ソラコムがコンシューマー向けeSIMサービスを提供する狙いは? 玉川社長に聞くMVNOに聞く(3/3 ページ)

» 2020年04月03日 11時15分 公開
[石野純也ITmedia]
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国や地域ごとに料金を設定するのは難しい

―― 一方で、料金を他のeSIMと比べると、必ずしも安くないのも事実です。この点はどうお考えでしょうか。

Soracom Mobile 料金は欧州、北米、オセアニアの3種類が用意されている

玉川氏 値段ではなく、UXで評価していただきたいと考えています。ただし値段もシンプルに作っています。例えば1GBプランであれば、30日間ずっと使えるようにしています。30日間あれば、たいていの旅行に使えるからです。初期手数料のようなものも全て込みにしています。UXでは、先ほど申し上げたApple IDやApple Pay連携もユニークなところなので、そういったところを評価するお客さまに使っていただければと思います。

―― 発表後に新型コロナウイルスの感染が拡大し、海外渡航に大きく制限が出てしまったため、傾向を出せるほどではないかもしれませんが、今のところ人気が高いのは、どのプランでしょうか。

玉川氏 今のところは欧州が多いですね。今回のSoracom Mobileは、日本、アメリカ、欧州で発売していますが、ソラコムの知名度はやはり日本が高いので、お客さまは日本人の方が多くなります。ただ、これはわれわれの値付けもあるので、今後は変っていくかもしれません。

―― サービスを提供しているのは、日本だけじゃなかったんですね。発表等はしたのでしょうか。

玉川氏 Apple IDの登録国が日本、アメリカ、欧州だとアプリをダウンロードできます。海外向けにはブログを書いていますが、メディア向けに何かやったのは日本だけです。今後、Soracom Mobileが拡大してきたら、海外でもやりたいと思います。

―― 価格設定についてですが、現状は大陸単位になっています。これを国ごとにするといったことは可能でしょうか。

玉川氏 ご要望としてあるとは思っていますが、難しいのは、国や地域単位にすると、それぞれの料金を作る必要が出てきてしまうことです。一方で、地域を広く取ると、利便性は上がりますが、その中でのコストを考えて価格を設定しなければなりません。お客さまが増え、データがたまってくれば考えられると思います。

―― 確かに、ローミングの料金は均一ではないはずなので、複数の国をまたがると、高いところに引っ張られるという問題はありそうですね。

玉川氏 はい。他にはキャリアを絞って、コストを下げることもできます。

―― そこのバランスをどう考えるかは、確かに難しそうです。Stork Mobileは、ソラコムの回線を使っていると思います。ああいったMVNE的な動きもしていくのでしょうか。

玉川氏 Stork MobileはまさにMVNEとしてソラコムを使っていただき、MVNOをやっている事例です。そういったところもサポートしてきたいですし、今後は「powered by Soracom」という形でアプリを出していくことも実現できると思います。やりたいというお客さまがいれば、喜んでやります。

まだマスに宣伝をするタイミングではない

―― 現状はサービスインしたところですが、毎年9月ごろになると、機種変更のニーズも出てくると思います。ここは対応されているのでしょうか。

玉川氏 現状ではサポートしていません。テクニカルに難しいのが、eSIMがユーザーの端末から本当に消えたのかどうかを確認しづらいという問題があります。(削除した際に)別のコネクティビティがないと、われわれからは削除したのかどうかが分からない。下手をすると、一時話題になったようなクローンケータイができてしまいます。eSIMのライフサイクル管理を、OSまで含めてサポートしていかないと、いろいろな抜け道ができる恐れがあります。これは、eSIMの規格が進化しないといけない問題で、プロファイルを消すときに必ずどこかのデータベースに行くようにするといった対応が必要になってくると思います。

―― コンシューマー向けとなると、法人向け以上にプロモーションも重要になってくると思います。今後、どこかのタイミングで大規模に宣伝していくことはあるのでしょうか。

玉川氏 そのタイミングは来ると思っています。ただし、現状だと、eSIMに対応した端末を持ち、なおかつeSIMを理解し、主回線を持った上で別途副回線として入れるという、超ニッチなニーズになってしまいます(笑)。今、テレビCMのような宣伝をすると、違った層に情報が広がってしまいかねません。サステナブルにビジネスをすることを考えると、まだマスに対してガーンと宣伝をするタイミングではありません。

取材を終えて:対応国やプランの拡大にも期待

 コンシューマー向けのSoracom Mobileには、実地で経験を積みつつ、パートナーを開拓するショーケース的には意味合いがあった。とはいえ、コンシューマーのニーズをおざなりにしているわけではない。アプリの操作性やeSIMを書き込むまでのシームレスな導線は、きちんと考え抜かれている。「Sign In with Apple」でログインし、Apple Payで決済できるのは、iPhoneユーザーにとって非常にスムーズだ。一方で、まだ対応できていない国や地域もある。新型コロナウイルスによる影響が収束する気配がないないため、不透明な部分はあるが、プランの多様化にも期待したいところだ。

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