ちなみにNECは基地局などの無線アクセスネットワーク設備に関しても、NTTと提携してO-RAN Allianceの「O-RAN」規格に準拠した通信機器の開発を強化するなど、オープン化に力を入れている。こちらはローカル5Gのコスト削減などにつながるのだろうか。
新井氏は、「ローカル5Gとキャリア向けの製品をなるべく共通していくことに取り組んでいるし、テクノロジーはどちらも一緒。NTTとの提携はローカル5Gの後押しになるのではないか」と期待を寄せる。ニーズが異なる部分もあるため完全に一緒というわけにはいかないというが、O-RANに準拠することで機器の共通化が進むことが、将来的なコストダウンにつながる可能性もありそうだ。
またNTTとの提携では、O-RAN対応機器で世界的な販売拡大を進めることが注目されたが、新井氏は「ローカル5Gは幅広く機器を売るビジネスではなく、限定されたビジネスになると思っている」と話す。海外での機器販売拡大はあくまでキャリア向けが主体であり、ローカル5Gでは海外でも、ソリューションとしてサービスと一体提供することを重視していく考えのようだ。
では、NECはいつローカル5Gを本格提供する予定なのか。新井氏は「2020年12月からになる」と答える。現在ローカル5G向けに割り当てられている28GHz帯は、4Gと一体で提供するノンスタンドアロン(NSA)での運用が求められるだけでなく、周波数帯が非常に高いミリ波であることから、「しばらくは実証フェーズが続くと思う」(新井氏)そうだ。
NECもSA(スタンドアロン)での運用が可能なSub-6の4.8GHz帯が本命と見ているようで、4.8GHz帯の割り当てが2020年12月頃になることを見越してその時期からの商用サービス提供を考えているそうだ。それゆえ実証実験の多くもSub-6の実験局免許を活用して進めているそうで、ミリ波に関してはまだハードルが多いことから、先進的な企業と実証実験を進め活用方法を模索しているとのことだ。
NECはキャリア向けの事業を長年手掛けネットワークに関する知見を多く持ち合わせているだけでなく、ITやOTなど幅広い事業で豊富な実績を持つ。それらがローカル5Gを活用した企業向けソリューションの競争力という点では、大きな優位性となることは確かだろう。
一方そうした優位性を持つNECでさえ、ミリ波・NSAでのローカル5Gの実用化はまだ厳しいと見ているのは気になるところ。SAでの運用ができる4.8GHz帯の割り当てと、新井氏が話す「デリバリータイム」を考慮すればローカル5Gで具体的な実績を出すにはまだ時間がかかるだけに、それまで顧客のローカル5Gに対する関心を維持できるかが問われることにもなりそうだ。
また楽天モバイルやNTTとの提携などでここ最近話題となっている、通信機器事業の拡大に向けた取り組みがローカル5Gにどこまで影響してくるかも注目されるところ。無線設備のオープン化やコアネットワークの仮想化などは低コスト化に貢献する可能性が大きいだけに、ローカル5Gの普及を見据える上でも重要なポイントとなりそうだ。
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