「iPhone 12」「12 Pro」を使って見えた、買い換えへの決断ポイントと新しい「Pro」の定義(2/4 ページ)

» 2020年10月20日 22時00分 公開
[林信行ITmedia]

見た目以上に強力な磁力のMagSafe

 続いて注目の新機構、MagSafeについて見ていきたい。

 Appleはここ数年、わざわざコネクターを差し込まずに充電できるワイヤレス充電の実現に向けて工夫を重ねてきたが、従来の汎用(はんよう)技術Qi(チー)の充電器は、置く場所がズレて充電に失敗していることが多く、利用体験が良くなかった。

 それに対して、MagSafeは強力なマグネットによる吸着でピタリと位置を合わせたり、ずれたりしないようにする。さらには本体背面のマグネット吸着機構を、持ち歩き時のアクセサリーの吸着にも活用し、何が背面についているかを認識できるようにNFCによる機器識別機構まで内蔵してしまった。

 磁力はそれなりに強力で、MagSafe充電器にiPhoneを吸着させた状態でケーブルを揺らしても落ちなかった。

 磁石はiPhone背面とMagSafe充電器のパッドの両方に入っているが、強力なのはパッド側の磁石で冷蔵庫の扉のような面にくっつけると、なかなか剥がれないし、位置ズレもしない。これに対して、カバンの中の磁気カードなどに配慮したのかiPhone 12/12 Pro背面の磁力は弱めで、冷蔵庫の扉には貼りつきそうになるもののズレ落ちてくっつかない。クレジットカードケースのような軽いものを取り付けて持ち歩く分には問題なく使えそうだ。

 なお、このMagSafeによる吸着だが、実は半径分あるいは直径分ズレたところにもスイートスポットがあるため、充電器を覆うように上から本体を置いてくっついた感触だけで置き場所を確かめると、充電が失敗をすることがある。一応、ちゃんと充電が開始したことを確認した方が良いことに変わりはない。ただ、これまでのワイヤレス充電器のように一度充電が開始されたものが、ちょっとした衝撃でズレて充電失敗ということはほぼ無くなりそうだ。

 AppleはこのMagSafeを今後、多くの会社にこの規格を使って欲しいようで、これから新しい充電方法としても、新しいアクセサリーのアタッチメント構造としても、広がりが楽しみだ。

iPhone 12 MagSafeを使ったアクセサリーは、Apple純正品以外でもさまざまなバリエーションに期待が持てる

 ちなみにMagSafeの充電器は、Qi規格に備ったワイヤレス充電器なので磁石による吸着こそないが、iPhone 11などのQi充電に対応したiPhone過去モデルやAirPodsなどの充電も行うことが可能だ。

5Gの効果は来年以降に期待

 続いての注目は5GとA14 Bionicだが、結論からいえば、この両者はすぐに受けられる恩恵は分かりにくく、むしろ2021年以降が楽しみな部分と言えよう。

 2019年の夏まではiPhoneが5Gに対応することが、まるで一大事件のように大きくうわさされ、2020年に入ってからも5G対応スマートフォンが出るたびに大きな話題になった。5G対応というだけで製品の大きな特徴として宣伝され、従来機よりも高い価格設定をする免罪符にもなっていたことを考えると少し拍子抜けだ。

 Appleは、この5Gについて騒ぎ過ぎる現状を戒めるように、ラインアップ全体でほぼ価格水準を維持しつつ5G対応を果たしたが、筆者は試用期間中にほとんど5Gの恩恵を受けられなかった。

 というのも、5Gでつながることがまれだったからだ。東京駅や渋谷駅ですら5Gでつながらなかった。六本木周辺や京都駅では5Gでつながったが、日常生活において対応エリアの中にいることは非常に少ない。たまに対応エリアに入り画面の上に「5G」の文字が現れると、そのこと自体がラッキーに感じられる。それが2020年秋時点での5Gの使用感だ。

 ちなみに、5Gはつながったからと言って真価を発揮できるとは限らない。5Gでつながった京都駅の新幹線ホームで音楽や映画をダウンロードしようとしたが、これまでの4Gと変わらないダウンロードスピードで、結局、7〜8分立った時点でも映画はダウンロードし始めの状態で、諦めて新幹線に乗ることになった。

 筆者が今回試したのはソフトバンクの端末だったが、他のキャリアのネットワークでも、そこまでの大差はないと聞く。iPhoneは、その13年の歴史の中で3G、4G、そして今回の5Gと3世代の最新携帯通信技術に対応してきたが、その中でも5Gは、最も整備が未熟な状態でスタートした技術であり、恩恵を受けるのはまだまだこれからとなりそうだ。これは言い換えれば、通信性能に関しては今すぐには恩恵がないが、2021年以降になって真価を発揮する将来が楽しみな特徴と言える。

 そして、すぐの恩恵のない技術に高値を払わせることなく、リーズナブルに購入できるiPhoneの価格設定は顧客の理にかなっていると思えてくる。

iPhone 12 新型iPad Airに続いて採用された「A14 Bionic」。アプリの最適化を含め、真価を発揮するのはまだ時間がかかりそうだ

 次に、2つ目の特徴の高性能プロセッサ、A14 Bionicだ。5nmプロセスという、他を引き離す最新技術で作られているそうだが、直接的にそれを感じることはない。他のどんなスマートフォン用プロセッサより50%以上速いということだが、「確かに速い」と感じないわけではないが、新しいiPhoneは常に速いと感じるものだし、これもなかなか分かりにくい。いずれ、従来より50%高速なGPUも、それを最大限生かしたゲームなどの画質では体感できるのかもしれないが、ほとんどのアプリがiPhone 11 Proまでをターゲットにしている現段階では実感できず、これもどちらかといえば来年以降が楽しみな部分だ。

 ただし、最大80%以上高速な機械学習パフォーマンスやISP(イメージ信号処理)性能は、この後触れるコンピュテーショナルフォトグラフィなどの特徴で生かされているはずだ。

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