大手3キャリアの5Gローンチの際にもエリアの狭さが話題になったが、5Gで利用可能なエリアはあまり広がっていない。
MVNOが5Gサービスを提供する場合、端末がキャリア基地局のEN-DCの組み合わせに適切に対応できていれば、キャリアと同一エリアで利用できるとのことだが、2020年5月時点で、キャリアの5Gエリアは非常に限定されている。利用可能なエリアでも、電波状態で5G通信にならない場合があり、MVNOとしてもエリア展開や電波特性を把握しておくことは重要だと大内氏は語った。
5Gで新たに利用されるサブ6GHz帯、ミリ波帯とも、4Gの電波に比べて高い周波数なので直進性が強く、障害物に弱い、物質に浸透しにくいという性質がある。大内氏は「ミリ波帯は屋内用途でないと厳しいのではないか」と懸念している。
また、n77(n78)は固定衛星通信、n79は航空機電波高度計でも使われている周波数。これらの通信に干渉しない形で5Gエリアを展開しなくてはならないが、それが難しいという。
次のスライドの地図は、ドコモが総務省の検討会で提示した資料から抜粋したもの。n77で、昼間人口が多い場所に5Gを展開するという前提で、屋外にスモールセルが設置可能な場所を割り出したシミュレーション結果だ。
赤い×印は衛星通信の地上局がある位置で、それを妨害しないように5Gエリアを展開しようとすると、緑のドットのある場所になる。衛星の地上局がある都心部は、屋外では5Gのエリア展開がほぼできず、郊外で何とか展開できるという感じだ。大内氏は、屋内設置が主力で、5Gエリアが広がりにくい原因だと推測している。
また、n77とn79の端は航空機電波高度計の周波数と隣接しており、空港やヘリポート近くでの利用が難しい周波数になる。ただし、それらを避ければ展開できる周波数なので、n77に比べるとn79は展開がしやすいともいえる。n79はドコモに割り当てられているので、ドコモは5Gエリア展開が他社よりしやすいかもしれない。
5Gは今後、機能拡張が行われる。エリア改善に期待されているのが、4Gで使っている周波数を5Gにも転用することだ。ただし、5Gの超高速通信は帯域幅の広さで実現しているので、4Gの周波数を5Gに転用しても、5G専用の周波数帯と組み合わせて使用しない場合は、通信速度は従来と同程度になることが予想される。周波数の転用で5G化することを大内氏は「なんちゃって5G」と呼んで、「超高速通信ができない5Gに、どの程度の意味があるかは悩ましい問題」と語っている。
5Gのフル機能が利用可能になるスタンドアロンの5G(5G SA)は、早いところでは2020年から始まり、日本では2021年以降に始まる模様だ。SA化すると、高信頼性/低遅延の通信が利用可能になり、IoT産業での活用がさらに見込める。ただし、基本的に超高速通信について仕様の変化はない。5G SAになったからといって高速化するわけではないので、一般ユーザーはあまり大きな変化を感じないかもしれない。
一方で、低消費電力向けの無線仕様が新たに策定される動きになっているので、小型のIoTデバイスがいよいよ5Gで運用されることになるだろう。
IIJでも5Gを利用するMVNOサービスの開発を加速させていくと大内氏は意気込んでいる。MVNOが5Gでどんなサービスを提供してくれるのか期待したい。
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