一方で、オンライン専用料金プランは、各社のARPU(1契約あたりからの平均収入)より安く設定されていることもあり、料金プラン変更が多いと、減収の要因になる。オンライン専用プランだけでなく、各社ともデータ容量が無制限のプランやサブブランドまで値下げしているため、影響は多岐にわたる。ドコモの井伊氏は「ギガホ プレミアやahamoなどの新料金を発表しただけでなく、MVNO向けの音声卸やデータ接続料金も値下げを始めている。こういったことのもろもろが収益を下げる」と語る。
大手3社は、この影響をどう見ているのか。ドコモは、2021年度の通信事業の営業利益がトータルで111億円の減益になると見込む。ahamoなどへの移行がどの進むか見通せないため、「通期でのインパクトは見通せない」(井伊氏)というが、「かなりしっかり(減収が)あるので、コスト削減策やネットワークと販売コストを下げることで、マイナス111億円に“とどめる”という表現をした」という。
KDDIは、「ざっと計算すると、600億円から700億円の値下げ影響がある」(高橋氏)とする。全ブランドを含んだマルチブランド通信ARPUは、4400円から4200円に減少する見通しだ。高橋氏によると、「逆算すると、auユーザーの10%ぐらいがpovo、UQ mobileに変わっていく。マルチブランド戦略になるので、比率を考えるとこのぐらいになる」という。100万契約が見えたpovoに加え、KDDIは2月にUQ mobileの料金を大幅に下げているため、この影響も小さくなさそうだ。
「携帯電話の値下げ(要請)に頭を抱えた昨年(2020年)だったが、その影響が今年(2021年)大きく出る」(宮川氏)というソフトバンクも、通信料収入は減少する見通しを示す。その影響額はKDDIとほぼ同じで、「ざっくり言うと、700億円ぐらいのインパクトがある」(同)という。大手3社とも、新料金プランへの移行が進んだり、ユーザーの獲得は増えたりしているが、身を削った値下げだったといえる。一方で、楽天モバイルは、新規参入で有料サービスも始まったばかりのため、これ以上の減収はない。同社は、「2023年度の黒字化達成を目指す」(山田氏)方針だ。
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