―― β版は1.4万契約というお話でした。そこそこ大きな数字だと思いますが、どう見られていますか。
矢吹氏 僕らとしては、もうちょっといてほしかったと思っています。やはり、当初の評判が……(苦笑)。最初の2カ月ぐらい、バーッと契約して、バーッと離れていくというのがありました。
亀井氏 ただし、それ以降はユーザーが定着しています。
矢吹氏 われわれのユーザーの平均を見ると、データ使用量は2GBを少し超えるぐらいです。6GBのプランを契約している方も4GB強といったところです。そういったデータを眺めていると、キャリアを使っていて、さらに7GBを超えている人はどれだけいるのかと考えてしまいます。計算していくと、1GBや2GBを使う方がほとんどという見通しです(それゆえに、6GBのβ版はユーザー数が想定より少なかった)。
―― ビックカメラでの販売も始まりました。iPhoneを売っている店舗もあるので、相乗効果が期待できるのではないでしょうか。
矢吹氏 期待していますし、そこでの声は重視したいと考えています。ただ、iPhoneを売っているのはまだ2店舗なんですよね……。
―― なるほど。そこは店舗拡大に期待したいところです。ちなみに、今回はプロファイルの再発行が無料になり、SIMカード発行手数料の200円のみになりました。ここを無料にできた理由を教えてください。
矢吹氏 ずっとキャンペーンをやってきましたが、それをやるのも意外とコストがかかっていました。サポートの部分(を圧縮できるの)が一番大きいかもしれません。
亀井氏 インストールに迷って何度も発行してしまう人がいて、うまく行かないから調整するという話がありました。そういったハードルを取り除こうとした結果です。
ベンダーへの支払いはありますが、物理SIMでできていたことが、何でeSIMだとできないんだということもあり、お客さまにも伝わりません。そこを一生懸命伝えても、eSIMの訴求にもなりません。ほとんどの皆さんは、買い替え時期の1回ですから、再発行は2年に1回ぐらいになります。キャンペーンを毎回更新し続ける労力を考えると、こちらの方がよかったと思います。
―― 同じプロファイルを、そのまま移すのは難しいのでしょうか。
亀井氏 今は、プロファイルを元の端末から取り出す仕組みがありません。いったん使えなくしてから、新しいプロファイルを発行した方が、設計上は楽になります。
矢吹氏 昨年(2019年)12月にGSMAが出した仕様だと、データベースにひも付いたプロファイルをいったん無効にして、新しく発行したものとひも付けるといった話が出ています。IoT機器にバラまこうとしたとき、これがないと大変になりますからね……。
―― 目標契約者を教えてください。
矢吹氏 今はとにかくお客さまの声を聞きたいところで、サービス側とマーケティング側で言う数字もバラバラです(笑)。固い数字を出すところもあれば、大きい数字を出すところもある。その中で、まずは出していこうというところです。とはいえ、個人的には年間10万ぐらいはいかないと出している意味がないし、市場の大きさを考えてももう少し大きな数字を取れると思います。一方で、分かりにくさはまだまだあるので、市場に受け入れられるかはこれからですね。
―― MVNOとしてのサービスを始めましたが、MVNEとしてeSIMをMVNOに提供していく可能性はあるのでしょうか。
矢吹氏 MVNO数社からは、ぜひと言われています。eSIMの卸はシンプルですが、今は彼らがどういったサービスを作っていくのかを議論しているところです。同じものを作るという話もなくないですが、それだと面白くない。採算性も、プラスチックのSIMカードを売っていた方がよくなりますからね。
β版のプランは月額契約が前提で、しかもデータ容量が6GBに限定されていたため、利用できるユーザーは限られていた。150円からと安価に抑え、2回線目にターゲットを明確に絞ったことで、契約者数が増える可能性はありそうだ。一方で、eSIMに対応したiPhoneを持っているユーザーでも、まだまだそれに気づいている人は少ない。データプラン ゼロの投入を機に、eSIMの訴求はさらに強化していく必要がありそうだ。
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