名和氏のWhite Deer(Oshika)は、宮城県石巻市の荻浜にある作品。もともと、震災復興イベント「Rebon-Art Festival」で設置されたものだ。White Deer_ARでは、これをベースにしたAR体験ができる。ARの技術である空間マッピング技術を使って、特定の場所でアプリを利用すると、White Deerが出現する。「Appleのロケーションアンカーは日本でまだ対応していないので、それとは違う技術を使っている」(砂原氏)
このWhite DeerのAR出現スポットは各地にあり、「GINZA 456」もその1つ。体験場所によってマルチプル作の何がロック解除されるかはまちまち。AR x ART COLLECTIONのロックされた作品を全て解除するには、複数の場所を巡る必要がある。
なお、White Deer_ARは、5Gの高速大容量、使い放題プランで可能になる「au 5Gエクスペリエンス」によって、5Gエリア内なら自動で高画質化される。2021年2月以降に提供予定だが、White Deerのアニメーションバージョンが楽しめる予定だ。
White Deerの出現場所は他に、東京ガーデンテラス紀尾井町、東京・表参道の「GYRE」「HOTEL ANTEROOM KYOTO」などがある。12月以降には「HOTEL ANTEROOM NAHA」、渋谷PARCOの屋上も追加される。石巻市の荻浜も11月27日からの立ち入り禁止期間が終了後に対応する予定だ。
名和氏は、10年前にPixCell via PRISMOIDを手掛けたことを振り返り、「その10年前にPixCellを作り始めた。20年越しでデジタルで最先端の作品に取り組めて感慨深い」と語った。
「PixCellは、京都の美大に通っていた頃、インターネットを使い始めて、これからいろんなものが情報化していくことを、どうやって彫刻で表現できるかを考えて編み出した、彫刻の方法論から作り出したもの。目の前にあるものに、レンズの役割をする透明な球体を貼り付けて彫刻にするものだが、(AR x ARTによって)ケータイをかざすことで同じようなことが起こる。彫刻の方法論が本当にそのまま情報の中で実現する。コンセプトの連動性が非常に高いと思っている。20年前、自分が学生だった頃に、想像していたような彫刻が今になって実現すると思うと感慨深い」(名和氏)
砂原氏は「名和さんの美しいPixCellの配置を再現するのが難しく、今チャレンジしているところ。頑張って開発中」と意気込んでいた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.