーがアプリを使うと、複数もらったQUOカードPayの残高を1つにまとめて使えるようになる。券面の保存も可能だ。また、ブラウザで使っている限りでは、URLを他の人に知られると残高を使われてしまう可能性があるが、アプリを利用するとアカウントにひも付けられるので、万が一URLを紛失してしまった場合も復活できる。ダウンロードする手間は掛かるが、アプリを使った方が安心だろう。

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