最近ではスマートフォンからIoTへと通信事業の軸足をシフトしつつある京セラも、ローカル5Gに力を入れようとしている企業の1つだ。同社は2019年のCEATECにも、ローカル5G向けの基地局やデバイスを展示していたが、今回はそれをさらに強化した機器などを出展している。
中でも注目されるのは新しい「5Gコネクティングデバイス」。これは2019年にもプロトタイプを出展していたものだが、今回出展したものは2020年10月中旬以降、順次販売されるという商用デバイスであり、京セラとしては初の商用5G対応デバイスになるという。
通信はNSA/SAの両対応で、デュアルSIMにも対応することから公衆網とローカル5Gの双方に接続可能。あらゆる産業の用途に応えられるよう開発されたことから、Wi-FiやBluetooth、さまざまな有線接続に対応するためのUSB Type-Cなど、充実したインタフェースを備えている他、プロセッサには「Snapdragon 865」を搭載しており、エッジデバイスとしての活用も想定しているようだ。ただし電源がない場所でも長時間使えるよう、冷却ファンや6000mAhのバッテリーを搭載するなど、形状はスマートフォンとは異なる。
京セラは5Gコネクティングデバイスのユースケースとして、物流の監視や工場のAGV(無人搬送車)などの制御、建築現場での遠隔機器操作などを挙げているが、同社が具体的な取り組みとして示したのが、ドローンを活用したソリューションである。
これはドローン関連のシステムインテグレーターであるブルーイノベーションと共同で推し進めているもの。5Gコネクティングデバイスをドローンの上に搭載し、ドローンに搭載したカメラの映像や、センサーの情報などを5Gで伝送することでさまざまなソリューションを実現するとしている。
具体的にはドローンに搭載されたカメラの映像をAIで処理することで、プラントや工場の監視や点検を自動化したり、物流ドローンを安全に運行するための障害物や人を検知したりすることなどを想定している。5Gのドローンへの活用は注目分野の1つだけに、今後の取り組みが注目されるところだ。
「8K+5G」のエコシステムを前面に打ち出しているシャープは、ローカル5G、さらには5Gに関しても、具体的なデバイスやソリューションなどの展示を見ることはできなかった。同社の出展内容は、どちらかといえば5Gの普及を見越し、強みとなるディスプレイ技術などを生かしたソリューションの展示が主だったようだ。
具体的には、透明ながら映像を表示できる「透明ディスプレイパーティション」や、カメラやセンサーを活用して体に触れることなく脈拍や体温などのバイタル情報を測定する「非接触ヘルスケアソリューション」、スマートフォンと連携したワイヤレスイヤフォンを使い、スマートフォンの位置やセンサーから周辺の状況を取得してクラウドで解析、最適な音声に調整する「スマートヒアラブル」などだ。
そうした中、直接モバイル通信を活用したソリューションとして出展されていたのが「LINC Biz mobility」である。これはシャープ子会社のAIoTクラウドが提供する、業務用車両向けのテレマティクスソリューションとなる。
より具体的には、LTEによる通信に対応し、eSIMを搭載したGPSモジュール端末「CB-G200J-H」に、USB端子を経由してドライブレコーダーや環境センサーなどさまざまなデバイスを接続。さらにソラコムのeSIMによる通信サービスと、端末を管理するクラウドサービスを一体で提供することで、車両の運行状況やドライバーの作業状況を把握、管理しやすくする。
現在はコンシューマー向けの施策が注目される5Gだが、その活用の本命とみられているのは、企業や自治体などに向けたビジネス用途だ。ローカル5Gに関しても、年内が見込まれているSA運用が可能な4.7GHz帯が割り当てられることで、本格的に市場が立ち上がるとみられている。
それゆえ、2020年のCEATECでは、まだ取り組みが途上な印象を受けたというのが正直なところではある。ただ、今後確実な伸びが期待できる分野だけに、2021年以降は各社の取り組みが急加速することになるかもしれない。
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