大手3キャリアが始めた「5G」はMVNOにも開放される予定で、インターネットイニシアティブ(IIJ)は5Gを利用したサービスの検討を進めている。IIJのファンミーティング「IIJmio meeting 27」では、IIJのMVNO事業で新技術の調査や検証、導入を担当している大内宗徳氏が、「5G NSAについて」と題して、ノンスタンドアロン5Gの特徴や課題を明らかにした。
5Gが最終的に目指しているネットワークは、全てが5Gの技術に基づいたスタンドアロン方式の5G(5G SA)。しかし、4Gのネットワークから5G SAに移行するためには、仕様策定やネットワークの入れ替えに膨大な時間がかかる。そこで、まずは超高速通信に限定して、4Gを利用することで5G機能の一部を早期に実現したものがノンスタンドアロン方式の5G(5G NSA)だ。
LTEとの違いは、利用する周波数を大幅に拡張していること。LTEでも使われている、FR1(Frequency Range 1)と呼ばれる6GHz帯以下の周波数帯に加え、今までは使われていなかったミリ波帯も使う、24.25GHzから52.6GHz帯のFR2(Frequency Range 2)だ。
さらに、5Gでは扱える周波数の幅を拡張している。1コンポーネントキャリア(1CC)あたり、FR1では最大100MHz幅で、これは4Gの5倍になる。FR2のレンジに至っては最大400MHz幅だ。また、周波数を最大16まで束ねてさらに高速化できる「キャリアアグリゲーション」、アンテナをたくさん使って通信を高速化する技術「Massive MIMO」も導入されている。
5Gで使われる周波数帯の100MHz幅、400MHz幅というのは、4G時代から比べると格段に広い。4Gでは、各キャリアとも周波数帯を全て集めた合計が200MHz幅程だ。5Gでは非常に広い帯域幅で周波数が割り当てられており、これを利用することで高速通信が実現できているのだ。
5G NSAでは、4Gコアネットワークを使いつつ5Gを利用する方式として、「EN-DC」方式を採用している。EN-DCは「E-UTRA NR Dual Connectivity」の略で、E-UTRAは4Gのことを意味し、NRは5Gを意味する。4Gと5Gを両方使った接続方式という意味だ。
EN-DC方式では、下図のeNB(4G基地局)をマスターノード、gNB(5G基地局)をセカンダリーノードとして、一体で運用する。2つの基地局間で協調してデータ通信を高速化する仕組みが「Dual Connectivity」という仕組みだが、これはLTEの基地局同士での仕様が策定されていて、それを5Gに拡張したのがEN-DC方式だ。
4G基地局は、報知情報と呼ばれる信号を使って5G基地局の存在を端末に通知する。5G基地局自体はそうした信号を直接は出さない。5G基地局が隣に存在するという信号を4G基地局が出すことで、端末が5Gのエリアにいるかどうかを検知できるようになっている。その際に4G基地局で使う周波数のことを「アンカーバンド」や「アンカーLTEバンド」と呼んでいる。
5G基地局は報知情報を出さないので、端末は直接基地局を検知できない。接続開始やSIM認証、5G接続の有効化というような各種制御信号は、4Gの基地局経由でやりとりする。4G基地局を通じでさまざまな情報がやりとりされ、最終的に端末が5G基地局に接続できるとなれば、5G基地局で通信が開始される。
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