「iPhone 12」「12 Pro」を使って見えた、買い換えへの決断ポイントと新しい「Pro」の定義(3/4 ページ)

» 2020年10月20日 22時00分 公開
[林信行ITmedia]

暗いところ、明るいところ、共に強くなったカメラ

 残る5つの特徴はカメラの性能に関するもので、iPhone 12と12 Proの違いにも関わってくる部分だ。ここからは比較を交えて検証を始めたい。

 iPhone 12世代のカメラは総じて画質が格段に良くなっていて、Proモデルでない12でも、昨年のプロモデル、11 Proのユーザーを嫉妬させるような写真が撮れることが多い。

 標準レンズ(広角レンズ)がf1.8からf1.6と明るいものに変わり、超広角でシャッタースピードを落として暗い場所でもきれいに撮れるナイトモードに対応、さらに複数レンズで取り込んだ映像をコンピューター処理で紡ぎ合わせ高画質な写真に仕立てるDeep Fusionという自動処理のおかげで、とにかく暗い場所での撮影が強くなった。

 iPhone 11 Proと12 Proで撮り比べたBar Oakの写真を見比べてもらえれば、その差は歴然だろう。

iPhone 12iPhone 12 左がiPhone 11 Proで撮った写真。棚の明かりが白飛びしないように抑えると、この明るさが限界だった。右の12 Proの写真ではカウンターへの映り込みなどもより明るく鮮明に撮れていることが分かる

 Appleは、iPhone 12/12 Proでは、このDeep Fusionや明暗差が大きい写真をきれいに処理する「Smart HDR 3」などの撮影後のコンピューター処理(コンピュテーショナルフォトグラフィ)による、写真画質の向上を強くうたっている。下の写真ではSmart HDR 3の効果が分かる。

iPhone 12iPhone 12iPhone 12 iPhone 12/12 Proの機能「Smart HDR 3」は明暗さの激しい写真を自然に処理してくれる。左のiPhone 11 Proで撮った写真では明るい窓の周囲が白く飛び気味だが12(中央)や12 Pro(右)では、自然に処理してくれている

 ディテールの描きこみを行うDeep Fusion、明暗さをうまく処理するSmart HDR 3に加え、iPhone 12/12 Proではもう1つ画像のコンピューター処理の機能が加わっている。それは超広角レンズでの歪みを補正してくれる機能だ。

 2019年のiPhoneから加わった超広角レンズは、背景の大きな建物などを可能な限り大きくカメラのフレームの中に収めて、これまでにない面白い写真を撮ることができるが、それだけに写真の中央や端っこに歪みが生じることも多い。そこで、被写体が建物や人だと認識するとまっすぐな線をまっすぐにしたり、人としての体型をできるだけ自然に見せたりするように頑張って処理をしてくれる。

iPhone 12iPhone 12iPhone 12 左のiPhone 11 Proの写真では建物の中央部分がやや膨らんで見えるが、12(中央)や12 Pro(右)での写真ではきれいに補正されて歪みを感じなくなっている

 このようにカメラの中に搭載されたAI機能(機械学習)が勝手に「こういう写真を撮りたいのだろう」と認識して、写真を勝手に加工してしまうということは、どうやったらきれいに撮れるのかが、あまりよく分からない素人にはうれしい機能だが、一方で「自分はこういう写真が撮りたい」というイメージがあるプロフェッショナルには煩わしいこともある。

 そこで、Appleが2020年内に提供開始しようとしているのが、Apple ProRAWというProモデル専用の機能で写真を撮影した際、iPhoneの映像素子に記録された全情報を使って写真を自分好みに現像し直す機能だ。

 既に世の中には写真加工アプリがたくさんあって、後から目を大きくしたり、食べ物を美味しそうな色に変えたりできるものもあるが、ほとんどのアプリは1度、現像済みの写真を後から加工しているため、加工の度合いによっては写真に歪みが生じて画像が劣化することがある。その点、Appleが仕様を公開するというProRAWに対応した12 Pro用であれば画像を劣化させることなく、元データを使って写真の画質を落とさずに現像し直せるアプリが出てくる可能性もある。そう考えると、こだわった写真を撮りたいプロユーザーは、やはりProモデルの一択ということになる。

 なお、Proユーザーでも普段からそこまで1枚1枚の写真をこだわって撮っている人は少ないだろう。iPhone 12と12 Proはセルフィー用のカメラもナイトモードに対応させるなど、どんなシチュエーションでもきれいな写真を撮れる工夫を今回も随所に施している。

iPhone 12iPhone 12iPhone 12 ナイトモードは使っていないが、セルフィーのポートレートモードでも、ディテールの描きこみがより細かくなり色がより自然になった印象だ。左からiPhone 11 Pro、12、12 Proとなる
iPhone 12iPhone 12iPhone 12 暗いバーでの食事をUltra Wideで撮影した。左の11Proでもそれなりに明るく撮れているが、12(中央)や12 Pro(右)はさらに鮮明だ

 これに先ほどのコンピュテーショナルな加工も加わって、iPhoneは最も失敗写真が撮りにくいカメラへと着実に歩みを進めている。

 あまりサンプル写真を増やしても記事が読みにくくなるので、ここからは試用していて気が付いたことを説明しよう。

 iPhone 12に対しての12 Proの優位性の1つとして、LiDARというレーザー測位技術を使って「暗いところでもポートレート撮影ができる」という点がよく挙げられる(ポートレート撮影とは、被写体と背景を区別して写真を記録する技術で後から背景だけさらにボカしたりできる)。

 ただ、レンズが明るくなったせいか、実はLiDARが付いていないiPhone 12でも、これまでのiPhone 11ではポートレート撮影が有効にならなかったような暗い場所でもポートレート撮影ができるようになっている(ちなみにLiDARは、オートフォーカス速度の向上などに確実に役立っているはずだが、既に12のオートフォーカスも十分早いので、そこまで違いを実感することはなかった)。

 LiDARは、部屋の大きさを瞬時に測って間取り図に変換してくれたり、部屋の中にバーチャル家具やバーチャルキャラクターを登場させたりする実用/ゲーム系のARコンテンツなど、カメラ以外の機能でも活用が期待されている技術で、今後が楽しみな部分でもある。

 iPhone 12/12 Proのもう1つの特徴といえば、Dolby Vision HDRという極めてダイナミックレンジの大きな映像を撮れることだ。これについては、夜の京都で撮影した下の動画やAppleのサイトのサンプルで確認してもらえればと思う。

 ただDolby Vision HDRに関しては、1つ気になる点があった。まだ、iPhoneやMacのアプリでもこの規格に対応していないものが多いからか、例えばMacに取り込んでiMovieで編集しようとしたときに映像が白飛びしたように表示されることがあった(iPhone上では普通の色で表示される)。

 この辺りは今後、ソフトウェアがアップデートして対応すれば解決する問題だと思うが、しばらくはこうしたことにも気を付けて映像編集はiPhone上で行った方が確実かもしれない。

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