その後、LTE通信サービスが本格的に立ち上がりエリアが全国に広がると、より大容量のデータ通信プランが登場しました。その多くはUSBケーブル、Wi-FiあるいはBluetoothを介した「テザリング(インターネット共有)」にも対応しており、一部のキャリアでは有料または無償のオプション契約が必要なものの、携帯電話(スマホ)を介した外部機器のネット通信もしやすくなりました。
それに合わせて、モバイル通信のオフロード先としての公衆Wi-Fiサービスの役割は従来よりも薄れ、スポット数のアピール合戦も沈静化しました。
筆者も大容量のパケットプラン(ドコモの「シェアパック50」や「ギガホ」など)を契約してからは、外出中に公衆Wi-Fiサービスを使う機会が激減しました。料金はもちろんですが通信速度の面でも、モバイルデータ通信で“困る”ことがほとんど無くなったからです。
むしろ、コンビニなどの前を通りかかった際に意図せずに公衆Wi-Fiにつながることで、コード決済アプリで認証エラーが発生したり、足回りの回線によってはモバイル回線よりも低速でイライラしたりと、意図しないタイミングでWi-Fi接続されてしまうことに煩わしさを覚えることも多いです。
自宅(やオフィス)以外ではWi-Fiをオフにしている。という人も少なくないでしょう。
脇道にそれそうになりましたが、ドコモの話に戻ります。同社は5Gサービス用の料金プラン「5Gギガホ」において、キャンペーンながらデータ通信の容量を“無制限”としています。
2018年の「北海道胆振東部地震」では、災害救助法の適用地域を対象に、データ通信量を無制限とする措置を講じました。この措置は、後に「災害時データ無制限モード」と名付けられ、ドコモの災害対策の一環と位置付けられることになります。
ただ、この時は「人口の多い都市圏(特に東京23区)で災害が起こっても適用するんだろうか……?」と若干疑問ではありました。人口が多い分、ネットワークへの負荷(トラフィック)も集中するため、インフラが持ちこたえられないのではないかと考えたのです。
しかし、その懸念は結果として杞憂(きゆう)でした。2019年10月に発生した「令和元年台風19号(東日本台風)」では、東京23区の一部にも災害時データ無制限モードが適用されたのです。
docomo Wi-Fiを含む大手キャリアは、災害発生時に自社の公衆Wi-Fiスポットを「00000JAPAN」という統一されたSSID(アクセスポイント名)で開放し、被災エリア(特に避難所)におけるネット通信手段を提供しています。しかし、災害時データ無制限モードや、それに類する取り組みをするキャリアがある現在において、データ通信における公衆Wi-Fiサービスへの依存度は著しく低下しているように感じます。
ドコモがdocomo Wi-Fiの代替サービスとして開始したd Wi-Fiは、先述の通りdポイントクラブ会員であれば誰でも無料で利用できます。言い換えれば「dアカウント」さえ持っていればOKということで、ドコモ回線の契約も不要です。例えば、モバイル回線はMVNOが提供するいわゆる「格安SIM」を使い、外出中に通信量の大きなデータのやりとりが必要な場合はd Wi-Fiを活用する……という使い方も可能です。
ドコモ回線を持っていないユーザーでも、スマホやタブレットに「dアカウント設定アプリ」をインストールし、そこからd Wi-Fiをセットアップすると、ドコモのスマホやタブレットと同様にd Wi-Fiのアクセスポイントに自動接続できるようになります。
d Wi-Fiは、無料ながらもドコモ以外のユーザーでも使いやすいサービスを目指しているようです。
比較的高速なモバイルデータ通信が日本国内において安定かつ快適に使える環境が整い、災害時もモバイルデータ通信で通信手段を確保できる現状を踏まえると、特に有料の公衆Wi-Fiサービスは厳しい戦いを強いられることになるでしょう。
dポイントクラブ会員になるという条件があるとはいえ、完全無料化にかじを切ったd Wi-Fiは、Wi-Fi専用のタブレットやPC、モバイルゲーム機での利用はもちろん、災害時のバックアップとして、「誰でも無料で使えるインターネット接続手段」の位置付けで役立ちそうです。
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