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» 2020年10月02日 12時00分 公開

5分で知るモバイルデータ通信活用術:月額2000円/最大11Mbpsでスタート――NTTドコモの公衆Wi-Fiサービスの18年を振り返る (1/2)

NTTドコモが、2022年2月8日をもって「docomo Wi-Fi」のサービスを終了することになりました。そこで、その前身サービスである「Mzone」から、docomo Wi-Fiの後継サービスとなる「d Wi-Fi」まで、同社の公衆Wi-Fiサービスについて振り返ってみようと思います。

[島田純,ITmedia]

 NTTドコモは、2022年2月8日をもって公衆Wi-Fi(無線LAN)サービス「docomo Wi-Fi」の提供を終了します。代替サービスとして、同社はdポイントクラブ会員を対象とする無料公衆Wi-Fiサービス「d Wi-Fi」の提供を開始していて、docomo Wi-Fiに対応するスポットで引き続き利用できます。

 今回の5分で知るモバイルデータ通信活用術は、普段と趣向を変えて、docomo Wi-Fiの前身である「Mzone」から「d Wi-Fi」に至るまでの、ドコモの公衆Wi-Fiサービスを振り返ってみようと思います。

歴史 ドコモの公衆Wi-Fiサービスを巡る主な出来事(価格は税別)

貴重な高速モバイル通信サービスだった「Mzone」

 ドコモの公衆Wi-Fiサービスの歴史は古く、2002年7月にMzoneとしてサービスがスタートしました。Mzoneは携帯電話サービスとは“別立て”で月額2000円(税別、以下同)、最高通信速度(理論値)は11Mbpsでした。エリアも東京都内のみと、大きく絞られていました。

 サービス開始から1年と少し経過した2003年10月、エリアの全国展開を本格化すると同時に24時間当たり500円で利用できる「日割プラン」が追加されました。

 サービス開始から約18年経過した現在から見ると、通信速度は低く、料金も高いように見えますが、当時としては“超高速”なモバイルインターネット通信サービスでした。同社は3G通信サービス「FOMA(フォーマ)」の提供を開始していましたが、当時の最大通信速度は下り384kbpsでしたし、「パケ・ホーダイ」(データ定額)のようなデータ通信オプションもなかったので、モバイラーとしては大変ありがたかったのは間違いありません。

Mzoneロゴ NTTドコモが2002年7月に開始したMzone。当時としては、貴重な高速通信手段の1つだった

 とはいえ、Mzoneは公衆Wi-Fiサービス。アクセスポイントのある場所でないと使えません。そこでモバイラーたちが目を付けたのが、DDIポケット(後のウィルコム→ワイモバイル→ソフトバンク)のPHSです。

 同社は2001年6月から、定額制モバイルデータ通信サービス「AirH"」(エアーエッジ:後の「AIR-EDGE」)のサービスを開始しました。最大通信速度は32kpbsと、FOMAと比べると低速でしたが、比較的広い範囲で使える定額通信サービスは、モバイラーにとっては非常に心強いものでした。

MC-P300 セイコーインスツルメンツ(現・セイコーソリューションズ)製のPCカード型PHS「MC-P300」。AirH"のサービスに対応する初号機だった(出典:ソフトバンク)

 携帯電話を使ったデータ定額サービスは、2003年11月にKDDIと沖縄セルラー電話が開始した3Gサービス「CDMA 1X WIN」において「EZフラット」を提供したことで始まりました。

 ただし、EZフラットを含め、当時の携帯電話向けのデータ(パケット)定額オプションは、ノートPCなど外部機器を使ったデータ通信は定額通信の対象外でした。外出先でもPC(やPDA)で高速な通信を行いたい――そんなモバイラーにとっては、Mzoneはとても貴重なサービスだったのです。

Libretto L5 その当時、筆者が使っていたノートPC「Libretto L5」

スマホの普及で位置付けが変わる公衆Wi-Fiサービス

 ノートPCやPDA(パーソナルデジタルアシスタント)を使って外出先で高速通信を行う手段として誕生したMzoneですが、2010年代に入りスマートフォンが本格的に普及し始めると、少しずつ位置付けが変わっていきました。

 スマートフォンは、PDAに携帯電話としての機能を統合したようなデバイス。携帯電話に最適化されたWeb(≒通信量を抑えるためにデータ量を抑えたWeb)ではなく、PC向けのリッチなWebや専用アプリを利用します。通信量はどうしてもかさみます。

 公衆Wi-Fiサービスとして先行していたMzoneは、2011年からサービスの軸足を「ノートPCやPDA」から「モバイルデータ通信の迂回(うかい)」に移していくことになります。

 まず、指定ISP(「spモード」「mopera U」など)を契約している人を対象とする「公衆無線LANオプション」(月額300円)について、パケット定額を契約することを条件に18カ月間無料とするキャンペーンを2011年10月から開始しました。

 さらに、2012年3月にはMzoneと公衆無線LANオプションのサービス名を「docomo Wi-Fi」に統一し、スマホでも使えるサービスであることをより強くアピールするようになりました。同年9月からは、先述の無料キャンペーンを「docomo Wi-Fi 永年無料キャンペーン」として、条件を満たす限り月額料金を永年免除するように改めました。

オフロード Mzoneからdocomo Wi-Fiに改名され、ドコモの公衆Wi-Fiサービスは新たなフェーズへ

 2011年頃から2013年頃までは、スマホの“つながりやすさ”を演出すべく、ソフトバンクやau、そしてドコモも公衆Wi-Fiサービスのスポット数をアピールしていました。その目的は、先述の通りモバイルデータ通信の迂回(オフロード)です。

 しかし「とにかくポイントが多ければいい」と言わんばかりに、一部のキャリアはモバイル回線を利用したWi-Fiアクセスポイントを大量に設置しました。その結果、街中に公衆Wi-Fiスポットがあふれかえり、「公衆無線LANに接続したけれど、思ったよりも速度が出ない」「本来は高速なはずのWi-Fiがモバイル回線よりも遅い」といった、品質面での問題も発生しました。

 元々はWi-Fiスポットの足回り(上位回線)として光回線を使っていたこともあり、docomo Wi-Fiは、他社と比べると比較的高速で安定した接続ができるスポットが多数派でした。しかし、スポット拡大競争の中で、足回りにモバイル回線を使うスポットも現われた上に、スマホでの利用が実質無料となったことも重なって、docomo Wi-Fiでも「つながりにくい」スポットが散見されるようになりました。

 「混み合うモバイル回線のトラフィック(通信の行き来)をできるだけ減らして混雑を緩和したい」という意図は分かります。しかし、Wi-Fiアクセスポイントが“乱立”することによる品質低下が発生し、結果として大手キャリアの公衆Wi-Fiサービスに「安かろう悪かろう」という印象が根付いてしまったことは残念でなりません。

ソフトバンクのアピール 大手キャリアの中でも、ソフトバンクモバイル(現・ソフトバンク)は特にWi-Fiスポットの数を強くアピールしていた(画像は2013年3月の発表会資料より)
ソフトバンク ソフトバンクモバイルの「ソフトバンクWi-Fiスポット」は、モバイル回線を足回りとするアクセスポイントを多数設置しました。スポットを増やすことには役立ったが、通信品質という面では疑問が残るやり方でもあった
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