大手キャリアの料金値下げが引き金になり、MVNO各社も相次いで新料金プランを導入している。シェア上位のMVNOでは、まずオプテージのmineoが1月に新料金プランの「マイピタ」を発表、2月にサービスを開始した。楽天モバイルのMVNO事業を除いたシェアで1位となるIIJも、2月に「ギガプラン」を発表。2GB、780円(税別、以下同)からという料金水準を打ち出し、“格安スマホ”トップの意地を見せた。
“新料金ラッシュ”は3月になっても続いている。3月4日は、ソニーネットワークコミュニケーションズのnuroモバイルが「バリュープラス」を発表。低容量に料金プランを絞り、IIJmioより一段安い料金を打ち出している。同日、イオンモバイルはnuroモバイルと同時に「さいてきプラン」を発表。容量の選択肢を絞ったnuroモバイルとは対照的に、1GB刻みの多プランで勝負する。
さらに、3月10日に発表されたエキサイトのエキサイトモバイルの新料金プランには、段階制の「Fitプラン」と定額制の「Flatプラン」の大きく2つに分かれた料金体系が採用された。大手3キャリアの料金競争とは異なり、横並びになっていないのがMVNOの料金プランの醍醐味(だいごみ)だ。矢継ぎ早に発表される各社の新料金をまとめつつ、その背景を解説していきたい。
nuroモバイルはバリュープラスを導入し、料金を大幅に値下げする。同時に、データ容量の区分も改定。これまでは、0.2GBの「お試しプラン」を除くと、データ容量は2GB、7GB、13GBの3つに分かれていた。この松竹梅の3段構えは維持しつつ、新料金プランではデータ容量がそれぞれ3GB、5GB、8GBに改定される。旧2GBプラン以外は、逆にデータ容量が減ってしまっている格好だが、そのぶん、料金も大幅に引き下げられている。
現行の料金プランでは、音声通話対応の場合、それぞれ1400円、2200円、3400円なのに対し、バリュープラスは720円、900円、1350円。現行の2GBプランと、新料金の3GBプランを比較すると、料金が半額程度に下がっている一方で、データ容量は1GB増えている。よりデータ量の多い5GBプランを選んでも、料金は現行の2GBプランより安い。現7GBプランと新8GBプランを比較しても同じで、料金は2200円から1350円に下がり、データ容量は1GB増える。
一方で、10GBを超える選択肢はなくなってしまった。MNOのオンライン専用料金プランに対抗するような中容量プランも用意されていない。これはユーザーの利用実態に合わせた結果だという。nuroモバイルによると、同社ユーザーの実に99%は、データ使用量が10GB以下に収まっている。MNOと直接対決せず、MVNOの得意とする低容量に的を絞ったというわけだ。
ユーザーを引き留める仕組みも用意した。バリュープラスの5GBプラン、8GBプランには「Gigaプラス」がつき、3カ月に1回、それぞれ3GB、6GBが追加で付与される。有効期限は3カ月。1カ月ずつならして使うと、5GBプランは6GBプランに、8GBプランは10GBプランと同等になる。ソニーネットワークコミュニケーションズのモバイル事業部 ビジネス推進部長の神山明己氏は「料金的にはかなりアグレッシブ」と自信をのぞかせたが、nuroモバイルはMVNOの中でも特に安い金額を打ち出せたといえそうだ。
データ容量を見直し、3プランの枠組みを維持したnuroモバイルに対し、イオンモバイルは超多プラン展開で勝負する。同社のさいてきプランは、音声通話対応のものだけで全17種類。0.5GBに始まり、1GBから10GBまでは1GB刻みでデータ容量を選択できる仕様だ。10GB超は、さすがに間は空くが、それでも12GB、14GB、20GB、30GB、40GB、50GBと6種類のデータ容量が用意されている。なお、12GB以上の料金プランは「さいてきプランMORIMORI」と名称も分かれている。
音声通話対応の料金プランだけでなく、他にもデータ容量を分け合えるシェアプランが13種類、音声通話が付かないデータプランが17種類あり、さらに60歳以上限定でデータ速度を500kbpsに抑えた「やさしいプラン」も残し、料金を改定した。ここまで多いと、自分のデータ使用量に合わないプランはほとんどないだろう。料金は音声通話対応のプランが930円から。データ容量が最も多い50GBプランで5980円になる。
イオンリテール 住居余暇本部アプライアンス商品部の河野充宏氏は、3月5日に開催されたモバイルフォーラムのパネルディスカッションで、新料金プランの狙いを「利用状況に合わせた適切な料金を選べるという、これまでの料金プランの考え方をさらに進化させたもの」と解説。「1GB単位でご提供することで、より自由度が高くなった」(同)と語った。nuroモバイルの新料金プランとはある種対極の発想だが、ここまでの多プラン展開は、ユーザーの細かなニーズを拾いやすいMVNOならではといえる。
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