こうしたカメラ機能の多くは、センサーやレンズだけでなく、A15 Bionicの処理能力で実現したものだ。ベンチマークを見ても、性能は先代の「A14 Bionic」から底上げされていることが分かる。ちなみに、iPhone 13シリーズのA15 Bionicは、無印モデルとProモデルでGPUのコア数が異なっている。前者は4コア、後者は5コアで、その分だけProモデルの方が処理能力は高い。実際、Geekbench 5のMetalスコアにも、その差が反映されている。
加えてProモデル2機種のディスプレイは、最大120Hzの「ProMotion」にも対応している。正直なところ、iOS 15はユーザーインタフェースのアニメーションが滑らかになっていることもあり、普通に操作しているだけだと対応モデルと非対応モデルの違いがほとんど分からないが、ゲームなどの滑らかさを重視するコンテンツを利用するユーザーには重要かもしれない。
また、ProMotionは表示している映像に応じて、10Hzから120Hzの間でフレームレートが可変する。1秒間に画面を書き換える回数が減れば、その分バッテリーの消費を抑えられる。ProMotionは、滑らかさを体感しづらいユーザーにとっても恩恵がある機能というわけだ。ただし、試用期間中は撮影などをこなさなければならず、普段使いができていない。そのため、バッテリーの持ちがよくなったかどうかまでは断言できないことは付け加えておきたい。
動画やカメラに多数の新機能が加わり、処理能力も向上したiPhone 13シリーズは、今、選ぶなら最良の端末といえる。カメラのスペックはProモデルの方が上だが、画質の違いはあまり気にする必要はない。どちらも、シャッターを切るだけでキレイに撮れるし、シネマティックモードにも対応している。GPUのコア数は異なるが、処理能力の違いも小さい。基本的には望遠カメラやマクロ撮影の有無と、デザイン、サイズ感、重量などの違いを意識しておけばいいだろう。
スマートフォンでコンピュテーショナルフォトグラフィーが台頭して以降、ある程度カメラ機能に優れた端末で撮影すれば、誰でもそれなりにキレイな写真が撮れるようになった。拡大して見ても、なかなか違いが分からないという人もいるはずだ。一方で、動画機能にはまだまだ差がある。Dolby Visionに対応したiPhone 12シリーズも、仕上がる動画の美しさに驚きがあったが、シネマティックモードの効果はそれ以上にインパクトが大きく、動画を撮影してみようという気にさせてくれる。半導体を自社設計しているAppleの強みを生かした差別化戦略で、新たな競争軸を打ち出そうとしている意欲も感じる。ぜひ手に取って、その実力を確かめてみてほしい。
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