「141g」の軽さを実現できた秘密とは? “細マッチョ”なスマホ「AQUOS zero2」開発ストーリー(2/3 ページ)

» 2020年02月14日 06時00分 公開
[房野麻子ITmedia]

放熱構造にも工夫

AQUOS zero2 田邊弘樹氏

 田邊氏は地道な積み重ねの1つとして、放熱機構内の工夫を紹介する。zero2は初代zeroから継承した放熱機構を備えており、放熱にさまざまな部材を使っている。熱を本体に広げ、表面から放熱する仕組みだが、「熱を伝えるため、金属板に貼る保温シートの形状やサイズは、シミュレーションと実測を繰り返して吟味しました。放熱性に意味がないと分かれば削り、入れるべきところは入れる。それをひたすら繰り返して見極め、少しずつ削っています」(田邊氏)

 また、熱を手に感じやすい背面側にある、樹脂の部材には穴を空け、空気層を作ることで熱抵抗を上げるととともに軽量化にも貢献している。ユーザーがどれだけ熱を感じるかを測るために、Rシリーズで取り入れた温度センサーも、より良い場所を探し出して入れた。

AQUOS zero2 放熱性能を上げるべく、さまざまな素材を使ったり、隙間を設けたりした

 なお、初代zeroでも搭載した、充電ICを2つ入れて発熱しにくくするパラレル充電を引き続き採用した。ICを2つ入れるので当然、重量的には不利だが、必要なものとして最初から搭載を決めていたという。「放熱システムを入れながら軽量化しているのがポイント」(篠宮氏)だ。

「4倍速」はどのように実現したのか

 ディスプレイもゲームに最適なものを作ろうと考え、3つの要素に注力した。「ハイレスポンス」「見やすい画質」「外で遊ぶゲームに対応する屋外での視認性」だ。

AQUOS zero2 画質、レスポンス、視認性の面でゲーミングに適したチューニングを施した

 ハイレスポンスは「4倍速」によって実現している。通常のディスプレイは1秒あたり60回の画面更新(60Hz)だが、zero2の画面の更新は120回(120Hz)。さらに網膜残像を除去するための黒フレームを挟んでいるので4倍速となる。

 人間の目は思っている以上に見たものを覚えていて、1つ前のフレームの情報を保った状態で次のフレームに移行するという。網膜残像とは、1つ前のフレームが残像として残るため見にくくなるという現象。zero2では黒フレームを入れることで目に入った情報をリセットし、それによってくっきり滑らかに見せている。

 実際に、60Hzのディスプレイ、ハイスピードIGZO、4倍速のzero2の画面で同じ画面をスクロールさせると、違いがはっきり分かった。60Hzの描画では画面がブレて文字は読めない。ハイスピードIGZOは健闘しているが、明らかにzero2の画面の方がくっきりと滑らかだ。ここまで違いがあるのかと驚かされた。

 なお、黒画面はローリング形式という方法で挿入している。画面全体を黒くしてしまうのではなく、画面の約50%を占める黒い帯を画面上部から下部に向かって動かしていく方式だ。この方式は自発光の有機ELで動作させやすく、表示も非常に滑らかになるという。また、画面全体を真っ黒にしないので明るさを維持できる。スーパースローで撮影すると、黒い帯が移動していく様子が見られるそうだ。

AQUOS zero2 毎秒120回の更新の間に黒画面を挿入することで、網膜残像を取り除いている

 この視認性の高さが、一瞬を争うFPSのようなゲームに最適だという。シャープの社内にはeスポーツ同好会があり、zero2も使って遊んでいるが、「やはりゲーマーから好評でした。ほんの少しの差で勝ち負けが決まる世界ですが、4倍速は全く違うという評価でした」(田邊氏)

 ディスプレイの画面更新だけでなく、タッチパネルも240Hzでセンシングが速くなっているため、音ゲーなどで反応の良さを体感できる。それに合わせて内部処理も高速化しており、全体で低遅延化した。「勝てるスマホとして提供していきたい」と篠宮氏はハイレスポンスに自信を見せた。

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