機械学習の応用例といえるのが、新しいiPad Proが搭載する「センターフレーム」だ。これは、ビデオ通話をしているときに、自動的にユーザーがセンターに来るように顔の位置を調整してくれる機能。標準アプリのFaceTimeに加え、ZoomやWebexといったビデオ会議アプリでも、センターフレームがデフォルトでオンになる。広角になったFaceTimeカメラで顔を認識して、必要な部分に寄るというのがセンターフレームの仕組みだ。
実際に試してみた動画は以下の通り。1つ目はZoom中に筆者が左右に動いてみた様子。もう1つは、iPad ProをMagic Keyboardに装着して、位置は動かさずに角度だけを変えてみた動画だ。ご覧の通り、ゆっくりとカメラが動き、筆者の顔が中央に表示される。カメラ起動時に着目すると、最初に広角で映し出されて、顔を認識した後、そこに徐々に寄っていく動きが分かる。
1カ所に座っていると、どうしても体が痛くなるため、ビデオ会議中に姿勢を変えたり、左右に首を動かしたりすることはあるはずだ。従来は、こうしたときにiPad Pro本体を動かして位置を調整していたが、センターフレームでその必要がなくなった。ただし、慣れるまではクセでiPad Proを動かそうとしてしまい、また位置がズレてしまって顔の位置を再調整するということがあった。センターフレームの動きがどうしても苦手というときには、設定でオフにすることも可能だ。
Wi-Fi+Cellularモデル限定の話だが、新しいiPad Proは、iPad全体を通して初めて5Gに対応したモデルだ。扱うファイルサイズが大きくなることが想定されるため、通信速度の向上は歓迎できる。エリア次第ではあるものの、環境がよければ1Gbpsを超えることもあるため、Wi-Fiを探し回る必要性が少なくなる。ミリ波に対応していないのは少々残念だが、現状のエリアを考えると、Sub-6のみというのは現実的な選択肢といえる。
iPhone 12シリーズ同様、5G接続時のみ、FaceTimeやビデオの画質を上げる設定にも対応する。ただし、取り扱いがないためか、現時点では楽天モバイルの5Gには非対応となる模様。同社のSIMカードを入れても、5Gの設定項目自体が現れない。キャリア設定が適用される前のiPhone 12シリーズと同じで、アンテナピクトに表示される通信方式も、「4G」ではなく「LTE」になる。
M1を採用し、5Gにも対応したことで、スペックは隙がなくなったiPad Pro。12.9型版は、ディスプレイも従来のiPad Proを大きく超えるクオリティーで、最上位モデルの実力を見せつけた格好だ。そのパワーは、一般ユーザーがコンテンツを消費するために使うタブレットの域を超えており、Proの名にふさわしい仕上がりといえる。あとは次のステージに向けたエコシステムを拡大できるかどうか次第。タブレットとして独自の地位を築けたiPadシリーズなだけに、その進化に期待したい。
(撮影:香野寛)
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