そして何気にすごいのがこれ。「Apple ProRAW」のサポート(年内予定なので発売時はまだ使えないが)。
一般にデジタルカメラはイメージセンサーからの出力信号をデジタル化して画像処理エンジンで「現像処理」を施し、JPEGなどに変換して画像ファイルとして保存している。で、「現像処理」を施す前のデータを「RAWデータ」と呼んでいる。RAW形式のファイルがあれば、後から自由に現像処理を行えるので、写真をイメージ通りに自分で仕上げたい人に使われている。
iPhoneだとそう単純ではない。今まで書いたように「1枚の写真」を仕上げるのに裏で連写した何枚もの画像データを組み合わせているからだ。
そこでAppleは元の信号をプロセッサ内で処理をして得られた、でも最終的な処理を施して画像にする前のデータを「ProRAW」として保存し、後からその豊富なデータをもとに自分で現像処理を行えるようにしたのである。
それも、付属のアプリのみならず、サードパーティー製のカメラや画像処理アプリで利用するためのAPIも用意するという。
今まではiPhoneに任せるしかなかった写真の仕上げを自分でできるようになるわけで、本格的にカメラとして使いたい人には朗報。懸念はファイルサイズが大きくなりそうなことくらいか。
動画は4Kの60fpsでDolby Visionに対応した。Dolby Visionは広いダイナミックレンジの動画を記録するためのHDR規格の1つだ。
iPhone 12では10ビットのダイナミックレンジを持つDolby Vision形式のHDR動画を記録できる。
最近はデジタル一眼も映像作家をターゲットにHDR動画対応の製品が増えているが、編集・視聴環境まで考えるとなかなか大変。その点、Dolby Visionで撮影・編集・視聴まで全部できる唯一のカメラとしてiPhone 12が躍り出てきたのだ。
HDR撮影までしないにしても、頑丈で防水でホコリにも強くて過酷な環境でも撮影でき、1台で編集から共有までこなせるという点で魅力的。これもA14 Bionic Chipパワーのなせる技だ。
写真や動画撮影はAppleのみならず、あらゆるハイエンドのスマートフォンが力を入れている分野であるから一概にはいえないけれども、iPhone 11 Proで実績のある「コンピュテーショナルフォトグラフィ」を駆使した絵作りがさらに進化したという点で、iPhone 12シリーズのカメラ機能は新たな次元に突入している……たぶん、こればっかりは実際に撮ってみないと分からないけど、かなり期待しております。
スマホカメラはデジタル一眼のような大きなレンズや大きなイメージセンサーを搭載することができない分、高性能なプロセッサを駆使したコンピュテーショナルフォトグラフィが生命線なのだから。
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