店舗を変えるモバイル決済

手数料を超えるメリットはある? ケーキ店「ル リス」がキャッシュレス対応した結果モバイル決済で店舗改革(2/2 ページ)

» 2020年02月21日 06時00分 公開
[小山安博ITmedia]
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若い人はmPOSの操作を簡単に覚える

 売り上げ面だけでなく、キャッシュレス決済対応でレジ締め時の手間が減少したというメリットもあった。特に現金の打ち間違いなどによる過不足が「劇的に減った」(須山氏)というほど。おつりを間違えて追いかけるなどといったミスも、キャッシュレス決済では発生しないため、全体で手間が減少して、会計がスムーズになったそうだ。

 mPOSの操作性に関しては、須山氏自身が「こうしたものに慣れていない」ために戸惑いもあったそうだが、アルバイトの学生や若い人は1日で使い方を覚えてスムーズだったという。物理的な数字キーを押すこれまでのキャッシュレジスターと比べて、大きな支障はなく、使い方の心配はないそうだ。

ル リス 若いスタッフはAirレジの操作法を簡単に覚えたという

「売り上げデータの見える化」が可能に

 須山氏が付き合いのあるケーキ店でも、消費税増税に合わせてキャッシュレス対応した店が増えているという。ただ、手数料の問題があって非対応の店もあるそうで、その背景には、ケーキ店の利益率の問題がある。須山氏によれば、ケーキ店の利益率は10%程度。そこに決済手数料が数%掛かると利益への影響が大きい。

 キャッシュレス対応では、その手数料を超えるメリットが必要となる。須山氏もそれを不安に思いながら対応を開始したというが、「対応によって思った以上にクレジットカードを使う人が多かった」。これまでの動きから、売り上げアップが期待できると考えるようになったそうだ。

 もう1つのメリットとして期待しているのが、売り上げデータの見える化だ。導入以前は「感覚的」に見ていた売り上げデータが、mPOS導入によって日々の集計データがグラフィカルに確認できるようになるため、客単価や売れ筋商品の統計が今後の営業の参考になる。

 こうした情報によって、特に仕入れがより計画的にできると見込んでいるそうだ。ケーキ業界における昨今の課題の1つが原材料の値上げで、特にバニラビーンズは「10倍ぐらいになって、1kgあたり1万円が10万円以上になった」という。現状はル リスでも天然のバニラ自体ではなく、その加工品を使用しているそうだ。

 こうした原材料の値上げの影響を減らすためにも、仕入れを効率化することは重要で、売り上げを見える化できるmPOSの効果を期待していると須山氏は言う。


 もともと軽減税率の対象となる持ち帰りの食品を販売するケーキ店であるル リスは、消費税増税の影響はそれほど感じていないという。それに対し、補助金による初期費用の補助があり、mPOSを導入できた点はいいきっかけになったようだ。現時点で、数字上の明確なメリットは見えていおらず、長期的な視点での分析が必要といえそうだ。

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