そもそも「Web会議」とは、パソコン、スマホやタブレットを利用して、場所を問わずに行えるオンライン会議のことを指す。「テレビ会議」や「ビデオ会議」と似たものではあるが、これらは会議室などに据え置かれた専用機器を用いて行うもので、大人数の会議で用いることが前提となっている。
うっかり混同しそうな言葉だが、「テレワークではWeb会議を使うのだ」と認識しておきたい(※)。
(※)テレビ会議やビデオ会議のシステムと接続できるWeb会議システムもあります。このようなWeb会議システムを使えば、オフィスの会議室に集合した人たちと、テレワーク中の個々人とが一緒に会議に参加できます
Web会議システムの選択肢は非常に多いが、ユーザーアカウント(ログイン)を必須としないものと、必須とするものに大別される。今回は、前者の代表例として「Zoom(ズーム)」を、後者の代表例として「Microsoft Teams」を紹介する。
参加者のユーザーアカウントを必須としないWeb会議システムは、会議の主催者が発行するURLをタップ(クリック)すれば、すぐ会議に参加できる。会議の設定によっては氏名やメールアドレスなどを要求されることもあるが、参加者のログ(証跡)を残す目的で一時的に使われるものとなる。
米Zoom Video Communicationsが提供するZoomは、Web会議システムの定番の1つで、世界シェアの上位にある。一部を除き、日本語によるサポートも受けられる。スマホで利用する場合は、「Zoom Cloud Meetings」というアプリが必要だ。
Zoomでは、会議のホスト(主催者)にはアカウントが必須となる。アカウントを作成した上で会議を設定すると、「ミーティングID」とそれに対応したURLが発行される。これらを会議の参加者とメールやコミュニケーションツールなどで共有すれば、一応の準備は整う。
参加者は特にアカウントを作成する必要はない。アプリでミーティングIDを入力するか、URLをタップ(クリック)して表示されるWebサイトの指示に従えば会議に参加できる。ただし、ホスト側がセキュリティ設定をしている場合、事前共有されたパスワードの入力を求められたり、ホストが承認するまで会議に参加できなかったりする場合もある。
ホスト用のプランは「無料」「プロ」「ビジネス」「エンタープライズ」「エンタープライズプラス」の4種類が用意されている。ここでは、中小規模の利用に向く無料プランとプロプランを紹介する。
無料プランは、名前の通り無料で利用できる。時間制限は、100人までのグループ会議が最大40分、1対1の会議が無制限となる。チャット機能やグループコラボレーション機能も利用可能だ。
プロプラン(月額2000円または年額2万100円)では、グループミーティングの時間制限が最大24時間(1日)となる他、ユーザー管理とレポート機能、最大で1GBまでの記録(録画)機能、Skype for Business/Microsoft Lyncとの連携機能などが利用できる。追加の有料オプションとして、録画容量の追加、最大参加者の追加(500人/1000人)、テレビ/ビデオ会議システムとの接続機能なども用意されている。
アカウント必須型のWeb会議システムは、企業向けの情報システムやオフィススイートと強力に連携するものが少なくない。
Microsoft Teamsもその1つで、「Office 365」を利用している企業や団体で利用することを想定したコミュニケーションツールだ。2021年7月に終息する「Skype for Business」の後継となるソリューションでもある。スマホで使う場合は、専用アプリを介して利用する。
Office 365の利用者を想定としているコミュニケーションツールではあるが、「Microsoftアカウント」を持っていれば無料で利用することもできる。Windows 10のセットアップなどで同アカウントを保有している場合は、それを使えばよい。ただし、個人としてビデオ通話を利用する場合は「Skype」の利用を推奨される。
基本的に、Microsoft Teamsはチャットツールだ。チャットまたはグループチャットで連絡を取り合っている相手に対して、Web会議を持ちかける(設定する)ようなイメージとなる。
無料プランの場合、アプリの画面からビデオ通話(会議)を開始できる。Office 365のビジネス用アカウント(有料:一部を除く)を利用している場合は、事前に会議をスケジュールすることも可能だ。参加できる人数は最大で250人となる。
Teamsの最大の特徴は、Office 365との連携機能の豊富さと拡張性の高さにある。Office 365のビジネスアカウントと組み合わせると、一部の機能が強化される他、追加機能を利用できるようになる(一部の機能追加はオプション料金が必要)。
Microsoft Teamsと同様に、ビジネスチャットツールの「Chatwork」「Slack」にもWeb会議機能はある。ただし、両者共に無料プランだと1対1会議にのみ対応し、有料プランでも、Chatworksで最大14人、Slackで最大15人と、会議に参加できる人数の制限がある。小規模な会議ならこれで十分だが、ある程度規模が大きいWeb会議には向かない。
Web会議システムは、取引先との商談や打ち合わせで使うこともある。そうなれば相手側の企業がツールを指定することもあるだろう。先述のZoomやMicrosoft Teamsにも、企業外ユーザーの利用を想定したゲスト機能が用意されている。
ただ、オンラインでの商談や打ち合わせにテレビ/ビデオ会議システムを流用する企業や団体もある。テレビ/ビデオ会議システムが複数拠点に映像を転送するためには、「MCU(多地点接続)サーバ」を設置しなければならない。このMCUサーバをインターネット上に設置したものが「クラウドMCUサーバ」で、その一部がスマホやPCなどへの映像伝送に対応している。
スマホでクラウドMUCサーバと映像のやりとりをする場合、専用のアプリが必要な場合もある。必要に応じてあらかじめインストールしておくと、円滑なやりとりができるだろう。
企業や団体ごとにセキュリティポリシーは異なる。しかし、ツールにこだわって導入に時間が掛かった結果、本来の業務に支障が出ては元も子もない。極端な話、スマホならGoogleの「ハングアウト」やiOSの「FaceTime」、もっといえば「LINE」や「Facebook Messenger」のビデオ通話機能でもWeb会議に近いことはできる。カジュアルな打ち合わせやあいさつ程度などなら、こうした日常的に使い慣れているツールで済ませて問題ないケースもあるはずだ。
「テレワークだから」と肩肘を張って単一のツールに固執するのではなく、TPOに合わせた柔軟な対応を心がけるのが良いのではなかろうか、と筆者は思う。
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