菅政権の圧力で激変したモバイル業界 各社が発表した料金施策を振り返る(4/4 ページ)

» 2021年02月17日 10時11分 公開
[佐野正弘ITmedia]
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苦境のMVNO、撤退が相次げば何が起きるのか

 携帯各社がMVNOの顧客を奪いかねない料金プランを打ち出したことで、ただでさえ厳しい状況にあるMVNOは一層厳しい立場に立たされている。実際、MVNOの業界団体であるテレコムサービス協会MVNO委員会は、2021年1月18日に総務省へ、データ通信や音声通話のネットワークを借りる際に必要な接続料や音声卸料金の可及的速やかな引き下げなどを求める要望書を提出するに至っている。

総務省 総務省の有識者会議「接続料の算定等に関する研究会」の第40回会合では、テレコムサービス協会MVNO委員会が、ahamoなどの料金プランのGBあたりの単価がMVNOの主要プランの2分の1から3分の1の水準であるとし、競争が困難な現状を訴えている

 もちろん、いくつかのMVNOは既に大手への対抗プランを打ち出している。最も早く動いたのが日本通信で、2020年12月10日に月額1980円で通信量16GB、かつ70分の無料通話が付く「合理的20GBプラン(今は16GB)」の提供を開始。2月18日からは通信量を20GBに増量して「合理的20GBプラン」を正式に提供する。

 オプテージの「mineo」も、2021年1月27日に新料金プラン「マイピタ」を発表、3GBのプランを5GBに増量して月額1380円に引き下げたり、20GBのプランを従来の半額以下の水準となる月額1980円にしたりしている。今後も2021年2月24日にIIJ(インターネットイニシアティブ)が、「IIJmio」の新料金プランを発表予定であるなど、対抗策を打ち出すMVNOはいくつか出てくることが予想される。

mineo オプテージの「mineo」は1月27日に新料金プラン「マイピタ」を発表。20GBプランでは従来の半額以下となる月額1980円という価格を実現している(写真提供:オプテージ)

 そうしたことから、2021年2月28日に実施された「接続料の算定等に関する研究会」の第41回会合で、携帯大手3社からは現状の接続料水準と今後見込まれる接続料低減により、MVNOは十分対抗できるのではないかとの声もいくつか挙がっていた。だが、どれだけのMVNOが競争力のある料金水準を実現できるのか? という点には疑問が残るし、そもそも0円の料金プランにはどう頑張ってもかなわない。

 仮にMVNOが料金面で対抗できたとしても、回線品質の面で大手に追い付けるわけではないという課題もある。実際、先のmineoの新料金発表会において、オプテージ代表取締役社長の荒木誠氏は、新プランでもネットワーク品質には依然として大きな差があり、混雑時の通信速度では敵わないと主張。要望書に賛同しさらなる接続料低減などを求めていた。

 もし新料金プラン提供後、多くのMVNOが追随できず撤退が相次ぐようであれば、大手の寡占が一層強まり将来的にはサービスの硬直化、さらに言えば協調的な値上げが進む可能性なども浮上してくる。値下げに浮かれる人も少なくないだろうが、菅政権が拙速な値下げを求めた結果、短期間のうちに携帯電話市場のバランスが大きく崩れさまざまな懸念が生じていることは確かで、その正当性の検証がもっとなされるべきではないかと筆者は考える。

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