3月も続くMVNOの“新料金ラッシュ” 多様なニーズをカバーするも、業界全体の課題は残る石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2021年03月13日 11時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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音声卸や接続料値下げが背景、音声定額やeSIM、通信品質には課題も

 MVNO各社が相次いで新料金プランを導入しているのは、MNOの値下げに対抗するためだ。原資がなければ大胆な料金改定は難しいが、総務省は、MNOとMVNO間の競争が機能するよう、音声卸の基本料やデータ通信の接続料を引き下げていく方針。MNO各社もこれに応じる見込みで、MVNOのコストは大きく軽減される可能性が高まっている。新料金プランを発表した各社は、この見込みを織り込んだ形で値下げに踏み切ったというわけだ。

 実際、総務省は2月9日にドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社に対し、接続料の算定を精緻に予測するよう要請。3月8日開催された有識者会議(競争ルールの検証に関するWG)で、2021年度の接続料が当初の想定よりも下がる見込みであることが明かされた。総務省のアクション・プランでは、接続料を3年で半減させる目標が掲げられていたが、それも前倒しで達成される可能性が高くなっているという。

接続料 接続料の値下げは、アクション・プランの想定を前倒しで実現する見込み(競争ルールの検証に関するWG《第14回》の総務省資料より)

 値下げの背景は共通している一方で、ユーザーに提示された料金プランは、多種多様でバラエティに富んでいる。MNO3社の料金体系が似通ってきているのとは対照的だ。MNOと比べると規模が小さく、小回りが利きやすいMVNOの本領を発揮しているといえる。各社が抱えるユーザー層の違いも、料金プランの中身に影響を与えている。例えば、イオンモバイルが超多プラン展開できたのは、イオンというリアルなユーザー接点があるからこそだろう。他社が単純にまねできない領域での勝負になっているといえる。

 とはいえ、課題も残る。音声通話定額は、その1つだ。MNO大手3社は、交換機側でMVNOごとのプレフィックス番号を付与する機能を開発しているが、現時点では、スマートフォンに別アプリを搭載する方式が主流。交渉でドコモに音声卸の通話料を値下げさせた日本通信や、MVNEとして自動付与機能に対応したフリービット以外からは、具体的な計画が出ていない。仮にアプリが不要になっても、MVNOが契約する中継電話サービス事業者に音声通話定額プランがなければ、料金体系は変わらないため、MNO並みのサービスができるかは不透明だ。

フリービット フリービットは、MNO側の交換機でプレフィックス番号を自動付与する音声接続に対応。MVNEとして、MVNO各社に導入を勧めていく

 eSIMへの対応も、課題の1つといえる。オンラインでの契約が多く、2回線目として使われることも多いMVNOはeSIMと相性がいいが、現状、国内向け通信ではフルMVNOのIIJのみがeSIM専用の料金プランを用意している。ライトMVNOで加入者管理機能を持たない他のMVNOは、MNOの卸が始まるのを待たなければならない。3月時点ではKDDIのpovoやソフトバンクのY!mobile、LINEMOといったMNOが先行導入している段階で、MVNOに広がるにはまだ時間がかかりそうだ。

 通信品質にムラがあり、混雑時の速度が低下する問題も解決されていない。MVNOのネットワークは、MNOと相互接続している帯域がボトルネックになり、トラフィックが集中するお昼休みや通勤、通学の時間帯に速度が出づらくなる。MNO各社は5Gを導入し、高速通信をアピールしているが、MVNOは無線方式の進化の恩恵を受けづらい。MNOの通信速度が5G導入で向上しているため、相対的には、以前よりMNOとMVNOの差が広がってしまう恐れがある。5Gの普及に弾みがつく中、相互接続の在り方についても、改めて見直す必要がありそうだ。

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