5G時代の“au Design project”とは? 現代アート作品を5GとAR技術で体感できる「AR x ART」アプリ(1/2 ページ)

» 2020年11月25日 10時00分 公開
[房野麻子ITmedia]
AR x ART 現代アート作品を5GとAR技術で体感できる「AR x ART」アプリ。第1弾として彫刻家・名和晃平氏の作品をフィーチャーしている

 KDDIは、au Design project [ARTS & CULTURE PROGRAM]の取り組みとして、現代アート作品を5GとAR技術で体感するアプリ「AR x ART」の提供を11月24日に開始した。第1弾として、「White Deer」「PixCell」などの作品で世界的に有名な彫刻家、名和晃平氏とコラボレーションしている。

 24日には、東京・銀座にあるKDDIのコンセプトショップ「GINZA 456 Created by KDDI(以降GINZA 456)」にて記者説明会が開催され、KDDI サービス統括本部 5G・xRサービス戦略部 部長の繁田光平氏がこの取り組みについて説明した。

 フィーチャーフォン時代から、携帯電話のデザインでさまざまなアプローチをしてきたau Design project。「5G時代には体験自体をデザインし、アップデートしていく」としてau Design project [ARTS & CULTURE PROGRAM]を展開し、東京国立博物館と国宝『聖徳太子絵伝』をARを使って鑑賞する取り組みなどを行ってきた。

 今回は「AR x ART」アプリをリリースし、現代アートにトライする。第1弾は、彫刻家・名和晃平氏とコラボレーション。名和氏の作品「White Deer」などをARで鑑賞することができる。

 「日本全体をインスタレーション化したり、旅を介して作品を感じ取ったりできるような、奥行きのある大きなプロジェクトになる」と繁田氏は意気込みを語った。

 またKDDIは、アーティストとつながり、作品を購入できるSNS「ArtSticker」やミュージアム事業を展開している「The Chain Museum」にKDDI Open Innovation Fund 3号を通じて出資。文化芸術体験のDXを推進する「augART(オーグアート)」に取り組むとしている。

AR x ART The Chain Museum 代表取締役社長の遠山正道氏(左)とKDDI サービス統括本部 5G・xRサービス戦略部 部長の繁田光平氏

 The Chain Museumの遠山氏は「当初、洞窟や壁画など、3D空間だったアートが、平面化したキャンバスに描かれるようになり、大げさに言えば二次元に後退した。その代わり画商が登場して絵画をモバイルするようになった」と歴史的な背景に触れる。

 そして現代は「ARで空間にまた新たなメディウム(媒体)が加わったといえる」とし、「アーティストが直接世界とつながるプラットフォームにARや5Gが載ってくると、環境とメディウム、アートそのものとが混在化していく。アートと環境の区別があいまいだけど、日常と違うものを体験して感動に結び付く」と期待を寄せた。

「AR x ART」アプリで新しいアート鑑賞を体感

 AR x ARTアプリについてはKDDI サービス統括本部 5G・xR戦略部 エキスパート 砂原 哲氏が説明した。

AR x ART KDDI サービス統括本部 5G・xR戦略部 エキスパートの砂原哲氏。2003年に始まった「au design project」時代からデザインから携帯電話を考える取り組みを行ってきた

 今回は名和晃平氏の作品とコラボレーションした、3つのアートエクスペリエンス(コンテンツ)を用意している。

 1つ目は「PixCell_AR」で、名和氏の代表的なシリーズである「PixCell」シリーズをAR化したもの。iPhone 12 Pro/Pro Max、iPad Pro(2020)に搭載されているLiDARスキャナーを活用し、目の前にある人物や物体をPixCellに変貌させることができるという。この機能は12月提供予定だ。

 名和氏のPixCellシリーズにはさまざまな作品があるが、10年前に、当時iidaと呼ばれていたau Design projectのアートエディションで、草間彌生さんとのコラボレーションに次ぐ第2弾として名和氏とコラボ。「PixCell via PRISMOID」という作品を生み出している。

AR x ART 10年前に発表されたiidaのコンセプトモデル「PixCell via PRISMOID」(上)と「PixCell TV」

作品を配置できる「AR x ART COLLECTION」

 2つ目が「AR x ART COLLECTION」で、名和氏のマルチプル作品(工業的に複数作成された作品)をAR化したもの。スマホのカメラを向けた場所に、名和氏の作品を配置できる。今回は「Velvet-White Deer」「Velvet-Ether」の赤とネービーブルーバージョン、「White Deer(Oshika)」を用意。これもLiDARスキャナーとARKit 4を活用して実現している。

AR x ART 「AR x ART COLLECTION」では、写真のような名和氏の作品をAR空間に配置できる
AR x ART アプリを起動すると、薄く透明な作品の影が現れ、タップするとはっきり表示。ドラッグして位置を移動、2本指で回転、ピンチで拡大縮小ができる。光や影の調整も可能。

 「これまでのARだと、床認識をさせるのに時間がかかっていたが、LiDARスキャナーを使うことで瞬時にARオブジェが出現する」(砂原氏)。また、ARオブジェの前に人物がいると、そのオブジェは人物の奥に表示されるというオクルージョン(遮蔽《しゃへい》)機能も実装した。また、位置、サイズ、向き、影の調整も可能で「非常にクオリティーの高い、リアリティーのある体験ができる」(砂原氏)。

 なお、アプリで最初に楽しめるのは「Velvet-White Deer」「Velvet-Ether」の赤バージョン。ネービーブルーのバージョンとWhite Deer(Oshika)についてはロックが掛かっている。ロックを解除するには、3つ目のコンテンツ「White Deer_AR」を体験する必要がある。

AR x ART 写真中央のネービーブルーの作品と右のWhite Deer(Oshika)についてはロックがかかっていて、別のコンテンツを体験しないと解除されない
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