「arrows NX9 F-52A」はどんなスマホ? 今後の「arrows」はどうなる? 富士通コネクテッドテクノジーズが説明

» 2020年12月16日 19時30分 公開
[井上翔ITmedia]

 富士通コネクテッドテクノロジーズ(FCNT)は12月18日、NTTドコモを通して新型スマートフォン「arrows NX9 F-52A」を発売する。

 FCNTといえば、7月に約5年ぶりとなるハイエンドスマホ「arrows 5G F-51A」を発売した。この機種は米Qualcommとの協業によって開発された「5Gスマートフォンのリファレンスデザイン」をもとに作られ、ミリ波(28GHz帯)の5G通信に対応していることが特徴だ。

 一方で、新たに登場するF-52Aは2016年10月に発売された「arrows NX F-01J」以来続く“ミドルハイ”路線を継承したモデルである。F-51Aと並べてみると、並ぶスペックだけではかなわない。しかし「頑丈さ」を始めとして、F-51Aで一部置き去りにされた“arrowsらしさ”が戻ってきたようにも思える。

 果たして、F-52Aとはどんなスマートフォンなのだろうか。

高田社長 12月16日に行われた発表会に登壇したFCNTの高田克美社長

arrows 5Gで培った技術を各方面に展開

 先述の通り、F-51AはQualcommとの協業を通して生まれたスマホだ。FCNTでは、リファレンスデザイン(≒F-51A)の開発を通して得られた知見や技術を、スマホの進化だけではなく、さまざまなエッジ(IoT)デバイスの開発やローカル5Gを始めとする産業領域にも広げていくという。

 FCNTの高田克美社長は「つなぐ技術で新たなトレンドを創出し、5G時代におけるリーディングカンパニーとして、さらなる飛躍を目指していく」と宣言した。

arrows 5Gが出発点 arrows 5Gの開発で得られた知見や技術を元に、事業領域の拡大を図る

デザイン×性能×コスパ=arrows NX9

 FCNT初の5Gスマホとして登場したF-51Aは、Qualcommとの協業によって実現した「最高の技術」、米Adobeとの協業したカメラ機能やeスポーツチームと共同で開発してきたゲーミング機能を通して得られる「最高の体験」、そしてアプリ起動の高速化、他のスマホとのデータシェアの迅速化といった独自技術「Smart Fast(スマートファスト)」をセールスポイントとしていた。Smart Fastは、arrowsが備える特徴的な要素「arrows DNA」の1つとして位置付けられる。

 今後のarrowsスマホは、最高の技術、最高の体験、arrows DNAの3点をより進化させたものになっていくという。

3本柱 arrowsスマホは「最高の技術」「最高の体験」「arrows DNA」の3つを意識して開発を進めていくようだ

 ただ、F-51Aは、arrows DNAのうちの1つを“忘れて”しまった。丈夫さである。

 ここ数年のarrowsは、米国防総省の物資調達規格「MIL-STD-810G(MIL規格)」に定められた耐衝撃/耐環境試験をクリアしていることをアピールしてきた。しかし、F-51AはIPX5/8等級の防水性能とIP6X等級の防塵(じん)性能は確保しているものの、それ以外の耐衝撃/耐環境性能については掲げていない。

 この点、F-52AはMIL規格に定める23項目の耐衝撃/耐環境性能を満たし、同規格における落下テストよりも厳しい「高さ1.5mから26方向でコンクリートに落下させる試験」もクリアしたという。丈夫さというDNAを“取り戻した”のだ。

頑丈さ復活 F-52Aでは、ここ最近のarrowsと同じくMIL規格に準拠した耐衝撃/耐環境性能を備えた
ガラス面 画面ガラスに「3Dガラス」を採用していることはF-51Aと同じだが、ガラス自体の強度を向上すると同時に、ボディー側にも工夫を加えることで割れにくい画面を実現したという

 そんなF-52Aは「快適さをよりコンパクトな形で持ち歩く」(櫛笥直英執行役員)というコンセプトで開発されたという。

 日本ではコンパクトなスマホが好まれる傾向にあるものの、5Gスマホはそのトレンドから“逆行”せざるを得ない要素を複数抱えている。具体的には、以下のような要素だ。

  • 対応すべき無線の周波数帯(Band)が多い→アンテナが増える
  • プロセッサ(SoC)が高性能→排熱機構が大きくなる
  • 消費電力が増える→バッテリー容量が大きくなる(当然容積も大きくなる)

 5Gスマホ、ひいては5G通信サービスの普及を図る上で、FCNTではこれらの課題を解決しなければならないと考えたという。そこでF-52Aで重視したのが“バランス”だ。

 ディスプレイはフルHD+(1080×2280ピクセル)の6.3型有機ELとし、プロセッサは性能と効率のバランスに優れたミドルハイレンジ向けの「Snapdragon 765G」を採用した。手に取りやすい価格を目指すべく努力も重ねてきたという。

 加えて、F-51Aで採用された「ベイパーチャンバー」(液体を封入した薄型の放熱機構)の面積をさらに拡大して放熱効率を高めた。動画視聴やゲーム、Web会議など、長時間連続して負荷のかかる作業をした際の安定性を高めるための配慮だ。手に取った際の持ちやすさを高めるべく、本体形状にもこだわったそうという。

企画の狙い F-52Aは「5Gをより一層普及させるためのスマホ」として企画されたという
横幅 持ちやすさを重視して、本体形状にはこだわったという
構造 ベイパーチャンバーの面積を大きく取ることで、放熱効率をさらに高めた

 いわゆる「ニューノーマル」を意識した取り組みとしては、泡ハンドソープまたは薄めた中性食器洗剤での本体洗浄に加えて、除菌シートを使った本体の拭き取りと、アルコール消毒に対応した。

洗浄など 泡ハンドソープや薄めた中性食器洗剤での本体洗浄に加えて、除菌シートやアルコール消毒にも対応した

 スマホを使ってゲームをするユーザーが増えていることを踏まえて、ゲームプレイ用のユーティリティー「ゲームゾーン」を新たに搭載した。ゲームゾーンではアプリランチャー、端末設定や操作性をチューニングする設定機能に加えて、プレイ中の画面や音声を収録する機能も用意している。

 ゲームの画面/音声の収録機能では、「ゲームの画面と音声」と「端末のマイクが拾った音声」を別々に保存することもできる。ゲームのプレイ動画を配信する「ゲーム実況者」から「ゲームそのものの音声と、実況の声を別々に録音したい」という意見が寄せられた結果、このような設定を実装することになったという。

ゲームゾーン F-51Aでもゲーミングへの対応を進めていたが、F-52Aではその取り組みがさらに進化している

今後はエントリー向け5Gスマホも ミリ波対応モデルも継続へ

 F-52Aは、arrowsスマホにおける「スタンダードの上位モデル」という位置付けだという。今後、FCNTはより手頃な価格の5Gスマホの投入を検討しているようだ。

 加えて、F-51Aのようにミリ波の5Gサービスに対応する端末にもチャレンジしていくことも表明した。

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