インタビュー
» 2020年04月07日 11時25分 公開

MVNOに聞く:「最低限の“ギガ”を最小限のお金で」 IIJmio「eSIM」正式プランの狙いと課題 (1/3)

2019年7月からβ版としてeSIMのサービスを展開してきたIIJが、正式版の料金プランを打ち出した。新たに登場した「データプラン ゼロ」は、プリペイド的に利用できるのが特徴。データ通信を全く使わない月は、わずか150円で維持できる。このデータプラン ゼロの戦略を聞いた。

[石野純也,ITmedia]

 2019年7月からβ版としてeSIMのサービスを展開してきたIIJが、ついに正式版の料金プランを打ち出した。既存の料金プランの1つをそのままeSIMに適用したβ版とは打って変わり、新たに登場した「データプラン ゼロ」は、プリペイド的に利用できるのが特徴。データ通信を全く使わない月は、わずか150円で維持することが可能だ。初回の1GBは300円(税別、以下同)で、基本料と合わせて450円。以降、1GBごとに450円と、1GBあたりの単価も割安に抑えている。

 このデータプラン ゼロで狙うのは、大手キャリアの“2回線目”だ。大手3キャリアは、データ量に応じて料金が変動する段階制プランを導入しているが、この2回線目としてデータプラン ゼロを設定すれば、トータルで料金を下げることができる。データ量が足りないときに追加で購入するときも、大手キャリアは1GB=1000円が相場。データプラン ゼロであれば、その半額以下で1GBを追加できる計算だ。

IIJmio 3月19日から提供しているIIJmioのeSIM正式プラン「データプラン ゼロ」

 一方で、格安SIMとして展開するIIJmioは、あくまで主回線として使われることを目指している。なぜ、データプラン ゼロでは、副回線狙いの戦略に転じたのか。正式プランとはいえ、選択肢が1つしかないのも気になるポイントだ。IIJとして、コンシューマー向けのeSIMをどう育てていくのか――。同社の執行役員 MVNO事業部長(インタビュー当時はMVNO事業部長)の矢吹重雄氏と、MVNO事業部コンシューマサービス部長の亀井正浩氏にお話を聞いた。

“大容量”以外のところでiPhoneユーザーを狙いに行く

IIJmio MVNO事業部コンシューマサービス部長の亀井正浩氏

―― 最初に、データプラン ゼロの狙いを教えてください。

亀井氏 β版のときは、月額料金そのままでeSIMを使ってもらえるよう、既存のプランの延長線上に6GBのプランを建てつけました。ただ、マーケットを見ると、3キャリアのiPhoneを使う人がかなりいる。そこを狙いに行かないのは、普及を図る上でもったいない。その人たちに使ってもらいやすいのは、どういうプランかを考えました。大容量は大手キャリアの得意分野なので、それ以外の追加で使う部分を仕立てていったら面白いと考えました。まずそこを狙うというのが、正式版で決まったことです。

 その上で、都度チャージしていくのがいいのか、階段式に上っていくのがいいのか、プリペイドがいいのかを考えました。非常用のサブ回線を狙うのであれば、少額だけいただいて回線を保持していただき、追加の部分として最低限の“ギガ”を最小限のお金で買えるのがいい。そんな副回線狙いとして、改めてプランを作ってみました。当初は主回線としてもいけないかという狙いもありましたが、副回線に徹した方がいいということで、今のプランを作っています。

―― β版も残しています。その心は?

亀井氏 主回線として使っている方がいるのと、毎月チャージするのが面倒という方がいるからです。β版は最終的に、今の3GB、6GB、12GBにマイグレーションするのが一番キレイではないかと思ってこういう形にしています。

―― ということは、今後、3GBのミニマムスタートプランや、12GBのファミリーシェアプランが出る可能性もあるということですね。

亀井氏 いくつかの階段を作りたいとは思っています。ただ、電気通信事業法改正以降、正しい値段できちんと勝負しなさいという(総務省の)メッセージを踏まえると、どこかの段階でメニューそのものを改正する可能性もあります。eSIMを今のプランに吸収させるのか、新しいプランに吸収させるのかという議論はあると思いますが、βを外すときは、階段があるプランでもプラスチックのSIMとeSIMのどちらかを選べるようにするのが自然だと思います。

IIJmio 執行役員 MVNO事業部長の矢吹重雄氏

矢吹氏 キャリア(MNO)の動きを見ていくと、そろそろ1世代前のサービスとして捉えるべきなのか、逆にキャリアが大容量に移っていく中で、(今の低容量プランを)1つの市場として捉えるべきかを、ちょうど今議論しているところです。当初のユーザーはSIMロックの解除が自分でできたり、SIMフリーの端末を使えたりする人で、こういう人たちのことを社内では「堂前チック」(「IIJmioミーティング」や「てくろぐ」でおなじみの広報部副部長兼MVNO事業部シニアエンジニアの堂前清隆氏のこと)と呼んでいるのですが――。

―― ちょ、堂前チック(笑)。

矢吹氏 (笑)。そういうところからスタートした市場ですが、だんだんとMVNOが一般の方に普及していった。その市場がそのまま続くのかどうかは、今年(2020年)いっぱいかけて見ていきます。大手キャリアの傘下になるMVNOもあり、いろいろなところからお金が苦しいという声も聞こえてきます。料金とのバランスが取れなくなっているのではないでしょうか。格安SIMというマーケットをどういう形にしていくかを、考えなければいけないと思っています。

 5G SA(4Gとはコアネットワークを共有しない、スタンドアロン方式の5Gのこと)が始まれば、コスト構造は変わりそうですが、まだ数年先の話です。そこまでどう工夫していくのか。今年も卸料金が公開されましたが、そこを見据えながら、大胆なものが作れるのか、工夫の範囲でしかできないのかは見極める必要があります。

「休止」を可能にするとコスト効果がない

―― 使わない月が150円というのは、かなり攻めている金額だと思いました。

亀井氏 ギリギリまで攻めてみようと思ったところです。

―― 一方で、フルMVNOの場合、ライフサイクル管理として休止もできます。これを取り入れなかったのはなぜでしょうか。

亀井氏 休止にして、プロファイルもゼロにしてというのはありますが、月中にそれをやってしまうと、コスト効果がありません。確かに法人側には休止のプランがありますが、あれは複数回繰り返すケースを抑止しています。例えば9カ月間ぐらいの長期に渡って工場を止めるというときに休止できるようにしていますが、1カ月の間でバタバタと変えられてしまうと、対応ができません。

―― なるほど。個人と法人だと、そもそものスパンが違うということですね。ところで、金額設定ですが、最初の1GBが300円、以降450円というのが、少し分かりづらいと思いました。あれは要するに、基本料の150円と合わせて、使ったときは必ず1GB=450円になるということですよね。

亀井氏 はい。デポジットというか150円分をちゃんとギガに換えてあげたいということで、最初の1GBは300円にして、合計で450円になるようにしています。使ったときに、ちゃんとお得になるようにしておきたかったというのがその理由です。

IIJmio 1GBごとに450円を支払っていく仕組み
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