Beyond 5Gや6Gに関する課題も見えてきている。5Gにおける課題と重複しているところもあるが、カバレッジの拡張、さまざまな産業向けの低遅延、高信頼通信は短期的な課題と認識している。また、長期的な課題として、より高い周波数を使った非常に大容量な通信といったテーマもある。
谷氏はカバレッジ拡張の取り組み例を3つ紹介。1つ目は「つまむアンテナ」だ。高周波数帯の電波を伝搬するケーブルである「誘電体導波路」をつまむことで電波が漏れ、それによってエリア化しようという取り組みだ。
2つ目は、AGCと一緒に取り組んでいるメタサーフェス技術による窓ガラスの電波レンズ化。ミリ波の電波がガラスを通ることで特定の場所に集まり、その焦点位置にリピーターなどを置くことで屋内にミリ波のエリアを展開する。
3つ目がHAPS。低軌道衛星よりも低い上空を飛ぶ疑似衛星で、AIRBUSに航空機を提供してもらって性能を評価している。
産業界からは工場内のカバレッジについてさまざまな要請があり、実証実験を行っている。「工場の中はいろんな構造物があり、遮蔽の影響を見ている。実際に工場で5Gを利用してもらうようにするには解決すべき課題がある」と谷氏は言う。工場の機材の情報を同期して連携する「TSN(Time-Sensitive Networking) over 5G」にも取り組んでいる。
世界では、既にBeyond 5G/6Gの検討が進んでいる。日本でも2020年12月に、総務省を中心として「Beyond 5G推進コンソーシアム」が設立されている。谷氏は「6Gは5Gのときの進捗(しんちょく)より数年早まっている。グローバルな競争でしっかりと勝ち抜いていくために、スピード感を持った取り組みをしていく」と語った。
5Gよりもさらに「超」の世界となる6Gの研究開発を進めている一方で、NTTグループでは光ベースの技術を活用したIOWN構想を提言している。「IOWN構想を具現化するために、6Gは極めて重要な役割を担っている」(谷氏)とし、より高度なデジタル化による持続可能な社会の実現に貢献したいと語った。
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