楽天グループが8月11日、2021年度第2四半期の決算を発表した。売り上げは前年同期比で15.8%増となる4022億円を記録した一方で、4G基地局設置をはじめとしたモバイル事業の投資を継続しているため、営業利益(国際会計基準)は前年同期比で669億円減となる635億円の損失となった。
楽天モバイルの累計契約申込数は、2021年6月時点で442万に到達。2021年4月に、1年間無料キャンペーンが終了したことに伴う駆け込み需要の反動減があったものの、楽天グループの代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏は「顧客の獲得は順調に進んでいる」と自信を見せる。
総務省の調査から、2020年冬以降に発表されたMNOやMVNO各社の新料金プランの中で、楽天モバイルの「Rakuten UN-LIMIT VI」が50%以上で最も選ばれたことも分かったという。楽天グループが、同一キャリアや同一MVNOからのプラン移行を除いて算出した結果とのこと。
MNPで他社から乗り換えるユーザーが増えていることも最近の特徴に挙げられ、新規契約者の割合は継続的に減少しているという。2021年4月まではMNPよりも新規契約が多かったが、5月にこれが逆転。6月時点で前年からMNPは30ポイント増加し、新規契約は40ポイント減少している。
MNP契約者は、平均データ利用量やARPUが高く、解約率が低い傾向にあるという。これは、他の回線は契約したままで楽天モバイルをサブ回線として利用する人が減っており、楽天モバイルをメイン回線で利用する人が増えていることを示しているといえる。
どこから楽天モバイルに転入しているのが気になるところだが、楽天モバイルの山田善久社長によると、ほとんどがMNOだという。3キャリアの内訳は、ドコモ、au、ソフトバンクの市場シェアから極端に異なるわけではなく、満遍なく転入していることを強調した。
4Gの人口カバー率は2021年6月末時点で90%を超えている。2021年夏の達成を目指していたカバー率96%は、半導体不足の影響で2021年内に延期されたが、基地局の契約締結を見越したカバー率は既に96%を達成しているとのこと。
モバイル事業の売り上げは、1年無料キャンペーンを終了した一部ユーザーに通信料が発生したことで前年同期比17%増の514億円6200万円に上るが、基地局開設や契約者の増加、ネットワーク関連費用、ローミング費用などがかさみ、営業利益は前年同期比459億円減となる996億8600万円の損失。
特に足かせとなっているのが、KDDIに支払うローミング費用のようだ。「国内の人口カバー率が90%を超えたとはいえ、ローミング費用が大きい」と三木谷氏。同氏によると、96〜97%のカバー率を達成し、東京エリアをほぼ楽天モバイルのネットワークで運用する2022年3月ごろから、ローミング費用は大幅に削減される見込みだ。「決戦は(人口カバー率が)96〜97%に達してから」「ローミング費用が重なることはなくなってくるので、短期的なリターンは改善される」(同氏)
損益は2021年を底として、2022年に改善し、2023年に単月黒字化を目指す。その時点での楽天モバイルの契約目標は開示していないが、「新プラン(Rakuten UN-LIMIT VI)の導入に伴ってARPUは下がるので、契約数はよりたくさん取っていかないといけない」と山田氏は話す。
現在のところ赤字の要因となっているモバイル事業は、楽天経済圏を拡大するドライバーにもなっているという。楽天モバイルは、楽天カードと比較して4倍以上のスピードでユーザーを獲得できている。さらに、楽天モバイル契約者のうち、楽天のサービスを利用する余地の大きな新規ユーザーは、2021年6月時点で約19%に増加したという。
楽天モバイル契約後に、半年でダイヤモンド会員となった比率が契約月から10ポイント増加し、半年で楽天のサービスを複数利用しているクロスユース数は4.3個から6.7個に増加した。楽天モバイルをきっかけとして、楽天市場、楽天カード、楽天ペイといった楽天のサービスを初めて使う人が増えており、長い目で見れば利益に貢献すると同社はみている。
三木谷氏は「想定よりもエコシステムへの貢献が大きい。大きすぎて本当なの? と計算し直した。すごいシナジー効果があった」と手応えを話す。
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