Appleの廉価スマートフォンともいえる「iPhone SE」初号機が発売されたのは、2016年3月末だった。当時の価格は64GBモデルで6万4800円(税別)。4年後に発売された2号機は64GBモデルが4万4800円(税別)。今回はこれら2台を比較しながら、4年の歳月がもたらしたスマートフォンの進化をたどりたい。
角ばって持ちやすいと評判であった初号機の本体は、2号機でラウンドフォルムのアルミ合金の削り出しボディーとなった。ディスプレイサイズは4型から4.7型へ大型化した。片手で使うには少々大きいかもしれない。ディスプレイ下部の半導体式指紋センサーなど、その他の部分は初号機と似ている。
4年の月日を感じさせるのは、インカメラの性能が飛躍的に向上したことだろう。2016年当時、カメラはアウトカメラの性能で勝負しており、「自撮り」や「セルフィー」などの表現は今ほど流行していなかった。初号機のインカメラは120万画素で、そこそこキレイに撮れていれば御の字という位置付けだった。
スマートフォンとともに成長したSNSもこの4年で大きく変化した。当時はテキストやアウトカメラで撮影した画像がSNS投稿の大半だった。動画はどちらかというとプロがYouTubeにアップするものというすみ分けがあった。インカメラの進歩とともに、インカメラを自分に向けて景色や友人と撮影するスタイルが定着しつつある。インカメラの動画もキレイになり、動画やビデオメッセージの投稿が増えた。2号機のカメラもこの流れに乗っており、HD画質、いわゆるハイビジョンに対応した。
初号機の推定原価は約195米ドル、2号機の推定原価は約217ドルである。21ドルの差はどこで発生しているかを考えてみたい。
最も高額になったのは通信部と考えられる。同じLTE対応機ではあるが、この4年の間に通信速度は倍になった。これは複数のアンテナと周波数を束ねてデータ通信速度を上げる「キャリアアグリゲーション」によるものだ。より多くの周波数を使用できるよう通信ICとアンテナの間に位置する「フロント・エンド」と呼ばれる部品は大幅にパワーアップした。初号機ではこの部分のコストは15ドルと推定されるが、2号機では21ドルになった。
前述の通りインカメラも進化し、これに伴い、原価も5ドルほど上昇したと推定される。また本体もアルミの成型品から削り出しになったことで、5ドルほど高くなったと考えられる。
初号機と大きく変わったものの1つに振動モーターがある。初号機では推定原価10セント前後のコイン型が採用されていたが、2号機ではApple独自のリニア振動モーター「Taptic Engine」が採用されている。推定原価は5ドルである。
ディスプレイは初号機に比べ大型化したものの、年月の経過とともに現在のサイズの液晶パネル価格が初号機のものに近くなり、推定原価は約35ドルとほとんど変わっていない。プロセッサも同様だ。
2019年4月、Intelは5Gスマートフォンモデム事業から撤退を発表した。しかしこのタイトルを読み解くと、LTEは継続していると推察される。実際に2号機を分解すると、Intelのチップセットが搭載されていた。2020年秋に発売されるiPhoneにLTEモデルが存在する場合、インテルのICが搭載されている可能性がある。
iPhone SE(第2世代)はiPhone 8のパワーアップ版といわれている。部品の共通化は行われていると思われ、NFCとワイヤレス電用に底面に開けられた穴の形状まで一緒である。基板もほぼ同じ形で、バッテリー容量もiPhone 8と同じ1820mAhだ。
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