ニュース
» 2020年02月14日 06時00分 公開

「141g」の軽さを実現できた秘密とは? “細マッチョ”なスマホ「AQUOS zero2」開発ストーリー (1/3)

シャープのスマートフォン「AQUOS zero2」は、6.4型ディスプレイや3000mAh超のバッテリーを搭載しながら、141gという軽さを実現した。有機ELディスプレイも改良し、“勝てるスマホ”としてタッチレスポンスも向上させた。さらなる軽量化と見やすいディスプレイ、ハイパフォーマンスを実現できた理由を開発陣に聞いた。

[房野麻子,ITmedia]

 シャープ製のフラグシップスマートフォン「AQUOS zero2」が発売された。2018年12月に発売された初代「AQUOS zero」は軽さとハイパフォーマンスの両立を目指して世界最軽量(画面サイズが6型以上で、バッテリー容量が3000mAhを超える防水対応のスマホにおいて)の146gを実現したが、zero2はそれよりもさらに軽い141g。“世界最軽量”を更新した。

AQUOS zero2 シャープの「AQUOS zero2」

 軽量なので長時間使っていても疲れにくく、有機ELディスプレイは動きの激しい映像もくっきりと表示、独自の放熱設計で持続するハイパフォーマンスを実現していることから、ゲームに最適な「ゲーム系フラグシップ」スマホとして打ち出している。

 AQUOS zero2はなぜゲームにフィーチャーしたのか。さらなる軽量化と見やすいディスプレイ、ハイパフォーマンスを実現できた理由を、通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部 担当部長の楠田晃嗣氏、商品企画部主任の篠宮大樹氏、システム開発部課長の田邊弘樹氏にうかがった。

ゲーマーたちに最も評価された「軽さ」

AQUOS zero2 楠田晃嗣氏

 もともと、初代のAQUOS zeroは、軽さとハイパフォーマンスの両立に特化したモデルとして企画された。シャープのスマホには、他にAQUOS Rシリーズという王道のフラグシップがあるが、「王道モデルは要求されるスペックがある程度決まっていて、なかなか新しいチャレンジができません。軽いモデルで挑戦したいという思いがずっとありました」と楠田氏は話す。

 スマホのヘビーユーザーは長時間使うからスマホは軽くあるべきなのに、ヘビーユーザーはスペックを重視するので重い端末を選ぶ。その矛盾を解消すべく、動画やゲームなどに特化したエンタメガジェットとして初代のzeroを投入。若い世代にアピールするためRシリーズとは異なるプロモーションを展開し、ゲームのイベントに協賛することになった。

 ただ、ゲーマーにとって、スマートフォンAQUOSの知名度は思いのほか低かったようだ。「ゲーマーの方たちはほとんどiPhoneを使っています。『シャープにAQUOSっていうスマホがあったんだ』みたいな感覚があるくらいです(苦笑)」(楠田氏)

 イベント会場でzeroを試用してもらい、感想をアンケート形式で聞いたところ、最も評価するポイントに軽さが挙がった。「われわれも軽さは好評だろうとは予想していたのですが、最も評価されるとは思っていませんでした」(楠田氏)

 この結果から、軽さはゲームと相性がいいということを実感。zero2は、よりゲームを意識した形で開発を進めることになった。

AQUOS zero2 ゲーマーからもAQUOS zeroの「軽さ」を評価する声が多かった

 ターゲットは「エンジョイ層」だ。従来、スマホのゲームは暇つぶしのためにパズルゲームなどを隙間時間に楽しむ「ライト層」が中心だったが、eスポーツの高まりにより、スマホでもPCゲームのような本格的なゲームを真剣にプレイする「ガチ層」も出てきた。zero2が狙うのは、ライト層とガチ層の中間だ。

 「課金をするほどゲームを楽しむけれど、かといってスコアだけにとらわれず、周りの人とコミュニケーションも楽しむ人。得点やアイテムの獲得をSNSでシェアしながら楽しむような人をエンジョイ層と捉えています。コミュニケーションしながらゲームを楽しむにはスマホの方が発信しやすい。こういった背景もあってモバイルのゲームが増え、エンジョイ層も増えているのではないかと分析しました」(楠田氏)

 zero2は「ゲーム系フラグシップスマホ」であり、ゲームに特化したゲーミングスマホとは異なるという。

 「やはりスマホはスマホであって、電話やSNS、ブラウザといった一般的な使い方をして、さらにゲームを楽しむものです。zero2は一見、薄くて軽くてスタイリッシュで、中身がそんなにすごそうには見えないんですが、ゲームにこだわったパフォーマンスが詰まっている。開発チームでは、ゲーミングスマホを『ゴリマッチョ』、zero2は『細マッチョ』と呼んで、脱いだらすごいんです、というコンセプトでやっていこうと考えました」(楠田氏)

 そうすることで、初代zeroのイメージを継承しながら、よりゲームにフォーカスした形でzero2を作っていくことができたという。

軽さの秘密は「基板」にあり

AQUOS zero2 篠宮大樹氏

 AQUOS zero2は、どのように141gという軽さを実現したのか。しかも、2019年9月にシャープが発表会を開催したときは約143gだったのが、さらに2g減って141gになり、改めてプレスリリースを出したほどだ。「軽くなったという事実だけをリリースしたのは弊社としても初めてのことでしたが、それだけ社内でもzero2にとって軽さが重要だと考えているからです。開発陣の頭の中にも、常に『軽さ』という言葉がありました」(篠宮氏)

 「軽さは普遍的な価値。軽ければ軽いほどいい」が、150gという目安の数値はある。「一般的な文庫本の重さです。本は長時間読みますので、それより軽い、150g以下にすることが最低基準でした」(楠田氏)

AQUOS zero2 2018年以降に国内で発売されたスマホの画面サイズと重量をプロットしたグラフ。最近のスマホは大画面化が進み、重量も200gに近づいている。AQUOS zeroシリーズの軽さが際立っている

 150gの目安はあるが、実際には初代zeroの146gを最低限の目標として据えていた。初代zeroはディスプレイが6.2型でアウトカメラは1眼。当時は軽さにこだわったのでスペックも絞り込んだが、zero2はスマホのトレンドを盛り込み、カメラは2眼、ディスプレイは6.4型に大型化した。

 ディスプレイが大きくなると、本体の全ての部品もそれに合わせて大きくなるので重さも増える。篠宮氏は「内心、146gを達成できないのではないかと危ぶんでいた」という。しかし、開発中の計測で143gという数値が出た。そのときは開発陣に激震が走ったという。最終的には141gと初代zeroよりも軽くなった。

 ディスプレイはバックライトが不要なので軽くできる有機EL、側面のフレームは軽量で強いマグネシウム合金と、使っている素材は基本的に初代と同じだ。カラーバリエーションを増やすために、背面パネルをアラミド繊維から樹脂に変更したが、重量はほぼ変わらないという。では、なぜ軽くできたかというと、内部の重量が軽くなったためだ。

 「基板がzero2では小さくなりました。これによって基板の重量が24〜25%軽量化しています。基板は重いんです。そこを絞り込みました」(篠宮氏)

【訂正:2020年2月14日12時29分 初出時に、「本体の重量が24〜25%軽量化している」旨の記述をしていましたが、正しくは「基板の重量が24〜25%軽量化している」です。おわびして訂正致します】

AQUOS zero2 初代zero(左)とzero2(右)の基板。zero2の基板は中央部がフレキシブル基板でつながれ、サイズも小さくなって軽くなった

 基板を小さくすることで、発表会で公表した143gを実現した。残り2gに関しては、「明確に『これです』と出せるものではありません。地道な積み重ねというのが本音」(篠宮氏)だという。

 軽くするために強度は犠牲にできない。zero2も強度を確保しながら軽量化している。

 「使う上で本当に必要な強度と不要な強度があります。部品や機構、厚みに関して、必要かどうかを地道に調べて評価し、本当に必要なところだけを残し、不要なものは削除するということを、ずっと繰り返していました。その積み重ねでマイナス2gが実現できています」と説明した篠宮氏は、この地味な作業が一番大変だったと振り返っていた。

 軽量化にはもちろん、初代zeroでの知見がある。軽量化の技術は「他社には簡単にマネできるものではないと思う」(篠宮氏)と胸を張った。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

この記事が気に入ったら
ITmedia Mobile に「いいね!」しよう