―― サブブランドとして位置付けられてから、auのライフデザインサービスも徐々にUQ mobileで使えるようになっています。
竹澤氏 むしろ、今から力を入れていく領域です。誰もがお得になる「UQでんき」は昨年度からやっていますし、オープン化の話もあって、au PAYやプラスチックのau PAYカードも始めました。これまでUQとして案内できなかったものも、正式にお届けするサービスとして、外に出せるようになってきました。ただ、まだまだ載っていないものはたくさんあります。オールラインアップという形にはなりづらいかもしれませんが、主要なベネフィットのあるものは積極的に入れていきたいと考えています。
―― 細かい話ですが、国際ローミングはどうされていくのでしょうか。MVNOというくくりではデータローミングができないのは横並びですが、サブブランドでいうと、Y!mobileは対応しています。高いですが。
竹澤氏 今はMVNOという形ですが、KDDIに持っていったとき、ネットワーク上どのように統合するのかは、まさに今検討している段階です。ご質問のローミングについては、そもそもできるのか/できないのか、やるのか/やらないのかという選択肢があります。ただ、基本はMNOになるということなので、デグレはないようにしたい。お客さまの期待値もそうだと思っています。
―― UQ mobileがKDDIに統合されてしまうと、UQコミュニケーションズにはWiMAX 2+だけが残る形になります。こちらについては、どうされていくのでしょうか。
竹澤氏 1つは、今の品質をきちんと既存のユーザーに届けていかなければならないということです。これは、社長就任以降、今も強く思っていることです。着任した際には、クラウドSIMを使った無制限をうたうサービスとの競合についても議論しました。彼らはMVNOですが、WiMAXはMNOとしての振る舞いが必要になります。WiMAXは、交通系など重要なところでも使われていますからね。旧WiMAXは閉じたので、周波数は10MHzを戻して、50MHzを使えます。周波数戦略的にも考える幅が増えました。その辺の特徴を生かしながら、KDDIとも連携して進めていきたいと考えています。
―― 今、クラウドSIMを使った無制限をうたうサービスのお話がありましたが、そこに対抗していくというお考えはあるのでしょうか。ルーターの売れ行きを見ていると、一定数のニーズはありそうです。
竹澤氏 ジレンマと戦いながら、熟慮していきます。コロナ騒動を経て経験したのは、本当の無制限はなかなか難しいということです。有限である電波を使ってというのは厳しいのが正直なところです。クラウドSIMのSIMバンクには、複数のSIMカードが刺さっていて、技術的に提供できないことを、回線を切り替えながらうまく運用でカバーしているという話なので、どこかで限界を迎えてしまいます。
また、ビデオ会議のようなアプリケーションは、通信がダウンリンクだけでなく、アップリンクもあって双方向です。そういう使い方に変容していくと、無制限はつらくなります。逃げるようではありますが、FTTHもあるのでどうしようかなというところです。ただ、確かにニーズとしてはあるので、うまくお客さまに提案できるようなことは考えていきたいですね。
―― 現状ではTD-LTEと完全互換のWiMAX 2+として運用されていますが、これを5Gに転用していく可能性もありますか。
竹澤氏 (既存の周波数の)転用については、総務省で議論していることが秋口に大きなフレームとなり、方向性が出ます。それを見てから、どんな方向に進んでいくのかは決めていきたいですね。一切やらないという話ではなく、当然転用の話も含めてあると考えています。
料金プランやキャンペーンなどでY!mobileの後追いが多かったUQ mobileだが、電気通信事業法の改正を機に、アクセルを踏み始めた印象を受ける。先手を打つことで競争を自社のペースに引き込めるだけでなく、ユーザーに対して価格でリードしているイメージを与えることもできる。サブブランドとして明確に位置付けられたことで、攻めるべき市場も明確になった。
実際、こうした施策が功を奏し、ユーザー数は急増。1月にはユーザー数が200万を突破し、純増数も増加傾向にあるという。KDDIへの統合によって、UQ mobileを取り扱うショップが増えれば、この傾向には拍車が掛かるかもしれない。一方で、UQコミュニケーションズとしては、UQ WiMAXだけが残される形になる。据え置き型ルーターなど、独自の市場を切り開いている同社だが、昨今のトレンドも踏まえた次の一手にも期待したいところだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.