「iPad Pro」の最新モデルが、3月25日に発売される。ドコモ、au、ソフトバンクの大手3キャリアは、27日に取り扱いを開始する予定だ。iPad Proは、その名の通り、プロ用をうたうiPad。初代iPadから受け継いできたホームボタンを廃し、iPhone Xシリーズと同様のFace IDやマグネットで側面に装着&充電できる第2世代のApple Pencilを採用した。ホームボタンのスペースを圧縮したことで、小さい方は11型にサイズを上げたのに対し、12.9型はボディーのサイズを小型化している。
このモデルの後継機にあたるのが、3月25日に発売される新しいiPad Proだ。正面から見たときのデザインは先代を踏襲しているが、背面の違いは一目瞭然。カメラ部分のデザインがiPhone 11シリーズのそれに近づき、超広角と広角のデュアルカメラを採用した。さらに、iPhoneにはない特徴として、被写体との距離を測るLiDAR(ライダー)を搭載。AR(拡張現実)対応のアプリを、より素早く、正確に動作させることができるようになっている。
iPadシリーズに搭載されるiPadOSも、新しいiPad Proの登場に合わせてバージョンアップされる。目玉になりそうなのが、マウスやトラックパッドに対応した点だ。日本語入力もライブ変換に対応する。こうした特徴を生かし、新しいiPad Proにはアクセサリーとしてトラックパッドを搭載した「Magic Keyboard」も用意された。この新しいiPad Proを、一足先に触ってみることができた。ここでは、そのレビューをお届けしたい。
デザイン面は、2018年に発売されたiPad Proをほぼ踏襲している。前面から見ただけでは、その違いに気付かないかもしれない。製品の寸法もまったく同じで、ベゼルの幅等も変わっていない。搭載されるディスプレイも同じ。表示部とガラスを一体化した「フルラミネーションディスプレイ」を搭載し、P3対応の高色域で、環境光に合わせて色温度を変えるTrue Toneも備える。表示するコンテンツに合わせて、最大で120Hz駆動するProMotionも装備している。
カラーはシルバーとスペースグレイの2色展開。レビューのために借用したiPad Proは12.9型のスペースグレイだが、素材はもちろん、色味などの差も特に感じられなかった。側面にはApple Pencilを充電するポートも搭載されている。寸法も含めた外観は、先代のiPad Proのコンセプトをキープしたといえる。もっとも、iPad Proは2018年11月にデザインを刷新したばかり。先代のデザインを踏襲したのは、ある意味当然といえる。
一方で、背面を見ると、一目で最新モデルということが分かる。特徴的なのがカメラだ。2018年モデルではシングルカメラだったのに対し、最新モデルはデュアルカメラになり、iPhone 11シリーズと同様、台座のようなパーツの中に2つのレンズが配置されている。カメラはそれと分かるように目立つデザインになったが、スペースグレイは本体のカラーとカメラ部分の色合いが近いこともあり、思いのほかなじんでいるといえそうだ。台座と本体が一体成型されている点も、iPhone 11シリーズに近い。
このカメラが、iPad Proで刷新されたポイント。これまでのモデルは1200万画素の広角カメラのみだったが、新しいiPad Proでは、1200万画素の広角と1000万画素の超広角のデュアルカメラになった。写真のEXIFを見ると、焦点距離は広角が29mmなのに対し、超広角は15mm。超広角に対して広角は2倍弱といったところだが、ユーザーインタフェース上ではiPhone 11シリーズと同様、1倍と0.5倍の表記になっている。
実際に撮った写真は色合いが豊かで、ディテールもしっかり描写できている印象を受ける。ただし、iPad Proの解像度が2732×2048ピクセルと高いこともあり、拡大して見るのにはあまり向いていない。画素数が低い超広角カメラの方が、その傾向は顕著だ。また、iPhone 11シリーズから搭載された「ナイトモード」にも非対応。後述するように、プロセッサがA12ベースのためだが、この点は少々残念だ。屋内では、特に超広角側のカメラのノイズが目立つ。
とはいえ、新しいiPad Proに画質を求める向きは少ないかもしれない。どちらかといえば、重要なのは新たに搭載されたLiDARだ。このLiDARのおかげで、ARに対応したアプリの測距が、より正確に、素早く行えるようになる。計測可能な範囲は5m以内だ。標準のアプリでは、「計測」がこのLiDARを使用するようになった。起動してみるとすぐに分かるが、長さを測定できるようになるまでの時間が短い。起動後、即計測可能になるのは、新しいiPad Proのメリットの1つだ。
LiDARを搭載したことで、人間の身長もある程度正確に測れるようになった。実際に筆者の子どもの背の高さを測ってみたが、誤差はおおむね2cmの範囲に収まっていた。子どもが動き回ってしまい、なかなかピタッと止まってくれなかったが、それでも計測ができたのは素早く測距が可能になるLiDARのおかげといえるかもしれない。編集部で筆者自身の身長も測ってもらったところ、こちらも値は正確だったことを付け加えておきたい。
もっとも、標準アプリの「計測」だけでは、LiDARの実力を十分に引き出したとはいえない。期待したいのが、サードパーティー製アプリが増えることだ。ゲームはもちろん、スポーツのフォーム指導や建築設計など、ARはさまざまなアプリに応用できる。ユーザーがこうしたアプリを使えるようになるのはもちろん、開発者にとっても、新しいiPad Proは、アプリを開発するための必須ツールになる可能性がありそうだ。
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