世界を変える5G

5Gの特許保有シェアで世界6位 ドコモが「5Gの標準化」に注力する理由

» 2020年10月20日 18時47分 公開
[田中聡ITmedia]

 2020年に国内でも商用サービスがスタートした「5G」は、「3GPP」という国際標準化プロジェクトが策定した仕様に基づいている。この5Gをはじめとする通信方式を策定する上で重要なのが「規格特許」だ。国内ではNTTドコモが、3Gの時代から通信方式に関する規格特許を保有しており、通信方式の標準化に尽力している。

 この特許をライセンス契約可能とすることで、特許権者が独占的に使用することを防ぎ、誰もが一定の条件下で特許を使用できるようになる。

ドコモ 5G標準化について、ドコモ以外では欧米や中国、韓国の企業が主要なプレイヤーとなっている

 サイバー創研の調査によると、5G規格特許の保有シェアでドコモは9.5%の6位につけている。1位〜5位はSamsung、Qualcomm、Huawei、ZTE、Nokiaでシェアは10%前後で拮抗(きっこう)している。他の日本企業ではシャープが3.0%、NECが0.7%、富士通が0.3%、ソニーが0.3%のシェアを持つ。通信キャリアではドコモがトップとなる。

 またドコモは5Gについて約5000件の技術提案(寄書)を行っており、こちらも通信キャリアでは最多。

ドコモ 5G規格特許の保有シェアでドコモは6位につける

 各社が定めた特許は、ライセンスする用意があることを標準化団体に宣言する必要がある。これを「必須特許宣言」という。5Gをはじめとする通信方式については、ETSI(欧州電気通信標準化機構)に宣言手続きをする形となる。ただし、宣言した特許は、必ずしも規格の要件を満たしていると限らない。

 サイバー創研によると、各社が宣言した5Gの特許には、5Gが必須でないものも含まれており、宣言の正確性にバラツキがあるという。例えば宣言数でトップのHuaweiは、正確性は21%となっている。その中でドコモの正確性は81%と最も高く、NEC、富士通、ソニーといった日本勢も60〜70%と上位に位置している。

ドコモ 5G特許の正確性は、企業によって10%〜80%と大きく異なる

 ただ、平均すると必須特許宣言の正確性が低いことから、特許を使う側からは「権利者は宣言内容を事後に精査して更新すべき」との意見が挙がっている。しかし権利者にとって事後の情報更新は負担が大きく、必須特許宣言の情報をどう活用していくかが課題となっている。

ドコモ 必須宣言特許の活用を巡り、利用者と権利者で議論が起きている

 特許を保有することでライセンス料が入るが、取得するためのコストも掛かる。特許シェアの上位に他キャリアが入っていないが、海外のキャリアでは「ベンダーに開発してもらった技術をそのまま採用する考えに近い」ところが多いようだ。それでもドコモが5Gの標準化に取り組む理由は、ユーザーの利便性を向上させ、日本独自の要求を反映できることにある。

ドコモ ドコモが5Gの標準化に取り組む意義

 ドコモの強みは「無線系の技術にある」といい、5Gの高速・大容量化に尽力している。例えばノンスタンドアロン(NSA)技術では、4Gと5Gを組み合わせることで、より安定した通信状況を確保できるようになった。ビームフォーミングやMassive MIMOによって、モバイル通信に不向きとされてきた高周波数の電波をモバイル通信で生かせるようになった。

ドコモ 5Gの無線通信に貢献してきた

 ドコモが考案した災害時の緊急速報システム(ETWS)は、国内他キャリアに加え、米国、欧州、韓国などでも採用された。緊急速報システムは、災害の多い日本独自の要求を満たした技術の1つだ。

ドコモ 緊急速報システムも国内外で広く普及している

 規格統一化のスケールメリットにより、設備コストの効率化にもつながるという。「3Gのときに、一部企業のライセンス料が高かった。そういった会社に対して適正な相場でライセンス料を設定していくべきだという話をする際に、ある程度特許のシェアを持っていないと発言権が確保できない。通信方式を実現するためのコストを下げて、ドコモのネットワークを実現するためのコストを下げていきたい」(ドコモ)

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