新料金プランが好調も、値下げの影響をどうカバーする? 4キャリアの決算を振り返る石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2021年05月15日 10時26分 公開
[石野純也ITmedia]
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非通信分野や法人事業で収益をカバーしつつ、反転攻勢を目指す

 では、大手3社はこの減収や減益をどう補っていくのか。1つは、値下げによるユーザーの拡大だ。ARPUが減ってもユーザー数が増えれば、減収幅を抑えることができるからだ。ドコモの井伊氏は、「今までそのセグメント(中容量の料金プラン)がなかったがゆえに、他社に流出していたところが止まる。いったん流出した方が戻ってくる、プラスの効果もある」と語る。その意味で、同社の4月のMNPが転入超過になっていたのは、朗報といえる。

 ユーザー数が拡大すれば、副次的な効果として「端末の販売のベースが増える」(同)。これも、売上高の拡大にはプラスに働く。ドコモの場合、中容量の料金プランがなかったため、「ギガホからのダウングレードと、ギガライトからのアップグレード、両方の動きが出て、最適な料金プランにリバランスする動きが起きている」(同)という。5Gの拡大などで、ユーザーのデータ利用量が増えれば、上位のプランにアップグレードする動きも徐々に増えてくるはずだ。

 ただし、通信料収入の回復には時間がかかる。より短期的に効果が出ているのが、非通信分野だ。例えばドコモは、非通信の「スマートライフ領域」が大きく伸長しており、今期予想も営業収益1兆1400億円、営業利益2100億円と、通信事業の減益を補っている格好だ。KDDIも、非通信の「ライフデザイン領域」が成長。「お客さま還元をした分を、成長領域で伸ばしていく」(高橋氏)方針だ。

ドコモ ドコモの前期実績。スマートライフ領域が成長をけん引し、増収増益を果たした
KDDI KDDIも、ライフデザイン領域の伸びが大きい

 中でも、銀行や決済、クレジットカードなどの金融分野は、大手3社にとって重要度が高い。KDDIは、auじぶん銀行やauカブコム証券などを束ねたauフィナンシャルホールディングスが好調で、決済・金融取扱高は9兆円に達した。ドコモも、d払いやdカードの取扱高が7兆円まで急増。「決済を起点とした顧客接点の強化と、事業領域の拡大に向けた新たな金融サービス」(井伊氏)を立ち上げるため、三菱UFJと新たなデジタル金融サービスの開発に乗り出す。

KDDI 早くから金融事業を手掛けていたことが奏功し、決済・金融取扱高や営業利益を大きく伸ばしたKDDI

 ソフトバンクは、PayPayの流通取引総額が3.2兆円に拡大していることを初めて明かした。決済サービスでは、ソフトバンクペイメントサービスの取扱高も「大体4兆円ぐらいになり、今期も2桁代の成長は確実」(宮川氏)だという。一方で、同社が特に伸びているのは法人事業。ソフトバンクも「法人事業はソリューションが伸びているので、最低でも19%の増益。上方修正ができるぐらいの経営をやってみたい」(宮川氏)と強気だ。

ソフトバンク ソフトバンクは、法人事業の伸びで通信料収入の減少をカバーしていく

 ソリューションを含めた法人事業は、KDDIも注力している分野だ。KDDIはビジネスセグメントで「営業利益2桁の成長目指す」(高橋氏)。NTTの接待問題で待ったがかかり、スケジュールは「遅れる」(NTT澤田純社長)というが、ドコモもNTTコミュニケーションズ子会社で法人事業の強化を狙う。こうした収益構造の変化は、料金値下げ前から進んでいたものだが、そのスピードが加速していることがうかがえる。

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