6月30日、総務省において有識者会議「競争ルールの検証に関するWG」第5回が開催された。今回、アップルの日本法人担当者が登場。日本市場で競争環境が鈍化している点を指摘した。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2020年7月4日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額税別500円)の申し込みはこちらから。
質疑応答では、有識者からアップル日本法人担当者への質問が集中。その中で、「Apple WatchのeSIMを開放しないのはなぜか」というツッコミがあった。
実は、6月25日には第4回が開催されており、その中でIIJから「Apple Watchにおいては、現状ではMNOの利用者のみがeSIMを利用可能であり、Apple WatchがMNOによる囲い込みのツールとなっている懸念がある。Apple Watchを利用している消費者の選択肢を増やすために、Apple WatchにMVNOのeSIMをインストールすることができない理由の検証、お よび必要に応じ機能開放等の制度的対応が望まれる」との指摘があったのだ。すでにeSIM向けサービスを提供するIIJとしては、Apple WatchのeSIMにもサービスを提供したいのだろう。
この質問に対して、アップル日本法人担当者は「IIJからあるような意図はない。Apple WatchにはGPSモデルとセルラーモデルがあるが、GPSモデルはMVNOのSIMカードで運用するiPhoneでも使える。ただし、セルラーモデルで、単体で音声通話を使うということはできない。iPhoneとのペアリングが必要となる。eSIM自体はGSMの仕様になっているが、(MVNOのeSIMで使えないのは)技術的な理由によるところがある。また、eSIMをMVNOの回線でも使えるようにするかは、そこにビジネスチャンスがあるかどうかの経営判断によるところが大きい。MVNO経由でApple Watchがどれだけ売れるか、コストがどれくらいかかるかの判断になるのではないか」という。
日本におけるApple Watchは、各キャリアでiPhoneの電話番号で着信する機能を備えているが、実はApple Watch自体には別の電話番号が振られており、ネットワーク側で同じ番号として振る舞うように動いている。確か、エリクソンがそうした技術を持ち、ソフトバンクやKDDIに納入していたように記憶している。アップルとエリクソンが蜜月関係であり、エリクソンがアップルの仕様に沿った機器を世界のキャリアに展開していると思われる。
MVNOがApple Watchに対応しようとした場合、おそらくそうした装置を自前で導入するか、キャリアから借りる交渉が必要なはずだ。もちろん、その時にはコストが発生するはずだ。つまり、Apple WatchのeSIMに単に電話番号を書き込めばいいという話ではない。
「自前で導入する」あるいは「キャリアから借りる」という時に発生するコストを負担してまでも、MVNOがApple Watch向けのサービスを提供した時に、どれだけの利益をもたらしてくれることになるのか。
Apple WatchをMVNO回線で使いたいという人のボリュームが読めないだけに、仮に条件が明らかになったところで、IIJとしては慎重な判断を迫られることになるのではないだろうか。
© DWANGO Co., Ltd.