5Gが創出する新ビジネス

スマートフォンに収まらない5Gの可能性 何を生み出そうとしているのか5Gビジネスの神髄に迫る(3/3 ページ)

» 2020年04月13日 08時42分 公開
[佐野正弘ITmedia]
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多数同時接続は工場のスマート化で注目

 最後に多数同時接続に関してだが、IoTと結び付いて産業のデジタライゼーションに直接結び付いてくることから、ビジネス用途ではある意味最も期待されている要素といえる。中でも特に注目されているのは、工場を持つ製造業での活用である。

5G 5Gの多数同時接続は製造業から大きな注目を集めており、5Gの次のステップとして製造業への導入に力を入れるキャリアや通信機器ベンダーは多い

 具体的には、工場のあらゆる機器に通信機能を持つセンサーを取り付け、そこから情報をクラウドに送り分析することで、従来見ることができなかった機械の動作や不具合などを確認しやすくなる。またそれらのデータを他の機械のデータと組み合わせ、機械同士が協調して動作することによって、生産効率を高めることなどが期待されているのである。

 だがそうしたIoT向けの無線ネットワークとしては、既に「LPWA」(Low Power Wide Area)と呼ばれる、低速・省電力の無線通信技術が幾つか存在している。既存の4Gネットワークを活用したLPWAとしても「NB-IoT」や「Cat.M1」などが存在するので、それらを活用すれば十分なようにも見える。

 それにもかかわらずなぜ5Gが必要とされているのかといえば、多数同時接続だけでなく高速大容量通信や超低遅延など、複数の要素を同時に実現できるネットワークだからこそといえる。つまり5Gを導入すれば、機器の制御には多数同時接続、ロボットの遠隔操作は超低遅延、高精細カメラでの工場内の監視は高速大容量通信といったように、工場内のあらゆる用途を1つのネットワークで対応できるとして期待されているわけだ。

ドコモ ドコモとノキア、オムロンが進めている製造現場における5Gを活用した実証実験では、高速大容量通信による映像のデータ分析による作業員のコーチングにも取り組んでいる

 今後5Gが普及し、さらに次の世代となる「6G」の導入が見えてくるであろう10年後には、5Gを活用した先進的な取り組みがより拡大し、街や社会そのものを大きく変える可能性が高い。だがそのためには、5Gのネットワークが高度化し、全国でくまなく利用できることが求められる。現時点の5Gで実現できることはまだ限定的であり、5Gが始まったからといって未来がすぐやってくるわけではないことは覚えておきたい。

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